第四話 サイエンサーを探せ!
「つまり話を整理すると、警備員が朝見に来たときにはもう無かった…という訳ですか…。」
「省略されているがそういうことだ。」
事件は裏組織で起きたので、警察の届け出る事もできなかった。
「…でも不変薬は有害な毒が入っているわけでもないから、そんなに深刻な事件ではないと思いますよ。今のこの世界を考えれば薬に必要性も薄れているし。」
「それはそうだが…いや、違う。」
「どうしてですか?」
「忘れたのか!?不変薬の雑菌消去は終わっていないんだ。もし犯人がうかつに開放したら…世界中のサイエンサーが危険にさらされる。」
(アメシストのいい加減なところが現実に現れたんだな…一種の自業自得じゃないか。)
廉にとってこの一件は関係の無いものだと思っていた。
「博士、防犯カメラとかの映像は無いのですか?常に担当員が監視していなくても、24時間録画しているのなら、犯人を当てる切り札になりますよ。」
次郎は案を出した。
「それが…厄介なんだ。」
「厄介?」
「実は、盗んだやつはサイエンサーなんだ。」
そして、あえて廉が説明を加えた。
「確かにそうですね。サイエンサーは、元態の姿が僕らの顔と同じように人それぞれ違い、おまけにそれが戸籍などに登録されていない…新しく誕生したサイエンサーなら、なおさら個人の特定が難しくなりますね。」
「そうか…昨日から今日までのここの人の出入りは?」
「山ほどあるぞ。ただ、奪取された時間を元にそれを制限すると…ちょっと待ってろ。」
彼はポケットから手帳を取り出し、答えを出していた。
「なんてこった…やつはまだここにいる事になるぞ…。」
「ま、まさかそんなこと…」
「奪取された時刻から今朝まで、誰も外へ出ていないんだ。事件が発覚してからは、ここに出入るのに警備員による事件の事情聴取と…同時にサイエンサ―検査を受けなければならないんだ。突破した者は全て人間と、アリバイがあるサイエンサ−。…とんでもない事になったな…。」
次郎は、今回の博士はいつもよりカッコイイな…、と思いながらそれを聞いていた。
「なんかストーリーの方向が間違っている気もするが…サイエンサ―探しといきましょう。時間はあまり無い。犯人が行動に移す前に、どうにかして不変薬を取りかえさねば。」
アメシスト始まって以来の頭脳戦が始まった。
「特に問題なのは、相手が変態能力を持っているという事だ。」
「…あ、そうか。まだ一度も変態していないのなら、ここのアメシスト隊員になりすましても姿が分からない…大変ですね。」
「兎に角、基地内の全ての隊員にサイエンサー検査を受けさせるんだ。」
「検査は終わったが…全てシロだ。」
ストックホルムは残念そうに結果を話した。
「じゃあ、どこかに隠れている…?」
「そう考えるのはまだ早いと思いますよ。」
廉は反論を述べた。
「大佐、検査はどのような方式で行ったのですか?」
「…ひとまず隊員に強制的に列を作らせて、先頭に行ったらリトマス紙を触らせる…といったところだ。」
「…そこで…デジャヴを感じませんでしたか?」
「デジャヴ?どういうことだ?」
「例えば、一度検査を受けた隊員が混乱のせいでか、再度列に並ばされていたとか…。」
ストックホルムは数秒考えてから答えた。
「たしか…一度あったな。その時は説明を受けて、2回目の検査をしなかったが…。」
「やはり…。」
廉以外の三人は事態が分からないでいた。
「廉、どういうことなんだ?」
「…もし、1回目の隊員が本物で、2回目がそれに化けたサイエンサ―なら…分かりますか、僕の言いたい事?」
三人はこの時点で理解できた。
「これで全員ですか。…ものすごい数だなあ…。」
全ての隊員は、面積の広い地下研究所に集められていた。
「実写版『ウォー○―を探せ』か…こんなんで見つかるのか?」
アメシストはこのような事態を推定していなく、人数も多いので目での捜索となってしまった。
「…見つかるのかよぅ!!」
ドッペルゲンガーは弱音を吐いた。それも無理が無い事だ。2時間もこの作業をしているのに、まだ同じ人間が見つからないのだ。そんな中、山田次郎は何かに気付いた様だった。そして彼は一人の人間に話しかけた。
「大佐、あなた…検査受けましたか?」
「私を疑っているのか?」
「次郎、それは無いだろう。」
二人は次郎の言った事に大きく反応した。
「もし大佐がサイエンサ―で、僕たちに嘘の報告をしているのなら…全てつじつまが合いますよ。大佐は一日中基地にいて、外には滅多に出ない。一番偽装しやすい人物といえると思います。」
「な、何を言うんだ。検査などとっくに受けたぞ。」
「ならここで再び受けてみてくださいよ。」
「……」
ストックホルムは黙り込んだ。
「…君は天才だよ。負けた。」
彼の姿は真実へと変わっていった。
「先輩、僕の面目が丸つぶれじゃないですか。」
「…気にするな。」
廉は次郎とも親しくなっていき、自分の思いを素直に伝えられるようになっていた。
「博士、それで不変薬は見つかったのですか?」
本物のストックホルム大佐も発見され、事件は解決した、と思えた。だが…。
「実は…無いんだ。」
「無い!?」
「例のサイエンサ―を問いただしたんだが、奴もまた何者かに奪われたらしいんだ。」
「誰…か?」
雰囲気は暗くなる一方だった。
「犯人が言うには、自分とはまた別のサイエンサーが奪取直後にひったくっていったらしい。」
「…じゃあ、まだ基地内にあるはずじゃ…」
「…いくら探しても見つからないんだ。これこそ、最大の謎だ。」
次郎は考えた。
「もしかして…薬を持ってここから出て行った?不変薬の大きさを考えれば、怪しまれる事なく突破できると思うんですが…どうでしょう?」
「検査はどう突破するんだ!?」
「…分かりません。」
その日、できる限りの人数で不変薬探しと真の犯人探しが行われたが、両方とも望ましい結果が出なかった。その事もありストックホルムになりすましていたサイエンサーの罪は軽くなり、事件は再び謎に包まれた。 |