第19話「2度目の闘い」
晄が放ったプラズマ砲の青白い光芒は、一番最初に森から飛び出してきたEvoldierへと一直線に向かっていく。
もちろん、黙って受けるほど、相手とて間抜けではなかった。
直撃する寸前に、左腕から生成させたシールドでプラズマの光芒を受け流す。
晄から聞いた話によると、このシールド、Deflectorと呼ばれるのだそうだ。
Evorrior、Evoldier共通で使える防御装備で、通常の打撃や斬撃に対する防御はもちろん、表面に磁場を形成する事によって接近するプラズマを別方向に逸らす事も出来るらしい。
もちろん、使いすぎると昨日の晄のように過負荷を起こして使えなくなってしまうのだが。
第一撃を防がれた晄は、両手で持った薙刀を振りかざすと、先頭にいたEvoldierに向かって切りかかる。
当然、相手も武器(昨日のEvoldierとは違い、両刃の剣)を生成して反撃の態勢をとった。
Evoldierが、向かってくる晄に対して、大きく振り上げた剣を叩きつける。
「危ない!」
俺は思わず叫ぶが、彼女とて無策で敵の眼前に立ちはだかったわけではなかったらしい。
晄の赤い姿は一瞬のうちに相手の前から消えた。
「なっ……何処に?」
俺は晄の姿を探すが、辺りに彼女の赤い姿は見えない。
それは相手も同じらしく、せわしなく首を左右に振って晄の姿を探している。
次の瞬間、Evoldierの背後に赤い光が瞬いた。
「後ろ!?」
俺が叫ぶのとほぼ同時に、Evoldierも背後の晄に気付き、攻撃しようと振り向きざまに剣を薙ぎ払う。
しかし、晄の薙刀の方が早かった。
振り向いたEvoldierの背中から、紅の刃が突き出す。
晄の薙刀は胸の中央、心臓のある位置を正確に貫いていた。
「先ず……1体!」
動かなくなったEvoldierから薙刀を引き抜きつつ、晄がそう言い放つ。
だが、1体倒したといって喜んではいられない。
森の奥、闇の中から現れたEvoldierは、全部で6体。
そのうち1体は既に晄が倒しているが、残り5体。
高度な戦略判断が出来ないとはいえ、5対2というのはかなりのハンデマッチである。
こちらへと向かってくる5体は、途中で二手に分かれた。
晄のほうへ3体、俺の前には晄との間に立ち塞がるように2体が向かってくる。
「悪いけど、援護は出来ないわよ!何とか頑張って!」
晄が3体の先頭を走っているEvoldierと刃を切り結びながら叫ぶ。
「……言われなくても!」
晄にそう返しつつ、俺も昨日と同じく両手から光る刃を出す。
この光る刃、『Dioscuri』というコードネームで呼ばれているようなのだが、詳しいことは晄にも解らないらしい。
両手の指先から10cmくらいまでの部分に強力な磁界を形成して、プラズマを封じ込め、それによって接触した物体を切断するとか何とか……。
と、今はそんな事を考えている場合ではない。
俺の方に向かってくる2体のEvoldier。
手にはそれぞれ、槍と長柄の斧が握られている。
先頭のEvoldierが、手に持った槍を突き出してくる。
かろうじて避けるのとほぼ同時に、横から斧がこちらを狙って振り落とされた。
これも何とかかわす事が出来たが、紙一重のタイミングを間違えれば、即座にあの世行きである。
Evorriorの高い運動能力をもってしても、いつまでもかわし続けるのは難しいだろう。
「ちっ、どっちも長尺の得物かよ……」
こちらの武器は、相手に比べてリーチが短い。
徒手空拳といっても過言ではないほどだ。
攻撃を仕掛けるには、相手の間合いの中に飛び込まなくてはならない。
それに、ここまで接近してしまうと、プラズマ砲はまず使い物にならない。
砲身が正面向きに固定されているため、至近距離では狙うことすら困難なのである。
「……まてよ、もしこの手が触れた物全てを破壊できるのだとしたら……!」
俺の頭の中に、ひとつの作戦が浮かんだ。
この手を使えば相手の得物を無効化しつつ、こちらのリーチ内に相手を捕らえられる。
「……よし、やってみるか!」
呟くと同時に、上段から振り下ろされる斧の切っ先をかわすと、その柄に向かって手刀を叩き込んだ。
いくら装甲同様、ダイヤモンド以上に硬い材質で出来ているとはいえ、高密度のプラズマに触れられた斧の柄はあっという間に蒸発してしまう。
柄を失い、地面へと落ちる斧の刃。
チャンスだ。
敵が武器を再生成する前にこちらの攻撃を当てる事さえ出来れば……!
俺は、青白く光る右手を突き出す。
しかし……。
「……!」
俺は、さっきの晄のように、敵の心臓を貫く事は出来なかった。
俺の攻撃は、相手のわき腹に僅かな傷を与えただけ。
相手が避けたのではない。
俺が、無意識のうちに急所を逸らしてしまっていたのだ。
気がついた瞬間には、もう敵は斧の刃を新たに生成してこちらへ振り下ろそうとしている。
「……ええい!」
地面を抉るほどに姿勢を下げつつ、何とか振り下ろされる一撃を回避した。
一旦、後へと跳躍して間合いを稼ぐ。
俺はジャンプしつつ、思わず悪態をついた。
「……一体何をやってるんだ、俺は……!」
絶好のチャンスだったというのに。
何故、俺は今、止めをさせなかったのか。
「昨日は出来たってのに、何で……!」
そう自問しながらも、俺は既に答えに気付いていた。
俺は、知ってしまったからだ。
ここにいるEvoldierは皆、自分の意志とは無関係に生体兵器にされて、無理やり戦わされているのだと。
彼らもまた、被害者なのだと。
そして、俺自身もまだ、はっきりと『戦う』という意思が固まっていないのだと。
もちろん、この状況で戦わずにすむとは思えない。
でも、できることなら何の罪も無いEvoldierの素体とされた人を、躊躇無く刃で貫きたくはない。
葛藤する俺とは無関係に、2体のEvoldierはじりじりと俺に向かって近づいてくる。
「……やるしか、ないのか?」
俺は、向かってくるEvoldierと対峙すべく、再び『Dioscuri』を展開して構えた。
しかし、相手もぎりぎりの位置から近づいては来ない。
先程同様、武器を破壊されて至近距離に寄られるのを警戒しているのだろうか。
膠着状態が続く。
だが、この膠着状態は長くは続かなかった。
お読み頂き有難うございました。
格闘戦に限らず、動きが激しくなるシーンは文字で表現するのは難しいのですが(言い訳?)、少しでも闘いの雰囲気を感じていただけたら幸いです。
ご意見、ご感想お待ちしております。
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