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読者の皆々様、地震や津波での被害は大丈夫だったでしょうか?
私の方は液状化現象に断水、果ては物はないという状態になりました。

あれから一週間とちょっと。

だいぶ落ち着いてきましたが、ニュースを見ているとまだまだこれからなんだと思い知らされます。


そんな中での更新にはなりますが、かなり遅くなって真に申し訳ないです。

かなり前にアンケートをとらせて頂きましたが、とくに要望もないようなのでw
このまま進めようかなとw

何かあるようでした感想板でもメッセでも構いませんのでお聞きしたいと思います。

流石に全て答えるのは無理かと思いますがw(そこは作者の力量不足と思ってくださいw)
イベント中でも仕事は仕事


「おうおう、やっと俺様の出番か!しっかしレイン坊の言う通り、使い手が現れやがった。おでれーた!レイン坊は預言者かなんかか?」


煌めく片刃の剣を半ばまで引き抜いた才人はこれでもかというくらい目を見開き、大口を開ける。


「?どうした相棒」

「けっ、け…け…」

「あん?俺っちには毛なんか生えてねぇぞ?」

「剣が喋ったぁぁああああ!!!!」



ヴェルストリの広場に才人の悲鳴が木霊した。







……………………………………………………………………………………………………………………………………。




木々が鬱蒼と繁る、森の中。

昼間だというのに日の光りが地面に届くのは微々たるものだ。

時折通り過ぎる風に煽られて葉音がなる静寂に包まれた森の中ほど。

普段ならば聞こえてくる鳥の囀りもいまはなりを潜めている。

代わりに聞こえてくるのは…



「ピギャァアアア!!」


醜く耳障りな豚の様な鳴き声であった。



―オーク鬼



豚の面をした体長2メートルを超える二本足で歩行するハルケギニアでは忌み嫌われる亜人である。

知能は低いが、防具や武器など原始的な物を使っている。
石斧や、こん棒、どこから拾ってきたのか錆びた鉄の剣を持つ者もおり、簡易的な鉄の板の鎧と分厚い皮下脂肪に覆われており、致命傷を与えることはなかなかに難しく、人間では到底覆すことの出来ない膂力から繰り出される力技の一撃を止めることは、これまた難しい。


