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1話 始まりの10歳

1話


始まりの10歳




――目が覚めると、そこは古びた木の臭いのする一室。見上げると年季を感じる木の天井。粗末な布にくるまれ、寒さにブルリと震えた。


上半身を起こしあたりを見回す。


自分の周りに同じように粗末な布にくるまれた少年少女たちがごろごろと転がっている。


「おや、もう目が覚めたのかい」


こちらもまた古びた扉が開き、比較的身綺麗な老婆が言う。


「ああ、うん……?」


「目が覚めたなら院長室へおいで。あんたも今日、この年から10歳だからね」


「は、はい」


思わず返事をしてしまった。


その反応に満足したのか、うなずいた老婆はその場を後にした。


しばし呆然としていると、水がしみ出るようにじわじわと情報が頭の中に染み出してくる。


"この世界での"自分の名前、所属、現在の状況、年齢。


今日が新年の始まりのめでたい日であり、自分が生まれて10年目であること。


そして今日が自分にとって大きな転換である日ということだ。





扉をノックする。記憶が正しければここが院長室だ。


「お入り」


「失礼します」


老婆は軽く目を見開いた。


「驚いた……そうだね、あんたも今日で10歳だ。自覚が出てきたということだろうね。いいことだ」


なにか感心しているようだ。確かに、10歳にしてはしっかりとした受け答えだっただろう。


自分の記憶の中の自分――言っていて変な気分になってくるが――はどちらかといえばやんちゃ、悪く言えばあまり礼儀を知らなかったようだ。


「それで、決めたかい?これからどうするか」


そう、今日この日、決断せねばならない。


この中央都市『センタータウン(中央)』の孤児院から出て4大都市『ノースタウン(北)』『イーストタウン(東)』『サウスタウン(南)』『ウエストタウン(西)』の内、侵略戦の最前線である『サウスタウン』へ移住するか、15歳までこの孤児院に残るかを決めねばならないのだ。


とはいっても、サウスタウンがいくら最前線とはいっても、10歳の子供に戦いを強いるつもりは勿論ない。


しかし同じ小間使いでも、安全なセンタータウンと最前線であるサウスタウンでは需要が違うのだ。


サウスタウンではいつでも人出が欲しいのである。


10歳でサウスタウン行きを決めた場合、孤児が国に払う義務がある50000Gの借金が免除され、国から補助金として10000Gが下りる。


この50000Gは今までの養育費、という扱いだ。


15歳までセンターにいる期間を延ばすなら、5万Gの借金を負うことになる。


その金は、15歳になり『サウスタウン』へ行ってから返還すればよいことになっている。


また、有料で孤児院を拠点にすることはできるが、衣食住の金は自分で稼がねばならない。勿論自分で宿をとってもよい。



そしてそのどちらを選ぼうが、国に育てられた孤児には15歳から戦役が課せられる。


軍隊での3年の徴兵、もしくは巨大迷宮『ビッグ1』での一定以上の功績を求められるのだ。


迷宮行きを選び三年以内に一定以上の功績を上げられなかったものは、勿論三年の徴兵を受ける。


その場合の徴兵は、当然最初の徴兵よりも死ぬ危険性の高い地域でのものだ。



「俺は……残ります。15歳までここに居させてください」


「ほう、意外だね。あんたのことだ、すぐに飛び出していくかと思ったが。まあいいだろう、慎重にことを運ぶのもありだろうね」


良かった。ここまでの展開はクエストのままだ。


おそらくここで、『サウスタウンへ行く』と答えていれば、補助金を受け取って選んだ都市まで馬車で揺られることになったはずだ。



そもそもこの展開は、『暗黒大陸』ではチュートリアルクエストなのである。



10歳でサウスタウンへ行く場合、チュートリアルという名の訓練をうけることが出来なくなるのだ。すなわちlv1からのスタートである。


その代り、サブクエストを行えば無償で『称号『独り立ち』:あなたは独り立ちした。[全ステータス+]』を得ることができる。


称号を得た後は自動で15歳までスキップしてしまうのだが。


15歳になるまで『センタータウン』に残る方を選んだ場合、チュートリアル訓練を受けることで自動的にlvが5まで上がる。


こちらもチュートリアルが終わり次第15歳までスキップする。


こちらを選んだ場合も、15歳になって返還義務のある5万Gを国に納めれば『独り立ち』を得られる。


初回プレイの場合はチュートリアルを受けた方がよいが、2キャラ目を作成する場合など操作に慣れている場合、10歳で独り立ちをした方がお金も得られるしチュートリアルも飛ばせて手っ取り早いのだ。


「それじゃあ、街へ行って仕事を探しておいで。見つからなかったらここで雇ってもいいが、仕事がきつい割に最低限しか賃金は出ないからね。大抵の仕事は孤児にやらせるんだから」


「わかりました。失礼します」


しかし、これが現実だったとしよう。ありえないかもしれない。夢を見ているのかもしれない。


だがもしこれが現実ならば、自動で15歳までスキップするなどあり得ないのだ。


こんなわけのわからない状況でいきなり動くわけにはいかない。とにかく状況の整理が必要だ。



水面を覗き込み自分の姿をじっと見つめる。

茶色い髪と茶色い目と白い肌、以外は自分の顔だ。

髪、目、肌の色素はこの世界の標準の範囲に改変されたのだろうか。



恐慌しそうな心情をなんとか押さえつけ、そんな他愛もないことを考えていた。




ぐだぐだ、SEKKYOU、なでぽにこぽ好きじゃないんですが、その要素を排除すると会話って大変ですね。

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