ジミーのギター(2/4)PDFで表示縦書き表示RDF


ジミーのギター
作:坂田火魯志



第二章


 向こうの言葉に甘えてデートをはじめる。格好がどうにも気になるがいい感じであった。ストリートを二人並んで歩きながら声をかけるのだった。
「それでさ」
「何?」
「この辺りにギターを奏でてもいい店あるかな」
「ああ、成程ね」
 女の子はジミーの背中のケースを見て納得したように頷いた。
「そういうことだったの」
「こう見えてもミュージシャンなんだ」
 あくまで自称であるが。
「カレッジに通いながらな。決まってるだろ」
「決まってるっていうのは少し古いんじゃないの?」
 女の子は彼の言葉にこう返してきた。
「八十年代によく聞いた言葉よ」
「八十年代ねえ」
 ジミーはそれを聞いて苦笑いを浮かべた。
「俺が生まれた頃だぜ」
「あら、若いのね」
「若いも何もさ」
 その言葉に苦笑いをそのままに言葉を返す。同時に心の中で妙なものも感じていた。
「当たり前だろ」
「当たり前って?」
「俺まだ十代だから」
 そう言うのだった。
「八十年代生まれっていうのも」
「それもそうね」
 女の子はそれを聞いて納得したような顔になった。
「よく考えたら」
「そうだよ。まああんたの格好からすれば新しいかな」
 女の子の服を見ながら言う。
「また随分レトロだね」
「服はこれしかないから」
 返事はこうであった。
「だからね。これは別に」
「ふうん。それでさ」
 そこまで聞いて話を元に戻すのだった。
「お店あるかな。さっきの話の続きだけれど」
「あるわよ」
 あるとのことだった。ジミーはそれを聞いて心の中で喜んだ。
「そうなんだ」
「ほら、そこ」
 そうしてすぐ目の前にあるバーを指差すのであった。
「あそこ今探してるのよ、そういう人を」
「これこそ神様の思し召しってやつか。いや」
 女の子を笑いながら見る。
「天使のお導きかな」
「天使って?」
「だからさ」
 笑って女の子を見るのだった。
「あんたのことだよ」
「天使ね」
 女の子はジミーのその言葉を聞いておかしそうな、楽しそうな笑みを浮かべた。アメリカではよく天使を見たという人が多い。ジミーもそれを知っていてあえてこう言ったのである。
「違うかな」
「そうありたいわね、やっぱり」
「じゃあなればいいさ」
 ジミーはあっさりとした口調でまた言った。
「これからさ」
「そうね。じゃあこれ」
 女の子はそっとジミーに何かを差し出した。
「何だ、これ」
「あげるわ」
 見ればそれはメモであった。見てみると何か文章が書かれている。しかし段々辺りが暗くなってきたのであまりよくは見えなかった。
「ええと?」
「後で読んで」
 横から女の子が言ってきた。
「御願いだから」
「ああ、じゃあ」
 可愛い女の子に頼まれると弱い。そういうことであった。
「後でな」
「お店の中で見るといいわ」
 女の子は今度はこう言ってきた。
「それで御願いね」
「わかったよ。じゃあ今からな」
 笑顔で女の子に言葉を返す。そうして一緒に店に入った。
 筈だった。だが彼女はもうそこにはいなかった。
「あれっ!?」
「いらっしゃい」
 女の子がいなくなって驚く彼に店の親父が声をかけてきた。







小説・詩ランキング





ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




BACK | TOP | NEXT


小説家になろう