弐、旅立ち 第六幕
話は戻り――
「そう云えば…あの時、何でかミカエルと一緒に居たら、心が落ち着いてた…」
「私は、彼の親友だったからね…恐らく、君の魂が、無意識の内に前世の記憶で私に反応し、心を落ち着かせたのであろう…ところで、長の件は、引き受けてくれるかい?」
「其処まで云われると、引き受けざる終えないなぁ…で、【長老会】は何て云ってたんだ?」
龍稔の問いに、ルークはニヤッとし、彼は首を傾げた。
「な、何だよ…?其のニヤッとした顔は…」
「彼らが、私が【十三の鍵】をこの人間界に隠した事を知っているのは、君も知ってるね?」
「あ、あぁ…雷兄から聞いた…(な、何が云いたいんだ?)」
「実は、私が彼等――【長老会】に、君を長にすると話したら、三つの条件を出して来たのだよ…」
「じょ、条件?」
「『人間界に隠された【十三の鍵】を全て集める事』…其れが、一つ目の条件。
二つ目が、『【十三の神】の称号を持った者に全て会う事』。
三つ目は――此れは私へのハンデなのだが、『【聖王神】は、【鍵】を隠した場所と、【十三の神】の称号を持つものが誰なのかを其の者に教えてはならない。自力で探させるべし』と、云われたんだ」
其れを聞いて、龍稔は
「そ、そんなのありか!?」
と、大声を出した。
すると――
「煩いよ、其処!話は後にして、もっと静かに食べな!!」
台所に立っていた宝蘭が、包丁を持ったまま現れ、刃先を彼らに向けた状態で怒鳴り上げた。
恐らく、何かを切ったりしていたのだろう…包丁にはベットリと血が付いていた。
『は、はい〜ぃぃぃぃぃ!』
其れを見て、二人はゾッとし、慌てて食べ終えた。
「あの馬鹿共は…礼儀がなっちゃいない…」(作:アンタも云えないだろ…
彼女はそう言いながら、台所で改めて調理をし始めた。
室内には、惨い音が響き渡っている。
材料は、近くの湖で取れた巨大魚一匹に、雷鳴が以前狩って来た蝙蝠二十匹、温室より採って来た薬草十種と野菜二十種などなど…
「ね…義姉さん?」
すると、音が気になったのか、龍稔が台所の入口より顔を覗かせた。
「ん?何だい?」
「な…何を作ってんだ?何か、異様な臭いが漂ってんだが…」
「闇鍋」
宝蘭がそう言った瞬間、龍稔は更にゾッとし退いた。
其れも其の筈…前にも食べた事があるのだ。
「や、闇鍋って…まさか…」
「そうさ。今日の夜のだ」
彼女はそう言いながら、黙々と闇鍋を作って行く。
「如何した?ケイアス」
ルークも、台所を覗くと、
「ミカエル…今夜は覚悟しとけよ…」
「何で?」
「云っとくけど…今夜は、地獄だぜ?」
「じ、地獄?」
ケイアスの言葉を聞いて、ミカエルも更にゾッとなり少し退くかと思いきや――
「面白そうじゃないか」
意外な言葉が、彼から返って来た。
「はぁ!?分かってんのか!?あの雷兄でも、次の日二〜三日寝込んだくらい最強なんだからな!」
「何を云ってるんだい…?」
「へ?」
「知らないのかい?私は、闇鍋は大好物なのだよ」
「だ…大好物…」
「宝蘭、闇鍋を楽しみにして居るぞ」
「はいな!ミカエル様の事ならお任せあれ」
ルークの言葉に、宝蘭は更に張り切って、闇鍋の材料を増やし始めた。
「俺は、知らないぞ…?後が如何なっても…」
龍稔は、其の横でそう言い、大きく溜め息をついたのだった。
食事を終え、二人は気分転換に街へ散歩に出た。
しかし、龍稔とルークのみでは無かった…
「国王様と若のお通りだい!さ〜ぁ、退いた、退いた!!」
何故か…リヴァスが、勝手にお目付け役として、付いて来ていた。
「お、おい…リヴァス…俺達は、二人きりで話をしなきゃならなんないんだが…」
「だから、貴方方が二人きりになれるとこまで、オイラが他の奴等が付いて来ない様にしてるんでやんすよ!」
そう言って、リヴァスは周りを見ながら、
「退いた!退いた!!」
と叫んだ。
其れを見て、二人は――
「まあ…有難いといったら、有難いのだが…」
「ちょっと迷惑だな…」
とボソッと呟いた。
すると、聞こえたのか…リヴァスが後ろを振り向いた。
「何か云いやしたか?」
『いや。何でも無い』
結局…リヴァスのお陰で、誰も付いては来なかった。
龍稔は、祭りの準備をする様リヴァスに言い、彼は道の途中で引き返した。
其れから、暫く歩いて…不思議な森の前に出た。
森の前には、二階建ての建物が建っており、一階には看板が掛かっている。看板には、【アンジェリア】と書かれていた。
「此処なら、話が出来るんじゃないか?此処の二階は、俺の事務所だから」
「事務所?ああ…確か、君はよろず屋をやっていたな…」
「繁盛はしてないけどな…今は休業中。相棒が急用で実家に帰ったからなぁ…」
「そうか…」
「取り合えず、中に入ろうぜ?」
龍稔はそう言い、中へ入ろうと戸を開ける。すると――
「ケイアス!前!!」
「ん?――ぅげっ!?」
ルークに云われ、気付いたのもの既に遅し…龍稔の顔面に、何かが思いっきり当たった。 |