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「隣の異世界」シリーズ

隣の隣の宰相様

作者: 尾黒



「つーばめちゃーん!」


「はーあーいー!!」


「おぉおおお!!つばめ!それは、アレだな!先日のトト□の……!!」


「ちょ、うるさいよ、ゲオルグ!いずみが迎えに来たんだっての!泉ー!もうちょっとで顔完成するから!あと、あと、チークとマスカラと!アレとアレで……」


「うん。燕が時間通りに用意できてるとは思ってないから。迎えに来るって予告した時間はアンタの準備時間込みの時間だから。」


「どおりで!映画始まる時間に比べて指定時間が早いと思ってたーー!!うああん!待ってなさいよ!すぐ終わるんだからぁあああ!!」


「はいはい。……あ、ゲオルグさん。ちょうどよかった、これ、お土産。貰い物なんだけど、青森県産のりんご。うちじゃもう消費しきれないから、三条家とゲオルグさんちで食べてくれると嬉しいな。ゲオルグさんのところはお城だから人がいっぱいいそうだし。」


「ありがたくいただこう。我が城の厨房を預るコック長は菓子作りがことのほか得意でな。何か作らせてみよう。それはそうと、燕の準備が整うまで茶でもどうだ?」


「いただきます。……あれ、小夜子ママは?いつもならテレビ見てる時間じゃない?」


「うむ。今日は夫婦二人きりで湖までドライブに行くと言って、早朝からいないのだ。」


「相変わらず仲のいいご夫婦だねぇ。ゲオルグさんは今日休み?」


「いや……うむ、休み、という概念は存在しない職業だからして……」


「サボっちゃったんだ。」


「けして、サボっているわけではなくだな、息抜きと言うか、なんというか、」


「燕に会いたくて来ちゃった?」


「うむ、燕に……いやっ、そうではなく!サボリだ!」


「……そうですか、サボリ、ですか。我が国の最高権力者ともあろうお方が。」


「うむ、サボ……ダプター……何故此処に……」


「泉、久しぶりですね。お元気そうで何よりです。」


「ダプターさんこそ、いつもどおり大変そうね。宰相なのに王様のお世話して鏡を毎回行ったり来たりなんて、激務だねぇ。」


「い、泉!お前、ダプターが来ていた事に気づいていたな!?」


「うん。鏡から出てくるところをバッチリ見たからね。」


「何故教えなかった!?」


「え……面白そうだったからだけど。」


「泉ぃいい!!」


「王よ、ご自分の怠慢を棚に上げて泉に当たらないで頂きたいですね。泉、今日は燕殿とゆっくり楽しんでいらっしゃい。来週は『あちら』へ2人で遊びに来るのでしょう?」


「そのつもり!来週は、ちゃんと時間作っておいてね。」


「ええ、もちろんですとも。そのために今日から我が君には馬車馬の如く働いていただくつもりなのですから。」


「馬車馬……!?ダプター、お前、私に死ねと申すか!?」


「いえ、皆のために、こう思っております。……生きろ!」


「も、もののけ、だと……!?ダプター……。私に膝をつかせるとは、お前、なかなかやるな……!」


「泉ー、お待たせ!やっと顔作り終わったよー……って、え?なになに?ゲオルグはなんでヒザから崩れ落ちてるの……?」


「ゲオルグさんは……うん、ダプターさんに任せて、私たちはもう行こう。遅れちゃうよ。私、映画は予告から見るのが好きなのよね。」


「わ、やばい、ギリギリかも!んじゃ、ゲオルグ……じゃなくて、ダプターさん、戸締りしてから戻ってね!いってきまーす!」


「ダプターさん、また来週ね。いってきます。」


「いってらっしゃいませ。後のことはお任せを。……さ、王よ。お戻りください。皆手ぐすねひいて待っておりますからね。」


「燕っ!燕ー!!私も行く!行かせてくれー!!」


「お覚悟なさいませ。」


「つばめー!!って、おい!ダプター!鏡の縁に足が引っかかっておる!無理に引っ張るな!いたた!!」


「往生際の悪い……。燕殿に貴様のある事ない事吹き込むぞ、ゴルァ。」


「泉がいなくなったとたんに本性出すな!というか、普通、王の首根っこ掴んで引き摺るか!?」


「お前が脱走なんてするからだろうが。俺の手ぇ煩わせやがって。よほどこの俺様にどつきまわされたいようだな、ゲオルグ。」


「ダプター!掃除中の侍女が脅えておる!落ち着け!」


「だったら俺と泉のために仕事しろ。おら!とっとと執務室へ行きやがれ!」


「相変わらずのその優男の外見に似合わぬ雄々しさよな。雄々しいというか、ガラが悪いというか。ヤンキーという生き物に似ておるぞ。」


「そうか、よほど燕殿に嫌われたいと見える。どんな捏造してやろうか。」


「突然、仕事をしたくなったぞ!さ、ダプター、早く参れ!」


「……現金な。……ああ、そこの侍女……確か、メアリですね。怖がらせてしまって申し訳ありませんでした。このりんごを厨房へ持って行っていただけますか?もちろん、……見たことは、秘密、ですよ?」






END


-----------

志波姫しわひめ いずみ

>>異世界交流中の三条家長女、燕とは幼馴染で隣人。女。

>>異世界交流の仲間に入れてもらっている。

>>志波姫家と三条家は家族ぐるみのお付き合い。異世界人たちとも同。

>>王様と燕との微妙な関係をワクワクしながら眺めている。若干巻き込まれ気味。


ダプター・オリゲルド

>>泉から見て異世界にあたる、イリグリア国宰相。男。

>>ほいほい脱走する自国の王を、実力行使で引き摺って帰るのが日課になりつつある。

>>普段は優男風のエキゾチックイケメン。敬語キャラ。

>>若いころはヤンチャしており、時々垣間見える俺様なヤンキーキャラがチャームポイント。


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