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ひだまり
作:佐達砂羽



不器用なふたり


 首筋にだるさを覚えて目が覚めた。
 頭がぼーっとして、一瞬どこにいるのか分からなかった。
(そうだ、いつもの空き教室に逃げて来たんだ)
 祐也と、どんなふうに接していいのか分からなくて。
 ふと人の気配を感じて隣を見れば、いちばん顔を合わせたくないと思っていた人物が眠っている。
ひいっ
(‥‥あ、お弁当)

 夏休みを目前に控えた室内は、太陽が高くなるにつれて温度を増していた。
 開けておいた頭上の窓から、さわやかな風が吹き込んだ。

 揺れる 白いカーテンの下 眠っている男の子。
 こんなに近くで顔を見たのは何年ぶりだろう。
 小さい頃はあんなによく遊んだのに。

 菜子は投げ出していた両足を腕に抱えるようにして、その上に頭を乗せた。
 トクトクと刻まれる血の巡る音。
 体があったかくなっていく。

(あたしは 祐也のこと こんなにもすきだったんだ。)
 部活焼けした茶色い肌、風を受けて揺れる短い黒い髪。
(次の試合でレギュラーになれますように。)
 菜子は焼けた頬にくちづけると、無性に恥ずかしくなってそこから逃げ出した。


 夢から覚めて3秒、突然降ってきた夢のようなキス。
 その唐突な出来事に、跳ね上がった心臓をなだめるようにして寝たふりを続けるのは至難の業だった。
 だんだん顔があつくなっていく。
 でも今目をあけたら、これからどうやって菜子と接したらいいのかますます分からなくなる。
  バン と戸の閉まる音を聞き届けて目をあけた。
 残っていたのは、頬のくすぐったい感触とお姫さまのお弁当。

「忘れてるし‥」

 日に焼けた肌を耳まで真っ赤にして、祐也は気むずかしい幼なじみのことを想った。

 また暑くなった教室に、3時間目の始まりを知らせるチャイムが鳴り響いた。


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