13話 奴隷
13話
奴隷
■装備品
羽鋼のバスタードソード
良質な鋼鉄の短槍(縮小)
鋼鉄のラウンドシールド
胴:鋼鉄のスプリントメイル
手:鋼鉄のガントレット
足:鋼鉄のグリーブ
頭:鋼鉄のチェインフード
指:力の指輪Ⅱ[力++]
:毒耐性のリング[出血毒耐性+][神経毒耐性+]
手:敏捷の腕輪[敏捷+]
:力の腕輪[力+]
足:隠密のアンクレット[敏捷+][足音隠蔽+]
:敏捷のアンクレット[敏捷+][防御微増]
首:
耳:
所持金281000G
レベル23
(昨日の探索でわかったが、1人で攻略していくのは限界がある)
他の地方では知らないが、サウスタウンの迷宮区域で一匹狼というのは、思った以上に厄介なものだというのを実感した。
良い装備に良いアイテムを持っていればそれを欲しいと思うのが人間だ。
その相手が常に1人とあれば、隙あらば……と考えるのが当然だろう。
それに、迷宮というのは1人で攻略していけるほど簡単なものではない。
ふと油断した瞬間、複数の敵に囲まれたら……罠で体が動かなくなったら……。
そう考えると、格下しか出ないエリアでもまだ不安が残る。
しかし、別に孤高の戦士を気取っているわけではないのだが、仲間というのはそう簡単に作れるものではない。
徒党をあらかじめ組んで迷宮区域に来る者は問題ないのだろうが、孤児出身の者達で、全幅の信頼のおける者などそうはいない。
というかそもそも、ド新人と組んでも足を引っ張られるだけであるし、他人のレベル上げに尽力するつもりも無い。
(……実はレベル自体は周りの孤児と大差ないんだけどね。
昨日助けたクーシャとナイトだっけ? 彼らは誤解していたけど、レベルはおそらく彼らの半分もないし。
称号のステータス補正と、5年間マクロで鍛え上げた圧倒的な技量が他人との差を歴然にしているってだけでね)
基本的に、ノウハウの無い新人というのは、最初に先輩冒険者たちに手荒い歓迎――という名のなけなしの財産の強奪――を受ける。
その過程で自分のやられたやり方を学び、徐々に顔見知りを増やし徒党を組むなりするのだ。
――生き延び、さらに五体満足だったものに限った話だが。
ある程度の実力があって、多少なりとも賢い連中は、早々に組織という名の強者に取り入ろうとする。
新人を食い潰す程飢えた者のいない程度の規模の、『クラン』という冒険者の相互協力組織に入れてもらうのだ。
新人だけあって、当然報酬は割を食うし、危険であったり人がやりたがらない仕事は押し付けられるが、まだ恵まれた地位だ。
問題はこの「相互協力」という所にあり、つまるところ協力し合えるだけの実力。
もしくはそれだけの将来性を見せなければならないのだ。
大き過ぎる所には、まずほとんどの者が入れない。
小さすぎるところでは、食い物にされ体の好い道具として搾取される。
それらのクランのいずれにも参加できなかったものが、自然と所属することになるのが、孤児宿舎の寄せ集まりである。
所詮食い物にされるものの寄せ集め。
多少実力が付いて来たものは勝手に顔見知りを作り出ていくので、実力は無い……が、手荒い歓迎を受けた経験値のある先輩孤児達がいる。
搾取される側の中でも搾取される日々を送ることになるのだが、失敗を避けるだけの知識だけは得られるだろう。
しかしスティルは、現時点ではそのいずれにも参加する気になれなかった。
どこの組織に入ろうと、まず間違いなく、悪い意味で目をつけられるからだ。
新人で孤児なのに恵まれた装備。
有力者とのコネでも作らない限り、クラン入団と引き換えに装備を要求されることすらありえそうだ。
(クランには入りたい。凄く入りたい。
俺には主人公補正なんて無いんだから、個人でやれることなんて限界がある。
もう少し時間をおいて、ある程度名を上げて、顔見知りでも作ってからどっかのクランに入るのが得策かな。
で、それまでの不安を解消するために……)
やってきたのが、奴隷売買場というわけだ。
ちなみにこの奴隷売買場、国営である。
国が直接国民を切り売りしているようで外聞が悪いため、正確には民間委託してあるのだが、国が関わっていることなど周知の事実である。
