30話 整理+獲得品、基本装備まとめ
30話
整理
ユージ一行は五年の歳月をかけて貯めた金を一気に消費してでも、乾坤一擲と"補正持ち"との戦闘のために金をつぎ込んだのだろう。
とてもじゃないが80レベル台では考えられない、豪華な装備に潤沢な消費アイテムが取り揃えられていた。
おそらく羽鋼の剣を手に入れた俺のように、"補正持ち"をストーキングするなりして手堅く財を貯めこんでいたのだろう。
「やはりキルエはオリシュが解放させていたか」
――ユージが統括して管理していた奴隷の刺青だが、やはりエルフ奴隷のキルエの所有権は消えていた。
俺の思惑通り、ここは予想通りといったほうがいいだろうか、オリシュ一行がユージに所有権を放棄させたのだろう。
「惜しいな。惜しいが欲を出しすぎれば破滅する……正直あれ以上のイレギュラーが起きるのは許容範囲を逸脱しすぎる」
「あのベッピンなエルフ、持って行かれちまったのか。
まあ最初にユージを殺してたら他の奴隷も手に入らなかったんだろ?
死体になると刺青が変質しちまうんだったか……よくわからんが」
「ああ、死体の刺青も昔よく観察したことがあるが明らかに変質していた」
オクラは納得したような顔から、ぎょっとした表情に変わる。
「お前、今年で十五だったよな?
昔冒険者狩りをしてたとか、刺青をどうこうしたりとか……いくつからそんなことしてんだよお前」
確かに、話だけ聞くと末恐ろしい子供だな。
そんな修羅場をくぐりぬけたということではない。
周りの人間からしてみれば、幼少の頃にそれだけ陰湿な発想に至るのが異常なのだ……。
「……さあね。
おっ、このタワーシールド下位地属性の魔法装備だ。こいつはお前が使うといい」
場を濁した俺は死体から引っ剥がした装備品をオクラに放ってやる。
「本当かやった!
っくう、お前の奴隷になって早数日、あっという間に俺が現役の頃の装備より遥かにいい装備になったぞ!」
思い返してみれば本当にあっという間だった。
信じられない話だが、まだこの街に来て一月も経っていないのだ。
■剥ぎ取った獲得品――――――――――――――――――――
力の指輪Ⅱx4
魔力の指輪Ⅱx1
敏捷の指輪Ⅱx4
術者の指輪Ⅱx1
力の腕輪Ⅱx4
魔力の腕輪Ⅱx2
敏捷の腕輪Ⅱx4
回復の腕輪Ⅱ[時間回復微上昇][重傷回復x5]
力のアンクレットⅡx4
魔力のアンクレットⅡx2
敏捷のアンクレットⅡx3
毒耐性のアンクレットⅡ[毒耐性++]
怪力の首飾り[力++]
各種良質鋼鉄、黒鉄、銀の防具 壊れた部分を廃棄して合わせて4人分
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■
「いらっしゃいませ」
「とりあえず一週間。今空いてる広くて一番いい部屋に案内しろ」
板金貨――金貨十枚分の価値、つまり10万G(100~200万円相当)――を二枚カウンターに置いた。
地上に帰り、いつも使っている宿ではなく迷宮地区から近い位置にある高級宿にそのまま入った。
いつも使っている宿は、値段からすればかなりいい待遇なのだが、いかんせん警備体制が万全とはいえない。
今の俺は大きな外傷や身体の欠損はないが、体調は万全とはいえない……それでなくとも高級装備を持っているのだ。
100レベルを超えた今、木端のような冒険者に後れを取るとは思えないが、正直身に余る財を身につけすぎた。
これから数多い奴隷と、おそらく売りに出しているアイテムに、倉庫に預けてある財産までチェックするのだ。
当分落ち着くまではこの高い安全性がウリの宿に引き籠り、外出は控えた方がいいだろう。
「かしこまりました。万全の守りと最高のサービスをお約束いたします。
なにかご要望がありましたらいつでも」
「奴隷が今から何人か来るから、この刻印がある奴は部屋に通せ」
正規の値段の二倍以上の金を支払い、これで色々と融通が効くだろう。
首にある刻印を見せ、さっさと部屋に入ってしまう。
レベルが30台である筈の新米が、一泊1万Gはする部屋に泊まったという情報は防ぎようがないが……引き籠れば無問題だ。
「へ、へへ……こんないい部屋泊まったことないぜ」
オクラはきょろきょろと落ち着きなく目線を動かし、この街にしては煌びやかな家具を恐る恐る触っている。
元の世界で、超はつかないまでもそこそこいいホテルに泊まる機会もあった俺は特に感慨を抱くことはなかったが、ベッドとソファーの柔らかい生地はたまらないものがあった。
「きちんと働くなら、これからももっといい目を見せてやるよ」
「ほんとお前は最高だぜ!」
「今から隷属の首輪の効果で奴隷を呼ぶ。
奴隷の一部命令権を与えておくから、その対応をしとけ。
……武器を取り上げ、奴隷の人数や資産の量、在り処、危害を加えないやらなんやらの命令くらいか。
やかましそうなのがいたら、適当に教育していいからな。
