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トリックの具体的な作り方、最初の一歩

 トリックについて、具体的に密室とか、アリバイ工作とか、そこらへんに具体的に触れた話がないですよね、これまで。

 トリックの具体的な分類とかそれぞれの作り方とか書けや! という要望がひょっとしたらあるかもしれませんが、しません。


 それは、以下の理由によります。


 1.トリックの分類とかは他の書き方本にいくらでも乗ってる。


 2.面倒くさい。


 3.実際に書く場合にあんまり役に立たない。


 要するに、もう世に類似の品がある上に、労多くして益少ないということですね。


 どうして役に立たないのか。


 トリックの基本構造は体系的に分類することができます。だが、それを見ても実際にミステリに使えるトリックがあるかというと、そういう意味では役に立ちません。

 むしろ、そこに載っているトリックの数々は、自分はもちろん、小学生でも思いつきそうなバレバレの単純なものばかりだからです。


 どうしてでしょうか?


 ここで、手品の話をさせてもらいます。


 手品の種とトリックが非常に似ているというのは以前言いましたが、手品の解説本を最初に読んだ時作者は驚愕しました。


 思いもよらない種が書かれていたからか?


 違います。逆です。

 はっきり言って、単純過ぎてバカみたいなトリックばかりだったからです。


 しかし、それを使ってできる手品は素晴らしいものがあります。何故でしょう?

 要するに、種の基本そのものが手品の素晴らしさの理由ではないということですね。


 では、どこでその手品が素晴らしいものになったのか。


 まず、その技術の高さです。

 例えば、パームトリック、これは手のひらでうまく隠して、何かを隠し持つというものです。

 種自体は単純すぎるほど単純で、これを使った手品なんてすぐばれそうです。

 が、プロのマジシャンはそれを信じられない技術で行うのです。どう見ても何も持っていないように見えるのに、何かを隠し持っているわけです。

 これをミステリで言うなら、トリックをどれだけ自然に隠せるか、読者に気づかれないように配置できる構成力や筆力ということでしょうか。


 そして、手品の種が直接謎にリンクしていない、つまり謎の焦点がずれているってやつです。

 手品の構成、展開、演出を工夫することで、種と謎の焦点をずらすというのは前に言いましたね。

 これはそのままミステリにも言えます。


 そして、種の使い方、切り口が斬新なタイプ。

 これは、種の構造をそのまま使うのではなく、普通は使わない部分にその種を使って、結果としてわけがわからない現象が起きるということです。

 ここが結構工夫のしがいがあるとこです。


 これをやってから、上の技術力や焦点ずらしをするっていうのがオーソドックスな感じでしょうか。


 まずはひどく単純な、バカバカしい、子供みたいなものでいいのでトリックと謎を考えます。本当に簡単で陳腐なトリックでいいです。誰でも思いつくような奴。

 そしてその謎とトリックを構成している要素を、「逆転」「延長」「縮小」「拡大」「置き換え」などなどをしてみましょう。切り口を変えるわけです。

 そうしてできたトリックと謎のうち、謎の焦点をずらします。

 最後に、トリックを技術力を駆使して自然に物語に紛れ込ませます。


 こんな流れでしょうか。

 ミステリ編で説明したトリックと謎の作り方について、より詳細に説明するとこんな感じになります。


「イマイチ分からないんだけど」と思われるかもしれません。まあ、抽象的ですし。


 で、これは具体的にトリックと謎ができていく過程の例を紹介すれば分かり易いんですが、そうなると紹介できるのは作者の作品だけになってしまいます。


 なので、まことに恐縮ながら「ファンタジーにおける名探偵の必要性」の第一話、そのメインのトリックと謎を作る過程を具体的に紹介しようと思います。

 当然ながらネタバレなので、もしも「まだ読んでないし、これから読むつもりだから見たくない」方は読まないでください。


 以下、ネタバレ。















 1.被害者が死んでいるのに生きていると誤認されて犯行時間がずれるトリックを使って、不可能犯罪にしよう。


 2.犯人が被害者のふりをするトリックだ。


 3.普通こういうトリックって遠目で見て誤認するけど、近くでしっかり顔を見ても誤認するトリックにしてみよう(要素の置き換え)


 4.ということは被害者の顔を目撃者は間違えて認識してるってことだな。


 5.主人公含めた目撃者が前もって被害者じゃない人間を被害者として紹介されてることにしよう。


 6.でも死体の顔見ればバレバレだし、写真やらビデオやらあるだろ。


 7.死体の顔をなくして、写真やビデオなんかがなくて、誰も被害者の顔を知らなくてもおかしくない世界の話にすればいいや(いったんトリック完成)


 8.ということは、話の流れでは被害者の殺害された時間がそこまで問題にならず、目撃された時には被害者が生きていたことは確定にしよう。で、どうやって推定犯行時間に殺したのかが謎の焦点になる話にしよう(謎の焦点をずらす)


 9.被害者じゃない人間を被害者として紹介される場面は、なるべく自然に、事件が始まる前のいちエピソードとして、ドラマの一部として紛れ込ませよう(トリックの紛れ込ませ)



 こんな感じですね。

 これで、メインの謎とトリックのぼんやりとした輪郭はできました。あとはここから尖らせたり肉付けしたりです。


 ともかく、最初の一歩のトリックは、別に参考資料なんかなくても思いつく陳腐で単純なトリックでいいのです。

 それを何とか捻って、謎の焦点をずらして、物語にうまく紛れ込ませる。

 この作り方をする限り、トリック辞典みたいなものはそこまで必要ではないかな、と思います。もちろん、あった方が便利かもしれませんし、それがあれば新しい組み合わせを思いついたりするかもしれません。

 が、ぶっちゃけ、そんなものを買って読むぐらいなら、評判のいい推理小説読んだ方がいいと思います。その推理小説を参考にして最初の一作書いたっていいし。

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