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第五話「勇者さまの武器と従者。」




 勇者には「勇者の装備」シリーズというのがあるらしい。


 どこまで王道RPG・・・
 いっそ拍手でもしてやりたくなる。


 そしてまたありがちなことに、いろんな所に隠されているらしい。


 はいはいはい。
 ダンジョンですかー?
 それともどっかの村長の家の地下室かなー?


 ・・・で、とりあえずこの城にはそういうのは無いということで、天音は自分に合った武器を貸してもらうことになり、今はそれを選ぶために城の武器庫へ来ていた。
 様々な種類の剣や槍や弓などがずらりと並ぶそこに、可憐な少女はまったく場違いで、なんかシュールだ。


「んー。槍って大きいんだね。重さ的にこれは難しいなぁ。・・・弓道はちょっとかじっただけだから、あんまり自信ないし。」


 困り顔で平然とつぶやいている天音に、これで大丈夫かといまさら思う。
 見知らぬ人々のために殺し合いをしてこいと言われているのだと、ちゃんと理解してるのか?

 ・・・・・・。

 ため息がこぼれる。
 ごめん、ちょっと口出しさせて。


「・・・王子サマ。勇者の最終装備って決まってるんでしょ?結局は何で魔王に挑むことになんの?」


 熱っぽい眼差しで天音を見つめていた王子の目の前で手をひらひらさせてやってから訊くと、彼ははっとしてしゃっきりと背筋を伸ばした。
 はい、お帰りー。


「[天空の剣]と聞いております。その昔、初代の勇者が女神から」
「はい、ありがとう。剣ね。天音、持てそうな剣選んで、ためしに持ってみなー。」


 はーいと素直に返事をして剣を探す天音。
 話を遮られて不満げな王子はどうでもいいから放置で。


「これくらいなら持てそう。」
「おー・・・。うん。いいんじゃないの。」


 わりとゴツいのを選んで手に取り、軽々と素振りなんてしている可憐な少女にげんなりとうなずく。

 そういえばこの子、剣道有段者。
 合気道だったか柔道だったか、素手の格闘技の方が得意らしいけど。
 わりと前衛の肉弾戦タイプなんだよねー・・・


「ついでに短剣かナイフも貸してもらっとく?」
「あ、短剣ならこれがいいな。」


 そんな感じで武器と防具を選び、今日の活動はおしまい。




 夕食は、もう完全に天音に惚れてるアースレイ王子を入れた三人。
 天音は色恋については残酷なほど鈍い天然少女なので、あたしはだんだん王子がかわいそうになってきたが、とくに二人に仲良くなってほしいわけでもない。
 話しかけられたときにだけ返事をして、豪華な食事をいただいた。






 〈異世界一日目〉終了。




 〈異世界二日目〉朝。






 いよいよ勇者さまの準備が始まった。


 最初は従者の選定。
 騎士と魔法使いと神官を連れて行くらしい。


 あたしとしては人目につかないところでこの世界の情報を収集したかったのだが、天音が一緒に来てくれといってきかないので、とりあえず騎士の選定に付き合った。
 あんまり人見知りしない子だけど、さすがに世界が違うというので、不安があるのだろう。


 選定方法はトーナメント方式の試合。
 実力で決めるわけで、まあ、わかりやすくはあるのだが、あたしは優勝した青年がどうにも気に入らなかった。


「天音。もしあたしの意見を聞いてくれるんなら、準優勝の人にもついてきてもらえるようにお願いしてみてー。」
「うん。わかった。」
「それじゃねー。」
「ええ?!お姉ちゃんもう行っちゃうのっ?」
「城からは出ないからだいじょーぶー。」


 ひらひらと手を振って天音を王子に任せ、あたしは情報収集をしに城をふらつきはじめた。
 「勇者」天音がお姉ちゃんお姉ちゃんと慕ってくれるので、この城でのあたしの評価はそれなりに高いらしい。
 つまり、あたしを通して天音を操ろうともくろむタヌキオヤジが何匹もいるわけである。
 いやー。
 かいかぶってくれてありがとう。


 「天音もあたしも甘いものが好き」と三匹目の太鼓腹なタヌキオヤジにさりげなく吹き込んで、あたしはまた次のカモを釣りにふらふら歩く。
 自分がエサなるって、すごい楽だわー。




「・・・リオどの。」

「はいはーい?」




 おや、今度のカモは若いな。

 思って振り向いた先にいたのは、天音の従者選定のトーナメントで準優勝した騎士だった。



 リオちゃんも年頃の娘さんなので、隙あらば恋愛要素を突っ込もうと思っています。が。・・・恋愛要素、に、なってくれるかなー?


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