ああただし、顔に大きな傷はつけるなよ」
奴隷の命令権を条件付きで与える機能がある。
これは、国が奴隷を使って魔物領に侵攻する際円滑に軍勢を動かすために、研究の末できた成果だ。
国に仕える奴隷の命令権を最も預かるのは、この国で一番安全、というより安全でなくてはならない国王であり。
国王が早々前線に出るわけにはいかないのだ。
「おう、しっかりするさ任せとけ! だからよぉ……」
「わかってるわかってる。
それが終わったら、これでホテルの従業員にいい酒、肉、女を持ってこさせろ。
……ああ、肉は今からでもだな。腹が減って仕方ない」
じゃらじゃらと金貨を机の上に置く。
これで持ち金はわずかになってしまったが、もしかすればユージの予備金が手に入るし、例えなくても余った装備を売ればいい話だ。
魔法武器は、最も頻繁に使われる銀は鋼鉄より脆く壊れやすいが、使い手が優れていれば普通の武器より遥かに破損しにくい。
それが予備分まで手に入ったのだ。
念のために大量に貯めこんでいる、良質な鋼鉄製の業物の武具もこの際売り払ってもいいかもしれない。
■
――――特殊覚醒称号。
――――――――――
覚醒称号:[特殊]"人工生命体/ホムンクルス" 造られし人外。物質を取り込み適合する
:[特殊]"融合生命体/キメラ" 混ざりし者。他者を取り込み融合する
体質[早熟][吸収][適合] 能力[都合の良い半身:意識を記号の半身に移すことで、都合の悪い精神異常のみを軽減させることができる]
体質[融合][変異] 能力[体内操作:自分の体内の、血流や臓器、細胞の動きを任意で操作することができる]
――――――――――
――オクラに対応を全て投げ出し、ベッドで横になりながらステータス画面を眺める。
腕が一本もげる怪我を負ったのだし、安静に仮眠でもとるべきだろう。
俺の下につく価値は十分すぎるほど見せてやったし、オクラがこの状況で裏切ることはメリットとデメリットを考えればまずありえない……が。
心配性なので念のため命令権を行使し、変な命令をしないように事細かに支持を出したので万が一もありえない。
本来なら50レベルになって初めて発現する覚醒称号だが、自分はLv30台で発現した。
『******素質項目[早熟]クリア。前提条件[称号"基礎の塊"]クリア。特異状況29による素質項目[吸収]クリア。特殊プロセス発生******』
『******体質項目[早熟][適合]クリア。前提条件[称号"超回復"]クリア。特異状況274による素質項目[融合]クリア。特殊プロセス発生******』
おそらくだが、人工生命体/ホムンクルスの[早熟]がキーになったのだろう。
――これが特殊プロセスにより出た俺オリジナルの特殊な称号なのか。
――それとも特殊プロセスで、50レベルになれば発現した筈のものが普通より早く発現しただけなのか。
キメラは心当たりがある。
言うまでもなくマクロだ。
システムメッセージでもあったため間違いないだろう……俺は人間とマクロのキメラと判別されたのだろう。
ホムンクルスは……作られし人外。人造人間的な扱いでもされているのだろうか。
ゲームというフラスコの中で作られた、人間と記号の人造人間……随分と洒落た世界じゃないか、ここは。
普通は一つしかない覚醒称号が二つある時点で充分特殊なのだが……。
特殊覚醒称号自体が非常に珍しいが、覚醒称号の複数持ちはもっと稀だ。
歴代でもほんの僅かしか存在しておらず、この国を建国した初代国王もその一人だったらしい。
――初代国王の特殊覚醒称号の『創造主』に『英雄』、変わり種の俺も流石にここまで特殊なケースではないだろう。
……正直俺の場合マクロが無ければ、精々本をたくさん読むとなれる賢者くらいにしかなれた気がしないのだが。
思えば、俺がユージ達とは違いかなり初期の頃――50レベル到達前から"補正持ち"を判別し、憎しみを抱いたのは
人工生命体/ホムンクルスの[早熟]か[適合]か……ホムンクルスの素質があったからなのだろう。
魔法書の真贋を判別できたのは、[吸収]で魔法書からほんの少しだけ滲みだす魔力を取り込み、その魔力を感じ取れたから。
魔法書を読むスピードが速くなったのも、[吸収]か[適合]効果があったのかもしれない。
覚醒称号は50レベルになる前でも特徴が出るらしいし、特殊覚醒称号の特徴がわかれば、現代人の奴隷の育成計画も立てやすいな。
そういえば100レベルになる時に特に何もなかったな。
いや、なにもないのが普通なのだが……"補正持ち"一行ならきっとなにかしらあるんじゃないかな。
そんな他愛もないことを考えながら、眠りの海に沈んでいった。
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[素材1][素材2]
左から順番に素材が多い順。一番左がベースの素材。
