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同居人の彼女は3歳年下の許嫁 作者:一歩

同人誌版その1

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プロローグ

2015年8月に開催されるコミックマーケット88で頒布予定の新刊の先行公開版です。
 高校二年生の十七歳になった僕──久遠寺颯太は、毎日を諾々と過ごして生きていた。
 将来に対しての夢や希望は特に抱いておらず、何かを成し遂げたいとかやり遂げたいとか、残りの人生を全部つぎ込んでも構わないと思えるような出来事も特にない。

 今を一生懸命に生きている平凡な男である。

 そんな平凡な男を自負する僕は、夢や希望を抱いて生きることについての善し悪しを論じたいわけじゃない。単に「一般人ですよ」というアピールをしたかっただけなのだ。
 そりゃあ、まぁ、多少は他人よりも良いところがあるかもしれない。人より秀でている部分や、他人から好意的に受け取ってもらえる部分もあるだろう……たぶん。

 だとしても、やっぱり僕は世間から注目されるようなスーパースターではなかった。そういう将来を迎えられる可能性も低いだろう──が、しかし。
 一つだけ、僕には人とは違ったことがある。自分から進んで話すようなことではないけれど、話せば「えっ、そうなの!?」と驚かれるのは間違いない特殊性があった。
 それは、僕自身の身体的な話でも能力的な話でもない。普通の人とはちょっと違った家庭の事情に由来する、外的要因によって成り立つものだ。
 いわゆる〝特殊な家庭環境〟というヤツだ。いや、家庭……制度、だろうか。

 それは、家に帰れば僕のことを待っている。

「ただいま」

 玄関を開けて四文字の定型文を口にすれば、一階の居間から律儀に顔を出す少女が一人。

「お帰りなさい、お兄さん」

 肩で切りそろえたボブヘアーの少女の名は磯崎梓。そして、僕を〝お兄さん〟などと呼ぶけれど実の妹ではない。単に僕の方が年上で、梓が名前で呼ぶのを恥ずかしがることもあって、紆余曲折の末に〝お兄さん〟という呼ぶようになっていた。

 そんな梓が、僕にとって〝普通とはちょっと違ったこと〟の原因でもある。

「今日は、義父さんと義母さんの帰りが遅いんですって。夕飯代は預かってるから外食でもいいらしいけど、何か食べたいものがあるなら作ってもいいわよ?」
「そうなのか」

 ということは、夜遅くまで梓と二人きり……ということになるらしい。

「なぁ、梓。そういうことなら──」
「えっちぃことはしないよ?」

 容赦のない反撃である。

「なんでだよ!? せっかく二人きりなんだし!」
「だからぁ、そういうことはお兄さんが独り立ちして、ちゃんと籍を入れてからって言ってるでしょ。それまでは辛抱しなさい」
「いやでも、だって僕らは許嫁だろ? 将来結婚しちゃうんだろ!? 別に待たなくてもいいじゃないか!」
「あのですね」

 血涙を流さんばかりに力説する僕を前に、梓が無感情の冷ややかな眼差しをぶつけながら嘆息した。

「私はそういうことを好奇心や興味本位でするつもりはありません。だから避妊もしません。そもそも、えっちぃことは〝子作り〟って言うんですよ? 子供ができちゃうんですから、ちゃんと育てなくちゃいけないんです。自分の子供なんですから、養育費も自分で稼がなくちゃダメですし、親に丸投げなんて許しませんからね? その辺りのビジョンがちゃんとあるのでしたら、さぁ、どうぞ」

「ンな重いこと言われたら萎えるわ!」
「昔の人は言いました。『子供が子供産んでどうすんだ』と」
「誰の言葉だよ」
「読み人知らず」
「………………」

「だいたいですね」

 ジト目で睨む僕に、梓は肩をすくめてトドメの一言を突きつけた。

「私、まだ一五歳ですから、えっちぃことしたら同意の上でも淫行条例違反ですからね。最高で懲役二年の実刑を食らうかもしれませんよ?」
「く……っ!」

 ものの見事な正論で、僕は敢えなく撃沈した──と、まぁ、こんな感じで。
 僕のいったい何が〝人とは違ったこと〟かと言えば、古風な家柄でもないクセに、今のご時世ではかなり珍しい〝許嫁〟という存在がいることだ。

 せっかくなので。

 この自分でも〝珍しい〟と思える許嫁との日常を、しばし語っていこうかと思う。
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