(ま、下手に民間人が違法でやってるより安全で裏も無くていいけどね)
国営というだけあって、奴隷制度はあるものの、そのほとんどが民間人の身売りであったり、国が引き取り損ねた孤児であったりだ。
拉致や脅迫など力技で無理矢理奴隷にして、それが露呈した場合、最悪死罪だ。
よって、奴隷市場に戦闘要員はほとんどいない。
その例外が迷宮都市や、戦闘の多い地域だ。
騙されて契約を結ばされたり、命の危険から救ってもらうために契約アイテムに承認してしまったりして、戦闘要員が奴隷になることがある。
といっても、あまりに非人道的であったり、派手にやりすぎると、ギルドを通して国から罰則が下る。
さらに、命を救うのに相手に奴隷契約を強制すると、同じ冒険者内で睨まれ孤立することもある。
明日は我が身かもしれないし、冒険者は職業柄危険に陥ることが多いからだ。
下手をすれば嵌められて自分が奴隷にされることさえあるから、よっぽどのことが無いとする者はいない。
……勿論そういう者もいるからこそ、戦闘要員になりうる奴隷がいるわけだが。
先日クーシャとナイトを奴隷にしなかったのもそのリスクを避けるためだ。
◇
奴隷市場には、老若男女様々な人間がござの上に座っている。
驚くべきことに、そこには人型の魔物や亜人種の奴隷までいた。
一応柵の中にいるが、厳重な檻などに入れられてはいない。
なぜなら、『隷属の首輪』を付けられているため、逆らうことができないからだ。
この柵も、どちらかというと顧客側が奴隷に危害を加えないために存在しているのだろう。
「いらっしゃいませお客様。どういった奴隷をお求めでしょうか?」
小奇麗な服を着た、張り付けたような笑顔を浮かべた男が寄ってくる。
「ああ……そこそこ戦える元冒険者の壁戦士に、サポーターで荷物運びに屈強な男が欲しいな。
荷物運びの方は筋力さえあれば冒険者じゃなくてもいい」
本当のことを言えば、女の奴隷も欲しかった。
勿論目的は下種なこと、性交目的だが。
色街に言ってもよいのだが、性病が怖いのだ。
さらに言えば、昔から遊郭、色街はスパイや情報屋と繋がっているものと相場は決まっている。
その内そちらの大手の情報屋とも繋がりを持ちたいが、今はまだ早い。
というより、財政的な問題でまだ厳しいのだ。
「冒険者とサポーターですね。
こちらの方におりますのが戦士やら肉体労働に使えそうな男です。
女の冒険者はあちらの区域にいますがいかがしますか?」
当然ながら女の奴隷の方が値が張る。
ただでさえ高価な女の奴隷だが、元冒険者や元兵士など、戦闘能力のある女奴隷は特に値が張る。
娼婦に、メイドに、護衛なんでもござれと使い道がたくさんあるからだ。
……ただし、少なくとも崩れていない顔の者に限るが。
「男女は問わない。
といっても女なら割高だろうが……別に顔は求めていない。
魔法持ちが欲しいが、値も張るだろうな」
その中でも魔法持ちは特に値が張る。
魔法書を手にできるのは戦闘能力が高いか、家が裕福かであるため、まず奴隷になることが無いからだ。
さらに言うなら、高レベルや素質が高い者、称号をたくさん持っている者、武器熟練度が高い者はは国が先に引き取ってしまうことが多い。
この国は常時戦争中と言ってもよいので、人がつきたがらない任務や斥候などをやらせるためだ。
魔力に適性があったり、見目麗しい者は教会が好んで買って魔法覚えさせることが多い。
教会には消費式では無い『魔道書』とやらがあるらしいのだ。
時間、労力、素質など色々必要で、かかる労力の割にあまり強力な魔法は手に入らないが、非常にレアで実用性があるアイテムだ。
すなわち、この市場にいる奴隷はこの2つの買い手から漏れた余り物なのだ。
なので、余り良質な奴隷は存在しない。
大規模な戦闘で人手が足りない時などは混乱に紛れて高い戦闘力がある者がいることもあるが、それくらいだ。
だがここは数ある迷宮都市の中でも最も大きなビッグ1傘下の奴隷市場だ。
直近で売られてまだ国などの査定が入っていない、良質な奴隷が買えることもある。
できればちょくちょく見に来たいものである。