オーク鬼一匹は、手練れの傭兵5人に匹敵するとされており、それだけでも厄介とされているのだが、奴らは群れで行動するのだ。


森や山から降りてきては村を襲うこともしばしばあり、特に子供の柔らかい肉が奴らオーク鬼の大の好物でもあった。


その醜い容姿と、酷い臭いに輪をかけて、その様な趣向が最も忌み嫌われる要因である。



そんなハルケギニア全土の敵とも言えるオーク鬼が、腐敗臭を撒き散らし、粘り気のある唾液を垂らして、数匹が森の中を駆けている。


ドスドスと、一心不乱に時折後ろを振り向きながら。


恐怖され、忌み嫌われる存在がまるで何かから逃げるようにだ。


やがて拓けた場所に出た一匹、兜の様な物を被り、他のオーク鬼よりも体格が大きいことからこの群れのリーダーと思われる怪物が息を切らせて足を止める。

それに合わせて5匹のオーク鬼が足を止め、自らが駆け抜けて来た方向に体を向けて己が持つ得物を構えた。


リーダーである個体は二歩ほど後方に、それを半円程の陣形で他のオーク鬼が守る様に固めていた。

忙しなく顔と目を動かし、フゴフゴと鼻を鳴らすその姿は恐怖に染まっていた。




「ピギャァアアア!!」



ほの暗い森の奥。


日光の届かない鬱蒼と繁る森の向こうで、恐らく群れの一匹であったであろうオーク鬼の奇声が響き渡る。

陣形を組んだオーク鬼達は一斉にそちらに顔を向けてピクリとも動かなくなる。


丁度真ん中に位置する一匹が、目を凝らしてその奥を覗き込むように目を細め、顔を突き出したその刹那。


赤い液体を撒き散らしながら、森の奥から何かが吹き飛ばされる様に飛んできた。


咄嗟に一歩下がった真ん中のオーク鬼はどしゃどしゃと、自分が立っていた場所に降ってきた“物”を、足元に転がるその物体に目をやる。


それは同胞であったモノ。


胴、腕、足、頭をバラバラにされて、血濡れに吹き飛ばさた群れの一匹であった。


先程聞いた奇声はその一匹の断末魔。


死して尚、恐怖と絶望に彩られる寸断された同胞の面。



群れのリーダーが叫びを上げる。

それに呼応して生き残り達が次々と絶叫にも似た声を上げていく。


不揃いに鳴り響く声は、聞くものが聞けば腰を抜かし失禁してしまうであろう。

しかし、いま、窮地に立たされているのはオーク鬼であり、この声は恐怖を、絶望を、憤怒を混ぜ合わせた混乱の声なのだ。



―カサリ




そんな絶叫を一瞬で黙らせる微かな草の擦れる音。


ふー!ふー!と、荒い息を吐いて体を震わせるオーク鬼の視界に一人の人間が映った。



反り血も浴びず、疲労の様子もない。


実に醒めた顔をした男、レイン・カーン・ファ・ラ・キュベレーがそこには居た。



「ぷぎぃぃいいいい!」


真ん中の一匹は唾液を撒き散らし、手に持つこん棒を振り上げて、叫びと共にレインへと駆けていく。


一種の恐慌状態に陥ったのであろうその姿。


ドスドスと大地を踏み締める足音は、キンッという金属の耳に通る音の後、消え去る。



レインに向かって駆け出した一匹は、突然ふわりと浮かんだような錯覚捕われ、そのまま地面に滑り込む。

状況が理解出来ず、何度も頭を地面に擦りつけた。
それが地面だと、自分が地面に倒れているのだと理解出来たのは、目の前に人間の足があったから。
自分達とは違う、細い足。

倒れたオーク鬼はそっと首を持ち上げる。


見上げた先には紅い焔と、反して冷えた人間の瞳。


ぎこちない首の動きで振り返れば、倒れている自分に対してしっかりと地面を踏んでいる足。

ただ、その足からは噴水の様に血が吹き出ていた。



「ぷぎゃあああああ!!」



理解したことによる目覚めた激痛。


悲鳴であったそれは、一瞬で断末魔へと変わった。


ゴロンと転がるオーク鬼の頭部。
レインは無造作に水鏡を抜いて切り落としていた。


まるでボールの様に転がったオーク鬼の頭部を一瞥すると、再び目の前のオーク鬼の残り少ない群れへと視線を移した。
通常、刃に付着した血糊を払って飛ばすのだが、レインはそれすらもせず、水鏡を鞘へと戻す。
その理由は実に単純だ。

オーク鬼の血が付着していないからである。

いったいどれ程の剣速で斬り飛ばせばその様な芸当が出来るのであろうか。

いったいどれ程の鍛練を積めばその境地が見えてくるのであろうか。



醜悪さとその残忍さから化け物と呼ばれるオーク鬼達の目には、それすらも超える化け物が写っていた。


死への道は一瞬だ。


知能の低いオーク鬼だからこそ本能で感じる絶対的な核心がある。


例え逃げ出そうとしても、背を見せたその一瞬で自分達はそこに転がる肉塊と変わらない個体になってしまう。


「プギイィィイイ!」


だから吠える。


群れのリーダーの声を背に受けた残りのオーク鬼達は一斉に一人の人間へと駆けていく。



個でダメならば群れで掛かればいい。

あまりにも単純過ぎる思考ではあるが、少し腕のたつ位の相手であったならばそれは良策であっであろう。

オーク鬼のような力も、ぶ厚い肉の壁も持っていない人間一人を圧倒的な数とパワーで押し潰す。
国と国同士の戦争であっても最後にモノをいうのはやはり数だ。
軍資金であったり兵力であったり、それは様々である。


少数が多数に蹂躙されるのは世の理。


圧倒的な力というものは見つけ出すのも馬鹿らしい程の少数の例外を除いて、効率的であり有効なのだ。




そう、このオーク鬼達はその見つけ出すのも馬鹿らしい例外を相手にしていた。




5匹のオーク鬼は愚直に突き進む。陣形や策などあったものではない。


数に任せたただの力押し。


そのようなモノが通用するのであれば、いまごろレインは何度死んでいるかわからない。


しかし、彼はいまも此処にこうして立っている。



レインはゆっくり瞼を下ろす。


暗闇。


瞬間、カッと目を見開くと神速の抜刀を繰り出す。


一番手前の一匹の体を横一閃。


煌めく光りの軌道を残しながら、刀を振り抜いた反動を利用し、左足を軸に飛び上がる様に一回転し、最初のオーク鬼の絶命を背に感じながら納刀する。
しかし、次の瞬間には目の前のオーク鬼に更に横一閃の抜刀で頭部を斬り飛ばす。


レインが地面に着地し刀を納めたとき、やっと最初に斬ったオーク鬼の上半身が下半身から滑り落ち、頭部を無くしたオーク鬼は棍棒を振り上げたまま数本前進すると、首から血飛沫をあげて後ろに倒れ込んだ。



