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  資料 作者:神威 遙樹
NO,6: Thriller
「空間が歪んでる?」
「おそらく学院の職員の方達が空間を歪めて思い通りの場所へ行けないようにしています」

 要するに、行きたい場所に行こうとしたら、全く違う場所に着いちゃうかもって訳か……

「じゃあ二人は……」
「このお城の何処かにいますね」

 ややこしい…
この城、最初に見たやつよりは小さいけど、それでも相当デカイ。

「まずは合流した方が良いですね」

封筒の前に二人を探す事になるとは……

「どこ行く?」
「中庭はどうでしょう? 外は晴れてましたし、目立ちます」

 成る程、確かに中庭なら結構な数の窓から見える筈。

「離れないでくださいね。もし飛ばされても二人バラバラになる事は避けたいです」
「わかった」

 自分よりも明らかに華奢で小さい女の子に指示を受けるのは正直情けないが、この事に関しては彼女の方が自分の考えより正しい。

「……まさかだね」
「……すいません」

 中庭に到着したのは良かったが、思わぬ事態発生。

「さっきまでこの城、こんな深い霧に包まれてた?」

 まさかの事態、それはこの城がかなり深い霧に包まれていた事。

「おそらくこれも職員の方々が霧を……」

またか、妨害好きな人達だよまったく……

「そういえばさ、空間歪めたり霧出したり、一体何の魔術?」

 アレンはゲーム程万能では無い、と言っていたが、これは完全にゲームレベルだね。

「空間を歪めるのはケルトの秘術と聞きます。霧はどうでしょう? 候補はいくつかありますが」
「ケルトってアレンが使うやつだね。言ってたよ」

 最初の自己紹介の時に言っていた。
ケルト魔術って具体的には何か知らないけど……

「でしょうね。グレンジャーという名前は『ドルイド』の本家の名前ですからね。」
「……ドルイド?」

 また何か知らない単語。絶対に覚えられない。

「あ、えっとですね、魔術師は同系統の魔術師の方達と、組織という……」
「それはさっきアレンに聞いたよ」
「そうですか、では、その組織というものは、その九割が『連盟』と呼ばれるものに加入しています。ここは聞きましたか?」
「いいや、聞いてないよ」

 それは初耳。総本山みたいな所だろうか?

「連盟とは、所謂、国連みたいなもので、世界中のあらゆる魔術の使い手達が集まり作られている組織です。一系統の魔術師達が集まる組織とは少し違い、世界中で毎日起こる呪力災害を把握し、どの組織が浄化…即ち、呪力の暴走を止めるかを決め、組織の格付けを行います」
「どうやって世界中の呪力災害を把握するの?」
「連盟は表の方ではWICとして、情報操作などを行っていますので……詳しくは知りません」
「WIC!?」

WIC……それはイギリスに本社をおく世界で三本指に入る大企業。
裏ではそんな事してたのか……

「話を戻します。連盟は格付けを行います。ランクは最上位のSSSトリプルエスからCシングルシーの12段階、『ドルイド』はSシングルエスに格付けされていて、魔術師の世界ではかなりの力を持っています」

アレンの家って凄いんだね。だから名が通ってるって言ってたのか。

「因みにSSSの組織は世界で10しかありません。この十組織は絶大な伝統と力を持ち、連盟は十組織に拒否権を持たせています」

拒否権、十組織。
国連でいう常任理事国。

「……伝統?」

絶大な力は解る。しかし、何故に伝統?

「魔術には血が絶対条件です。魔術師の能力や長年の努力や研究で得た成果は遺伝します。なので組織は世襲制ですし、徒弟と首領では実力は全然違います」

 血、先祖達が残した絶対的な力。
魔術師の世界で才能とはその血に宿る力をどれだけ引き出し、操れるかを指す。どれだけその一族では天才と呼ばれても、その血に宿る能力が100しか無いのなら、能力が1000ある血を持つ一族で200しか使えない凡才にも劣る。
それが魔術。

「複雑だね……」

 はっきり言って、ここに来てから色々と知らない事を言われ過ぎた。
知恵熱が出そう……

「まぁ、一応この事は入学したら解ると思います。……それで、ここからどうしましょう?」
「……」

 悠輝としては、軽い現実逃避の為にこの話題を振ったのだが、いつまでも逃げてちゃ駄目なのである。

「ともかく、前に進んで……」

 ふと、前を向いてそう言っていると、何かが走って此方へ来る。

「何あれ?」
「人でしょうね」

 霧の中から走って来たのは男四人組。
絶対に受験者だろう。

「ちょっと退いてくれるかね!? 今、非常にピンチでね!」 「君たちも逃げた方が良いぜ!」 「あり得ないあり得ないあり得ない……」 「死ぬ、あれ何だよ!? あんたらも逃げな!」

 各々アドバイスらしきものをくれ、全速力で走り去った……
三人目はアドバイスでは無いが……

「何、今の?」

 四人組が走り去る後ろ姿を見ながら呟く。
正直、嫌な予感しかしない。

「……あの、悠輝さん。前を見て下さい」
「ん? 何か見つけ……」

 言われて前を見て、凍る。

「……何あれ?」

 霧の中から何か一杯、ぞろぞろと走って来る。
しかも、よく見ると人では無い、絶対に。

「ゾンビかと……」

 生きる屍、ゾンビ。
流石のセイラも、うげっ、て顔をしている。

「よし、逃げよう!」

 即断即決。
踵を返して全力で逃げる。マジで怖い。ゾンビなんて一生見たくなかったよ。

「あれも念から生まれたやつ!? ここゾンビが出るって話あったの!?」

 走りながら叫ぶ。
念で出てきた騎士と同じだろう。即ち、噂があった筈。

「知りません!」
「バイオなあれだよ!? これ!」

 こんな体験、ゲーム以外じゃ無いと思っていたが、どうやら実際にあるらしい。世界は意外と厳しい。

「うそぉっ!?」

 自分達がこの中庭に入った扉に鍵がかかっている。

「何で!?」
「多分、あの四人組の方達かと……」

 あの野郎ども、最悪だね。

「あぁもう! どうなるか解らないけど、術を使って切り抜けよう! セイラ、下がって」

 完全な賭けだがやるしかない。
男ならやるしかない!

「……待って下さい!悠輝さんはまだ魔術に余り慣れてません! 危険です!」
「ならどうするの!?」
「私が行きます」
「えっ!?」

 何か、セイラの決意した様な声。今までの優しげな声では無い。

「私も魔術師です。悠輝さんは後ろへ」

 すっ、と自分の前に立つセイラ。
雰囲気が明らかに違う。


 セイラが何かを唱え始めた。しかし、聞いたことの無い言葉。
英語でも無いし、ヨーロッパのそれとも違う。
ゾンビが迫るなか、胸に五芒星や三角形などを重ねた、複雑な、ペンダントの様な物を掲げる。

「我が呼び掛けに応じ、ここへ来なさい」

 さっきの呪文が終わったのだろうか、今のは英語。

「顕しなさい、フラウロス。地獄の大いなる公爵よ!」

 瞬間、セイラの周りの霧が吹き飛んだ。
どうもこんにちは。神威です。 部活が始まった為に、更新は遅くなります。ごめんなさい。 相変わらずだらだらしてますが、楽しんで頂けたら嬉しいです。 ではまた次回。


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