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―とある姫様と領主の実記―CRAZY CONFLICT 作者:漣 出雲

第一章 †夜に昇る宴†

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目を覚ました時、外はまだ暗かった。

雨降りの夕方とも見紛うよう、窓の向こうは薄らと青みがかっている。
鳥達の声はまだ聞こえない。
かろうじて聞こえるのは、階下で朝の支度をする音だけ。

そんな中で、私は緋色の双眸をぱちくりさせながら、静かなまどろみを迎えた。

「ん――……」

沈み込むように柔らかいベッドの上で、シーツの海を泳ぐように背伸びをすると、背まで伸びたブロンドが共にシーツで波をうつ。
ふかふかのベッドの上でゆったりとした目覚めを迎え、家臣が自分を呼びに来るまで待っている――それはなんていう、至福の時間。

ふと、咽喉が乾いている事に気がついて体を起こした。
枕元の棚の上にある水差しを手に取りグラスに注ぐ。
――掌に伝わる水の冷たさが気持ち良い。
両手でグラスを包みながら、ゆっくりと口に水を含んだ。
水分に飢えた咽喉元につぅと流れる水。
砂漠にまいた水滴の如くあっさりと体は水分を受け入れる。
そうして、こくりと水を飲みながら、私は冴えてきた頭を回転させ始めた。

普通の目覚め。
普通の朝食。
普通に水を飲む、この瞬間。

そんな“普通”の事を、一体私は、あとどれ位していられるのだろう、と。

この城の中で、“この国の為”に、果たして残った時間で一体何が出来るのだろう、と。



――『聖レィセリオス』。


たくさんの国が密集する中央地帯とはかけ離れた、深い森のそばにポツリとある国。

ハッキリ言うと、小国。
大した軍事力も政治力も無い。
他国と和平協定を結ぶ必要無いし、領土規定を結ぶ必要も無い程のド田舎。
故に、周辺との衝突すらも起こらない訳で。
静かで穏やかな国。私の愛する、聖なる国。


私はこの国の女王ティナ・クリスティーン、18歳。


先に言っておけば、父や母、兄、その他諸々親族は居ない。
そこら辺の事情を話せばややこしくなってしまうので取り敢えず省いておく。
とにもかくにも、私には、一族と言う者達が一切存在しない。
つまり、ごくごく自然の流れで、現在、国家権力は私に託される事となったのである。

王位継承は2年前にすんなり行われ、それ以降も面倒事など起こらなくて。

山あり谷あり苦労して、国を託されて早2年。
当時16歳程度の小娘を、よくここまで見守ってくれたと心から思う。
臣下の忠実さに対する賞賛は、本当に筆舌し尽くすに難い。
そうして、なんとか軋轢も相克も無く、安泰した2年間を過ごしてきた私。


――だけれども、ここにきて急に人生の転機が訪れる。


それは、世間一般でいう「お見合い」というもの(「お見合い」という華のある言語を選び遣っていいものなのかはさて置いて)。
とにもかくにも、齢18。
そんな私にもとうとう、婚姻に関する話が舞い込んできたのである。

そりゃあ、結婚願望が無いわけじゃ無い。
むしろ、女王であれなんであれ、私も憧れ溢れる10代の女性であって。
結婚には憧れがあって夢もある。
子供だって嫌いじゃないし、夫婦円満、助け合って小さな国を切り盛りしていく――
それはきっと、女王としても女性としても、最高の幸せだと思う。


しかし。その相手が人間ではないと聞けば、話が別であるのは――各々方も重々承知であろう。


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