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パリサイド 作者:奈備 光

2章

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8 奇妙な間合い

 隊員がとりなすように口を挟んだ。
「で、ンドペキは何をしていたんです? それに、なぜスミソはあそこに?」
 スミソは、この部屋からさほど遠くない路上に倒れていたという。
 隊員三人で連れ立って、ゴミが落ちていないか、巡回中に発見したらしい。

「ンドペキはアヤを探しに行ってて」
 アヤの聞き耳頭巾のことは、隊員は全員知っている。
 スゥが事情を話した。
「それで、スミソはというと」
 こちらも隠すことではない。
 昨夜の訪問者、フイグナーの件を話した。
「スミソは、そいつの素性を探るために、後をつけて行くって」

 スゥにもライラにも、チョットマにも隊員にも、後の言葉はなかった。
 ンドペキのうなされた声と、スミソの息遣いだけが聞こえていた。


 沈黙を破ったのはスゥだった。
「まずかったのかもしれない。私がもう少し考えていたら、二人を部屋から出さずに済んだのに」
「夜は出歩くなっていう、あれ?」
「うん」
「それに、今日は双戯感謝祭だから?」

 スゥは、失敗したわ、とうな垂れた。
「私のミス」と、頭を抱え込んでしまった。
「ううん。スゥだけが悪いんじゃないよ。出歩くなっていうのは、皆も知っていることなんだし」
 チョットマは何とか励まそうとしたが、自分が原因かもしれないという気持ちがますます大きくなっていた。
「悪いのはきっと私。スゥじゃないよ」
 ライラの声が飛んだ。
「やめな!」

 スゥがまた言った。
「でも、誰もまともに取り合ってなかったでしょ。ンドペキもスミソも。引き止めればよかった……」
 確かにそれはある。
 出歩くなと言われても、禁止というほど強いものではなかったし、所詮それはパリサイドのしきたり、という気持ちがあった。


 ふとチョットマは、イコマに知らせなければ、と思い始めた。
「私、行ってくる。パパも少し心配だし」
 隊員が立ち上がった。
「一緒に」
「ありがとう」

 イコマの部屋はンドペキの部屋から徒歩で三十分くらい離れている。
 隣同士みたいに住んだら、とイコマやンドペキに何度か話しているが、その気はないようだ。
 両方の部屋に毎日のように顔を出すチョットマにしてみれば、その距離が面倒だといえなくもない。

 しかし、薄々感じることがあった。
 イコマとンドペキは、避けあっているというほどではないにしろ、できることなら一緒にいたくないという気持ちがあるのではないか。
 それはそうかもしれない。
 全ての記憶を共有し、意識も同期していたのだ。
 それが一時期、大いに役立ったわけだが、今となっては、なんとも居心地の悪いことではないか。

 それにしても、と思うことがもうひとつある。
 ユウとスゥの間にも、奇妙な間合いが感じられるのだ。
 大人の世界ってことかな、などと気に留めないようにしていたが、今回のような事件が起きると、何とかならないのかな、と思ってしまう。
 今も、イコマを呼びに行くといったチョットマに、スゥは、ユウがいたら無理に連れ出したりしないでね、と言ったのだった。
 ユウも来ればいいじゃない、と言いそうになったが、ライラの眼が変に煌めいたのを見て思い留まったのだった。


「ねえ。私」
 隊員と並んで歩きながら、どうすればいい? などと聞きそうになって、急いで話題を変えた。
「思うんだけど、好きになった人と結婚するって、自然なことなんだね」
 あまりに場違いな話だとは思ったが、案の定、隊員は怪訝な顔をしただけだった。

 行きがかり上、
「シルバックとは、どう?」と、聞いてみる。
 ンドペキとスゥが家族として一緒に住むようになって、東部方面攻撃隊の隊員達に少なからず影響を与えていた。
 異性を好きになるという当然の感情を、誰もが思い出していたのだ。
 この隊員とシルバックの仲についても、噂が流れている。

「なにもこんなときに」
「ふうん。やっぱり、そういうことなんだ」
「チョットマ、待ってくれよ」
「いいことだと思うよ」
「だから」
「シルバック、友達なんだけど、なにも話してくれないなあ」


 そんなことを話しているとき、スゥが追いついてきた。
「交替」と、隊員を帰らせてしまった。
 話題の持って行き方に困っていたチョットマは、ほっとすると同時にうれしかった。
 スゥもやはりパパを心配してくれていたんだ、と。

「イコマさんなら、なにか知っているかも」
 それもあるだろう。
 イコマの部屋に行けば、ユウと会うことになるかもしれない。
 それでもスゥが行こうという気になってくれたことに喜んだ。
「だよね!」


 しかし、イコマは部屋にいなかった。
 部屋で待つというチョットマを残して、スゥは出かけていった。
 薬を探してみると。
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