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パリサイド 作者:奈備 光

5章

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53 「アヤ!」

「これは!」
 二十桁ほどの英数字が並んでいる。
「最初がEのを探すんだよ。アースのイー!」
「なるほど!」
「出身国は!」
「ニッポン!」
「じゃ、次はJPN。EJPNだよ!。敵の構成員リスト。左側にも出てくるよ。味方のが!」
「よし!」

 イコマは各モニターに表示されている右側のリストを目で追った。
 アヤはいるのか。
 いてほしくないという気持ちと、見つかって欲しいという気持ちがないまぜになって、心臓の鼓動が聞こえてきそうだった。
「あったぞ! あ、いや、複数個ある! デッキだ! 行ってくる!」
「あんたが今行って、何になるんだい! 早まるんじゃないよ!」

 飛び出していこうとするイコマの腕をアイーナの太い腕が掴んだ。
「離してくれ!」
「待つんだ!」
「何を!」
「死にたいのか!」
「娘が危険な目にあっているんだ! 父親がのんびりモニターなんぞ見ていられるか!」


 アイーナの腕がますます強く締め付けてくる。
「イコマさん」
 腕の強さとは裏腹に、アイーナは落ち着いた声を出した。
「ここは、不思議な星。こういうときには何かが起きる。いつも何らかの意志が働いている。悪意か善意か、それはわからないが。そんな星だ。だから待つんだ」
「そんな曖昧な! 待っていられるか!」
「いいや、JP01を待つんだ。私は彼女に通信ができる。すでに、伝えてある。すぐにデッキに向かうと連絡があった」
「む」
「きっと、数分内に行き着くだろう。あの、ンドペキという男と一緒に。あんたが向かうのは、それからでも遅くないだろう」

 イコマの肩の力が幾分抜けた。
 それと同時に、アイーナの腕も少し緩んだ。
「あんたが死んで、誰か喜ぶのかい」
「あっ!」
「どうしたんだい」
「兵士が!」

 モニターが異様な光景を映し出していた。
 先ほどまで激しく撃ち合っていた兵士が床に転がっている。
 立っている者も、硬直したかのように、次々と倒れていき、あっという間に戦闘は終了した。
 誰も、ピクリとも動かない。
 五つの画面はしんと静まり返った。
「おい! お前たち!」
 軍のトップ、トゥルワドゥルーの声が響いた。
「何が起きたんだ!」
「全兵士に告ぐ! 状況を報告しろ!」


「この体になっていてよかったよ」
 アイーナが奇妙なことを言って、「軍の指揮官室に行こう」と、腕を引っ張った。
「何かが起きる。そんな気がしていたのさ」
 声に緊張感はありありとあるが、肚を決めた人間の強さがあった。
「いや、あんたは直接デッキに向かった方がいいかもしれない」

 ドアを開けると、驚く光景があった。
「なぜだ! なぜ、誰も連絡をしてこない!」
 トゥルワドゥルーがヒステリックに叫んでいた。
「いったい……」
 アイーナの部屋の前には、警護していた兵が至るところに転がっていた。
「あんたたち……」

「死んでいるのか」
「わからない」
 分厚い装甲を身に着けている。
「外し方、分かるかい」
「いや」

「救護班! 応答せよ!」
 トゥルワドゥルーの呼びかけはむなしく、兵という兵はすべて倒れてしまったのだ。
「誰でもいい! 返事しろ!」
「おい! ちょっと待て。ということは」
 イコマは鳥肌が立つ思いがした。
「ユウは!」
「ぐ!」
 アイーナの顔が見る間に曇った。
「まさか!」


 戦闘に参加していない兵も倒れているのだ。
 ユウも軍に属している。しかも、簡易とはいえ、装甲を身に着けていたのだ。
「くそ!」
「あんたはデッキへ! JP01へはこっちから人を出す! さあ、早く!」

 生きていてくれ!
 イコマは走った。
 走りながらまた恐怖が襲ってきた。
 まさか、チョットマも。
 東部方面攻撃隊は……。


 何度も曲がり角を間違え、祈りの言葉を口にしながら、イコマは転ぶように走った。
 そしてようやく破壊された扉を潜り抜けた。
 数十キロに及ぶ広大な甲板。
 グラン―パラディーゾが実体化するところ。
 そこに立っている者はいなかった。
 暗く、視界はほとんど利かないが、ポツリポツリと倒れた者が見える。
 空気は熱を帯びているが、動くものはない。
 空の星々以外には、光るものもなかった。

「くそう!」
 どこから探せばいいのだ!
「アヤー!」
 大声で叫んでも、微かな木霊が返ってくるだけ。
「アヤ! どこにいる!」

 手近な兵士に駆け寄ったが、それが敵か味方かの見分けもつかない。
「ええい!」
 装甲を力任せに外そうとしても、全くびくともしない。
「生きているのなら、何か反応しろ!」
 兵士は装甲に守られ、素肌が露出している箇所はない。
 呼吸しているのかどうかさえ、分からなかった。

「くそ! どうすりゃいいんだ! アヤ!」
 微かな木霊に少し遅れて、遠くの方から声がしたように感じた。
「アヤー! どこだ!」
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