弐、旅立ち 第四幕
「あ、あの…ところで…」
「普通に話せば良い…」
「え?」
「私の身分を気にしていたのだろう?」
「き…気付いてたのかよ…」
ルークの言葉に、龍稔は苦笑した。
「国王だからとか今は関係無いだろ?気安く話せば良い…ケイアスだって、敬語は堅苦しいだけだろ?」
「分かったよ…普通に話す」
「其れでこそ、私が知っているケイアスだ」
肩の荷が降りた龍稔を見て、ルークはニッコリと微笑んだ。
「で?何だ?ケイアス。何かを話そうとしていたのだろ?」
「ああ…今回、此処に来た理由を知りたいんだ。魔界の出来事や、【十三の鍵】の事を伝えて来ただけじゃないんだろ?本当は」
「ほお…やはり、見抜いていたか。流石は、光来の息子だ…」
[其処で誉めて貰われても困る…]
ルークが感嘆の声を上げると、横から光来のツッコミが入った。
「私が此処に来たのは、ケイアス――君に伝えたい事があったからなのだよ」
「俺に伝えたい事?」
「ウム。君に、次の長になって貰いたいのだ」
「え?う〜ん…え〜ぇぇぇぇぇ!?」
龍稔は、ルークの言葉に驚愕の声を上げた。
「自分には長なんか…」
と戸惑ったが、
「君にしか出来ないのだよ…あの【救世主】の生まれ変わりである君にしかね…?」
といわれ、龍稔は不思議な気持ちになった。
「お…俺が、初代【混沌神】の生まれ変わり…?う…嘘じゃないよな?」
「初代の魂と波長が合っている。三千年程前に【聖王神】となり、初代である【彼】と共に居た私が云うのだ…間違い無い」
ルークが言う【彼】とは――先程言った【救世主】の事。
三千年前の【神魔革命】で全世界を救った英雄として、人々の間に言い伝えられ続けている初代【混沌神】の事である。
「そう云えば…」
と、龍稔は、ルーク――つまり、ミカエルと初めて会った時を思い出した。
龍稔が、ケイアスとしてまだ天界に居た頃の事。
十歳の誕生日に、彼はミカエルに初めて出会ったのだ。
「こんにちわ。ヨネさん…お孫さんのお祝いに来たよ」
ミカエルは、神殿より東にある塔の近くに住む者の家に、雷鳴と共に極秘で訪れた。
出てきたのは、八十近くの老婆だった。
「此れは此れは…ミカエル様。遠い所を…其方の方は?」
「雷鳴です。初めまして」
「あ〜ぁ…貴方が、ケイアスの――」
「ばあば、誰だ?其の人達…」
すると、白銀色をした髪の少年が、奥の部屋から現れた。其の少年こそが、ケイアスだった…
「コレ!このお方は――」
ヨネがケイアスに喝を入れようとすると、
「良いんだ…ヨネさん…」
と、ミカエルは静止し、ケイアスの目の前でしゃがみ込んだ。
「こんにちわ。君がケイアスかね?」
「そ…そうだけど…?アンタ誰?」
「私は、ミカエル…神族の長さ。今日は、君の誕生日だろ?」
「(この人が、俺達一族を治める長…見えねぇ…)う、うん」
「(心の中、丸視えだな…)私は、君に誕生日プレゼントを持って来たんだ」
「誕生日プレゼント!?本当に!?」
『誕生日プレゼント』と聞いただけで、飛び跳ねるケイアス。
彼にとって誕生日は、複雑な日で、今まで一度もヨネ以外からプレゼントを貰った事が無いのだ。だからこそ、嬉しさのあまり飛び跳ねているのだった。
だが、誕生日プレゼントは、意外なものだった。
「はい。誕生日プレゼント」
「ヘ?え?」
ケイアスは、首を傾げた。
何も渡されていない…
何が自分へのプレゼントなのかと考えていた。
「あ、あの〜ぉ…」
「あ…!君のプレゼントは、僕の事だよ」
「はい?」
雷鳴の言葉に、更にケイアスは首を傾げた。
「えっと…如何いう意味なの?」
「雷鳴はね…君とは腹違いで、お兄さんなのだよ」
「え…?じゃあ…この人が?」
ケイアスは、確かめる様に聞いた。
其れは、ヨネから良く腹違いの兄について聞かされていたからだった。
「そういう事。今まで離れ離れになっていた家族と一緒に暮らせるのだから、良い事じゃないか…!」
「ミカエル、説明になって無いよ…其れ」
ミカエルの言葉に、雷鳴はツッコミを入れた。
「オッホン…兎に角!此れが、君への誕生日プレゼントだ」
(あ、流した)
「(一々煩いな…ライト…)話は変わるようだが…此れから、君には人間界へ降りて貰う」
「俺が人間界に?」 |