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―とある姫様と領主の実記―CRAZY CONFLICT 作者:漣 出雲

第一章 †夜に昇る宴†

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――そんなこんなで、婚姻の事実を告げられてから、数日が過ぎ。

私は、今日という朝を迎えているのだ。

当初は、当然びっくりしすぎて放心状態。
どうにもこうにも放心状態。
スープはこぼすわ、ドレスは躓くわ、勉学の時間に意識が飛ぶわ。

それでも――幼少から私を見守ってきてくれたカステルが、「姫様が出城なさるその日まで、毎朝お目覚めの折は傍に居させて頂きます」と言ってくれたから。
何より心の支えとなっていた彼が、そうして私を見守っていてくれるから。
そのお陰で何とか今だに平生を保っていられるのだ。

そうして、迎えた今日、この朝。

ふと、一つの事実が頭に浮かぶ。

今朝になってよくよく考えてみれば、魔族との婚姻についての詳細を、私は何一つ知らされていなかったのだ。
別にカステルや他の臣下が教え渋っていたのではない。
私があの晩から放心状態で、知ろうにも心も体も、中身がすっからかんな状態だったのだ。

改めて水を飲み、瞬き数回。
まだ少し呆けた頭をしているけれど――それでも、多少気を取りなおしている事を自分自身で自覚して。


――うん。
私は、ティナ・クリスティーン。
若干18歳にして、唯一の王族。
女性にして、国家最高権力者。
その実質重大な立場に居る私が、ここで一人駄々を捏ねて逃げ出すわけにはいかない!

『王たる者、第一に考えるべきは国民也。王たる者、第一に犠牲にすべきは自身の身也』

これこそ、国の頂点に立つ者の原則です!とカステルに教えられたその教訓。
ここで生かさず、どこで生かすというのだろうか。

こういう身に生まれてきたことを恨むべきではない。
逃げる事なんて出来るわけない。

いいや、逃げるも何も、こうして話すらまともに聞けて居ないなんて、女王失格だ。

今日。
そう、今日こそは!

決して動揺などする事無く、王族としての責任を果たす事だけを頭に置いて、カステルから婚姻の話を全て聞こう――

そう決意し、寝癖でぼさぼさになった金の髪を手で撫でつけて、寝ぼけ眼を指で擦った。
体も視線もカステルの方に向け、ゆっくりと口を開く。

「ねぇ、カステル」
「何でしょう」
「――今日は婚姻の詳細を聞かせてちょうだい」

目を逸らさないように紅い双眼で彼の目線をしっかりと捉えた。

両手で拳を作り、膝の上で握り締める。
恐怖だろうか、覚悟だろうか。
自分でもよく分からないけれど、それは何かしら感情の高ぶりには違いなかった。

「わかりました」

彼もまた、何かしら意を決したように、私の視線を捕えていて。

「それではご昼食の折、ゆっくり話をするとしましょう」

カステルはそう言って、静かに私の部屋を出て行った。


――ふぅ。
肩の力を一気に抜く。
カステルの後を追う様、寝巻きのままベッドから立って、廊下に続く扉の方へ歩いて行く。
どうせあと少ししかこの城に居られないのだ。
自由気ままに寝巻きで歩き回っても、文句は言われないだろう――

―――『ティナ様みっともない!』とあっさり同世代の侍女に叱られるのは、ほんの数秒後の事であったが。


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