(上地)(下地)など
上級土属性、下級土属性(ロック、アース)
[刻印]
刻印魔法が使える。
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スティルLv103
覚醒称号:[特殊]"人工生命体/ホムンクルス" 造られし人外。物質を取り込み適合する
:[特殊]"融合生命体/キメラ" 混ざりし者。他者を取り込み融合する
体質[早熟][吸収][適合] 能力[都合の良い半身:意識を記号の半身に移すことで、都合の悪い精神異常のみを軽減させることができる]
体質[融合][変異] 能力[体内操作:自分の体内の、血流や臓器、細胞の動きを任意で操作することができる]
ライトニングシミター[良銀](上雷)
ヒートクリース[ミスリル銀][刻印](熱の刺突短剣)
銀のナイフ
右腕:アースマインゴーシュ[良銀](上地)※手甲装着型短刀
左腕:ゲイルラウンドシールド[良鋼鉄][銀](上風)
胴:プレートメイル[良鋼鉄][銀]
手:ガントレット[良鋼鉄][黒鉄]
足:グリーブ[良鋼鉄][銀]
頭:チェインフード[良鋼鉄]
指:術者の指輪Ⅱ[魔力++][知力+]
:魔力の指輪Ⅱ[魔力++]
手:魔力の腕輪Ⅱ[魔力++]
:魔力の腕輪Ⅱ[魔力++]
足:術者のアンクレットⅡ[魔力++][知力+]
:魔力のアンクレットⅡ[魔力++]
首:魔道師の首飾りⅢ[魔力++++][知力++++]
耳:
2万1000+32万=341000G
オクラLv67
アースバトルアクス[銀][黒鉄](上地)
火・風のナイフ
右腕:
左腕:ロックタワーシールド[良鋼鉄](下地)
胴:ロックフルプレートメイル[良鋼鉄](下地)
手:同上
足:同上
頭:グレートヘルム[良鋼鉄][黒鉄]
指:力の指輪Ⅱ[力++]
:力の指輪Ⅱ[力++]
手:力の腕輪Ⅱ[力++]
:力の腕輪Ⅱ[力++]
足:力のアンクレットⅡ[力++]
:毒耐性のアンクレットⅡ[毒耐性++]
首:怪力の首飾り[力++]
耳:
■所持品―――――――――――――――――――――――――
魔力の指輪[魔力+]
火のガードリング [守備力微+][器用微+][火耐性+]
毒耐性のリング[毒耐性+]
回復のリング [時間回復微上昇][軽傷回復x5]
敏捷の指輪[敏捷+]
敏捷の指輪Ⅱ[敏捷++]x4
術者の指輪Ⅱ[魔力++][知力+]
力の指輪Ⅱ[力++]x5
魔力の指輪Ⅱ[魔力++]x3
敏捷の腕輪[敏捷+]
力の腕輪[力+]
敏捷の腕輪Ⅱ[敏捷++]x5
魔力の腕輪Ⅱx3
力の腕輪Ⅱx4
回復の腕輪Ⅱ[時間回復微上昇][重傷回復x5]
術者のアンクレットⅡ[魔力++][知力+]
敏捷のアンクレット*[敏捷+][防御微増]
隠密のアンクレット[敏捷+][足音隠蔽+]
力のアンクレット[力+]
力のアンクレットⅡ[力++]x4
敏捷のアンクレットⅡ[敏捷++]x3
魔力のアンクレットⅡ[魔力++]x3
毒耐性のアンクレットⅡ[毒耐性++]
魔道師の首飾りⅢ[魔力++++][知力++++]
怪力の首飾り[力++]
ヒートクリース(熱の刺突短剣) 上位火・特殊 ミスリル銀
魔力伝導性、強度、重量全てに優れたミスリル銀製。上位火属性を熱に特化した力を持っており、ヒートレイ(熱光線)の魔刻印が施されている。魔力を込めるとヒートレイを無詠唱で放つことができる。
刃に通せば刀身は一瞬で白熱し、優れた魔力を持つ術者なら、刃から炎として拡散させることすら可能な汎用性に優れたかなり良質な品。
500万G超と見立てていたが、後の見立てで純粋なミスリル銀と宝玉を使用していることがわかり、1000万G(1~2億)を超える。
火・風のナイフ
リッチの巨大な魔石
半壊した水属性の槍
アースマインゴーシュ 上位地属性 銀製 盾短剣 防御に優れた地属性で、防御に優れたマインゴーシュという短剣。拳を守るようにカップが付いており、槍を持ちながらでも装着できる手甲のように改造されている。
ゲイルレイピア 上位風属性 銀製 素早さと汎用性に優れた風属性。刺突に特化した武器で、片手で扱うことができる。
ライトニングシミター 上位雷属性 銀製 素早さ、威力、汎用性に優れているが扱いが難しい雷属性。1m程の片刃の曲刀。断ち切る剣術に優れ、三日月刀とも呼ばれる。
こちらも扱いが難しいため、このシミターの持ち主のプレイヤースキルはかなり高かったようだ。
アースバトルアクス 上位地属性 銀+黒鉄製 防御に優れ、ある程度重さを変えることができる地属性。180cm程はある巨大なアクス。
各種良質鋼鉄、黒鉄、銀の防具 壊れた部分を廃棄して合わせて4人分。
良質な鋼鉄でできた武器、鋼鉄製の防具約10人分。
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