挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
そしてふたりでワルツを 作者:カミユ

外伝

34/45

幕間一   焼きもろこしとフランクフルト、それに果実酒と炭酸酒

メイン:マリク、デコ、ボコ ジャンル:ほのぼの

第九話  第ニ楽章:銀狼のラプソディー の幕間。
少しの間、祭りの雰囲気を楽しむ三人。
 想像以上の人の数に、湿っぽい熱気を覚える大通り。
 普段から賑わいを見せるこの場所だが、今は、この国の一体どこにこんなに人がいたというのか? というほどの人、人、人。
 広い通りにギュウギュウと人がひしめきあっている。

 理由は簡単。
 王の結婚パレードが本日行われるからだ。城から出発する一団はこの大通りを中心に、くるっと街を一周するらしい。
 それにかこつけて、通りの両端には美味しそうな食べ物や飲み物を並べた屋台が立ち並んでいる。

 通りの端にたどり着いたとき、マリクは部下二人の誘いに乗ったことをちょっぴり後悔した。

「なあ……ほんとにこの人混みに割って入んの? やっぱやめね?」
「な~に言ってんスかボス~。ここまで来て帰るなんて、バカのやることッスよ!」
「お前に言われたかねーよバカ」

 普段なら「バカって言うほうがバカなんスよ!」なんて軽口を叩いてくるボコだが、今はそれどころではないようだ。目を輝かせて立ち並ぶ露店を眺め回している。
 振り返って見ると、後ろに立っているデコもまんざらではない様子。普段から表情の読みにくい男だが、ややソワソワとしているように見える。

「食い物いっぱいあるッスよ! ボス何食います? あっ、アレ! 俺アレ食いたいッス!」
「あオイ、待てよ!」

 何か一段と興味を惹くものを発見したようで、ボコはスルリと人混みをすり抜けるようにして視界から消えてしまう。

「しゃあねえ、乗っかかった船だ」

 ややうんざりしながら、マリクも意を決して後に続く。
 戦場へ身を投じる気概で、人の波へ飛び込んだ。



 人混みというのは不思議なもので、前方に注意して自らの意志で両足を動かさずとも、ただなんとなく流れに身を任せているだけでゆっくりと前へ進む。
 他人との距離が近く息苦しいことや、抜け出すときの苦労を考えなければ、ひとまずは消えたボコを探しながら視線を彷徨わせるだけで良い。

「あいつ一体どこ行ったんだ」

 迷子に悩まされる保護者の気持ちで歩いていると、後ろからコートを小さく引かれマリクは足を止めた。
 デコがすぐそばの屋台を指差している。

「居たか」

 ここがスラムだったなら、人混みのほうが俺を避けて通るのに。
 そんな不満を胸に抱いて、人をかき分けなんとか抜けだしてきてみれば、屋台のそばのベンチに座ってとうもろこしを齧っているボコが視界に入る。

「ボス~~~!!! みてみて、金歯っ!」

 追いついた二人を発見したボコは、前歯にとうもろこしの粒を刺して笑顔を見せた。

「んグっ……ゲホ、ゴホッ。く、くだらねーことしてんじゃねーよっ!」

 あまりのバカらしさにむせかえり、投げつけようと思っていた怒りの言葉も引っ込んでしまう。
 よく見るとボコは、鳥を焼いたものや、果実酒の入ったカップまですでに手に持っていた。早くもお祭りムードを満喫しているようだ。
 そのまま脱力してボコの隣に腰を下ろすと、後ろからデコが焼きモロコシを差し出してきた。

「サンキュ。お前は気がきくなあ」

 こういうときに他人の分まで用意する寡黙な男と、自分勝手に動き回る愛嬌だけが取り柄の男。
 共通点の少なそうな二人の部下を横目に、「けど意外と相性良いかもな」と受け取った焼きモロコシを一口かじる。

「ん、結構ウマいな」

 特に味付けはされていない炙っただけのものだが、こういう場所で食べるとひと味違うものか。
 普段食べるものよりも数段美味しく感じられる。

「俺、次はフランクフルト食いたいッス!」
「待て! 落ち着け! またはぐれるからひとりで行くんじゃねえ! 食い終わるまで待て!」

 自分の分を食べ終わり立ち上がるボコを諌めながら、

「ま、たまにはこいつらに付き合ってやるのも悪くねぇかな」

 と、マリクは思ったのだった。



END(To be continued 第ニ楽章:銀狼のラプソディー)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