だがオーク鬼はまだ3匹、リーダーを入れて4匹残っていることになる。

当然、いくら知能の低いオーク鬼でもこと戦闘に関してはそれなりの力と行動力をもっている。

レインに近付いた一匹のオーク鬼は石斧を叩き付ける様に振り下ろす。
それをレインは造作もないとばかりに体を滑らせる様にして避けた。

オーク鬼の石斧は無情にも地面に減り込み、レインはその石斧に片足を乗せる。


それに激昂したのか、鼻息を荒げた石斧のオーク鬼は両手で斧を掴む。

が、バランスを崩して何故か地面にその肉の塊ともいえる尻を勢い良く打ち付けた。


確かに両手は石斧を、これまで多くの血を吸ってきた自身の得物の柄をしっかりと掴んでいる。


つまりそれはどういうことか。

「プギャアァァァアア!」



オーク鬼は目線まで持ってきた自分の腕を見て絶叫をあげる。

ドクドクと遮るモノを無くして溢れ出す腕から流れる赤液体。心臓がそこにあるかの様に、激しく脈打つ激痛に耐えられる筈もなく、両手を無くしたオーク鬼は地面を転げ回る。


レインはそれを視界の端に捕らえて、グッと地面を蹴って高く後ろ向きに宙返りをする。
無惨な仲間の光景に立ち尽くす背後に立ったオーク鬼をそのまま脳天から縦に割る。




残り2匹。



開く左右に割れた肉塊の後ろ、レインはゆっくりと立ち上がりながら2匹の位置を確認した。

両手を斬られたオーク鬼は失血が酷く、既に痙攣を始めていることから動こうにも動くことなど叶わぬ状態だ。寧ろ痛みも麻痺し、意識も朦朧としているのだろう。
尻を上げた滑稽な格好の俯せに、粘り気のある涎を垂らしながら既に白目を剥き始めていた。



この群れは元々10匹程の群れであった。
森の中の動物を狩り、時折森を抜けては村や街道を通る人間を襲っていた。

オーク鬼が10匹も居ればどうなるか。
その地に住まう人々は脅え、その声を聞いた領主は当然討伐隊の編成を組むだろう。百害あって一利なし。奴らオーク鬼は害獣でしかないのだから。


しかし、奴らの群れは中々に人間を手こずらせた。その証拠に、奴らの群れはいまのいままでしっかりと機能していたのだから。

だから奴らオーク鬼は膨れ上がった。


その行動範囲を広げたのだ。


奴らのテリトリーは広くなり、そこで見付けた人々を襲いだしたのだ。


しかし、その時点で奴らの命運は尽きた。


ここはガリアの西、海沿いに位置する森の中である。


その海沿い、いま位置する森にそう遠くない場所、そこには一つの孤児院があった。

なんの変哲もない、どこにでもある孤児院だ。


ただ、その孤児院には一人の貴族が度々訪れていた。それも他国の貴族だ。



オーク鬼にそれを知るすべなどなく、『運が悪かった』、災害に見舞われたと思う他ない。



残り2匹を目の前に、その貴族、レインは言う。



「悪いな。これも仕事だ」


そんな素振りは微塵も見せず、形式的に口にする。


抜き身であった水鏡を納めると、黒羽を抜いて突き付ける。
2匹のオーク鬼はビクリと体を震わせて瞬時に身構える。


レインはニッコリ微笑み、


「…バーン」


まるで拳銃の引き金を弾く仕種をする。

黒羽の切っ先がクンと上に向いた瞬間、二匹のオーク鬼の上半身は肩から先、首から上を残して消え去った。


「んー…これくらいなら痛みはなし、と」


短く息を吐いて転がる死体に歩み寄る。



オーク鬼10匹を前にして圧倒的過ぎる勝利。



レインはなんの感慨も抱くことなく次々とオーク鬼の親指を斬りとっていく。

これは衛兵の詰め所に持っていくかすれば換金される。

仮にも傭兵団を束ねる者、その辺りに抜かりはない。
これで当面の孤児院の生活費にはなるだろうと、事務的に作業を続け、来た道を戻り転がるオーク鬼のからの回収も済ませる。

頑丈な川の袋に入れて風と水の魔法で消臭を行ってからレインはふわりと浮き上がる。
そのまま高度をあげていき、やがて日の光すら遮る木々を足元に、その光景は自然という緑の絨毯を広げた一つの世界があった。

レインは純粋に広大だと、美しいと想う。

先程までの命のやり取り…とは言い難い一方的な蹂躙劇を、ただの仕事と割り切って行った自分にも、まあなんだかんだでそういった感性までは麻痺していないのだと、無意識の奥にあるなんとも言えない安堵感に気付き、苦笑いする。


あまり人に見せられたモノではないなと、一人ごちたレインを白い閃光がさらう。

それは彼の使い魔、ルゥであった。


「お待たせ。…戻ろうか」


堅く、温もりのある純白の鱗を軽く叩くレイン。
ルゥは一鳴きするとその翼で大気を叩くのだった。
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