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パリサイド 作者:奈備 光

2章

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12 行ったり来たり

「パパ! 心配してたんだよ!」
 やっとイコマが返って来た。
 チョットマは、パパの無事を見届けると、ホッとしてまずは抱きついた。
「どこ行ってたのよ!」
「いつもの散歩さ」
「大変なんだよ!」
「いつも君は大変なことに巻き込まれてるね。今度はどんな異変だい」
「私じゃないよ。ンドペキとスミソが! それにアヤちゃんが!」


 イコマから有効な手立ては聞けなかったが、イコマ自身は何事もなかったようでチョットマは安心した。
「ねえ、私、アヤちゃんを探しに行ってくる」
「うむう」
「ね、行ってもいいでしょ」
「スジーウォンが向かってくれているんだろ。その報告を待ちなさい」
「でも」
「そうだな。じゃ、一緒に行こう」と、あっさりパパが誘ってくれた。


 チョットマは、イコマと共に昨夜アヤが行ったと聞かされた地域に向かった。
 気持ちは急く。
 ンドペキやスミソのことも心配だ。
 どうしても早足になるし、パパと何をどう話せばいいのかもわからない。
 心配事を挙げつのっても、不安が減るわけでもない。
 パパは黙ったまま。心配でたまらないのだ。

 それにしても、なぜ、アヤちゃんはそんなことをしようとしたのだろう。
 聞き耳頭巾の使い手だから?
 だからって、なにも宇宙船の中で。
 どうしても行かなくちゃいけない理由が?
 そんな声を聞いたとか?
 あるいは、聞き耳頭巾の使い手としての使命が?
 ンドペキがああなってしまったことと、関係がある?

 頭を捻ってみたってわからない。
 パパがどう考えているのか聞いてみたいが、うるさがられるだろうな。
 チョットマは黙々と歩を進めた。


 聞いていた地域まで半分ほど来たとき、スジーウォン達と行き会った。
「アヤちゃんは?」
「見つからなかった」
 隊員三十名ほどで辺りの街路をくまなく見て回ったという。
「街の人にも聞いてみたんだけど」
 スジーウォンと一緒だったシルバックがすまなそうな顔をした。
「エリアを広げてまだ探してるけど、一旦、スゥに報告しようと」

 イコマが深々と頭を下げた。
「ありがとうございます」
「あ、イコマさんでしたか」
 地球から救出された者は、まだパリサイドの見分けがつかない。
 スジーウォンもそうだ。
 チョットマとて、イコマだけは見分けがつくものの、なんとなく目の辺りが、という程度で心許ない。

「アヤはいつもご迷惑ばかり掛けて。エーエージーエスの件から始まって」
「いいえ。とんでもない。彼女が参加してくれて、とても助かっていますし、皆が喜んでいます」
 パパは、また頭を下げて、
「では、私は探しに行って来ます」と、チョットマに目配せした。
「チョットマは、ンドペキの元へ行っておあげ」
「えっ」
「ンドペキやスミソが目覚めたとき、君が目の前にいる方がいいだろ」
「じゃ、私がイコマさんを案内します」と、シルバックが言ってくれた。


 久しぶりにスジーウォンと二人きりになった。
 以前から厳しい人だと思っていた。毒舌でもある。
 ハクシュウが死んだことによって、それに磨きがかかり、かつ、女性らしさも覗くようになった。
 苦手というわけではない。彼女の優しさは身に染みている。
 ただ、慣れていないだけ。
 チョットマはスジーウォンと並んで歩きながら、少しぎごちなく話しかけた。

「ねえ、スジーウォン」
 返事はしてくれない。
「おかしいと思うでしょ。プリブ、ンドペキ、スミソって、それって、私がなにか……」
 最後まで言わせてくれずに、スジーウォンが遮った。
「変なことを考えるんじゃない」
「でも」
「おまえが原因だなんて、誰が言ったんだ?」
「ううん。誰も」
「だったら、そんなばかなことを考えるんじゃない」

 スジーウォンの顔が初めてこちらを向いた。
「ははあ。さては、あのことをまだ気にしてるんだな」
 あのこととは。
 それはあるかもしれない。あれからまだ、ほんの数ヶ月。
 自分の考えの至らなさで、十名もの隊員を死なせてしまったこと。


「私があの霧の中に突っ込んで行ったんだとしても、おまえほど上手くやれなかったよ」
 返す言葉はなかった。
 しかし、チョットマは思う。
「意識しないで、とんでもないことをしでかしてしまったとか……」
 つい最近まで、自分がクローンだということさえ、知らなかったほどだから。

 スジーウォンは天を仰いで、やれやれという顔を見せたが、すぐに真顔に戻って、
「聞きたくない。そんな繰言は」と、突き放されてしまった。
「訳がわかんなくて……」

「くどいね。聞きたくないと言っただろ」
 しかし、スジーウォンも悩んでいるようだ。
 慎重に言葉を選んで、話題を繋いでくれている。
「プリブのことはとにかく、ンドペキとスミソのことは……」
「……」
「ユウに聞いてみてくれないか。きっとこの母船の、というかパリサイドのなんらかの……」
「しきたり?」
「特殊な仕組みが……」

 そうかもしれない。
 夜に出歩いて、しかも双戯感謝祭の当日に。
 でも、それならなぜンドペキとスミソだけが。
「他にも、いるのかな。あんな目にあっている人」
「うーむ。聞いていないが……。ユウは何か、言ってた? この祭のこと」
「ううん、なにも」
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