「いえ、実はいるんですよ……。
レベルは40ですが、戦闘魔法3に補佐魔法1を持った女奴隷……しかも、エルフ種が」
俺は目を見張った。
そんな好条件の奴隷が出ているなど、通常ではありえない。
「なっ、それは本当か」
「ええ勿論。あちらにおります。
今朝持ち込まれたばかりの、目が眩まんばかりに見目麗しく、さらに非常に優良な人材ですよ」
尋常じゃない美貌を持った、天使と見間違える程の気品を持ったエルフがそこにいた。
日の光に映える銀髪が心を激しく揺さぶる。
その顔には疲労した様子が窺えるが、毅然とした表情を崩さない。
(――またいた。この求心力、補正持ちか、それに準じた"補正"を持っているな。
おそらく、彼女より強い"補正"を持った者が買っていくのだろう)
なるほど、辺りを見れば見惚れている客が大勢いる。
……値段を聞くと顔を青くしているようだが。
(こいつを買う、もしくは解放しようとなんらかの行動を起こす"補正"持ちが出てくるはずだ。
昨日のクーシャとナイトのように、イベントの成果のおいしい所取りができるかもしれない。こまめに見に来ることにしよう)
「ウエストマウンテンの金髪のエルフとは、同盟を結んでいるため奴隷にするのは違法行為ですが……。
こやつはウエスト山脈地域のロックマウンテンからの流れ者のようですな。あちらの山脈のエルフは一切交渉に応じようとはしませんので、討伐を許可されています」
「……値段は、当然凄いんだろうな」
「ええ、500万Gでございます」
空を仰いだ。
高いとかいう値段ではない。
というかこの商人も、俺が買うなど思っていなかっただろう。
先に目が飛び出るほど高い商品を見せて、金銭感覚でも麻痺させたかったのか、はたまた驚いた反応を楽しみたかったのか。
……俺は後者だと踏んでいるが。
「…………わかっているだろうが、他の奴隷を見せて貰おう」
こいつ、笑いをこらえ切れてないぞ。
やっぱり後者だったか。
「ごほんっ、失礼。かしこまりました。
……おっと、入荷したばかりと言えばこちらの奴隷など如何でしょう。
お客様の要望にぴったりだと思いますが」
案内された先にいたのは、大男だった。
身長は、座っているため見えないが、2mはあるだろう。
そして何より、醜悪な顔面をしており、悪臭が漂っていた。
「こちらの奴隷もつい先日入荷したばかりのものでしてな。
レベルは67とかなりのものです。武器スキルもなかなかで、斧スキルはなんと2。鈍器スキルも1あります。
顔は……少々崩れておりますがどうでしょう?」
顔の崩れ方が少々どころの話ではない。
そして臭い。アンモニア臭が漂っている。
豚男は醜悪な顔を歪め、にたあっと笑って言った。
「よおほっそいにいちゃん。俺を買うつもりかあ?
がっはは、いいぞ買ってくれよ。隙があればそのかわいいケツにオレのをつっこんでやるよ!」
「ふうん。お前、買われたくないんだ」
びくんっと反応する豚男。
多少の腹芸はできるようだが、演技力が伴ってないな。
「こいつ、いくらなの?」
「お、おい小僧、お前買うつも……」
豚男は激しくとりみだした。
「命令、『黙りなさい』」
「ぐ、あっ……」
店員が、隷属の首輪で強制的に黙らせた。
この『命令』に逆らおうとすると、抗いがたい苦痛が襲う……らしい。
「奴隷が失礼しました。
こちらの奴隷ですが、本来ならば50万G程で売りたい所なのですが……」
「この面に、匂い、そしてなにより、首輪で傷めつけても反抗的な態度を変えないのだろう?」
「御察しの通りでございます。
勿論首輪の効果は絶対ですので、問題無く使えるのですが……なかなか売れないものでしてな。
それでですね、とりあえずは25万程……」
「ふうん。こいつ、出戻りか?」
店員の表情筋がびくりと動く。
冒険者なんて馬鹿ばっかとでも思っていた面だなあこりゃ。
「……おお!確かに確かに、見落としていました!
仰る通り、1度売られ、売り戻されて来たものです。いやはやお客様は聡明な方でいらっしゃいますな。」
出戻りとは、一度売られたが使い物にならない、もしくは気に食わないと売られてしまうことだ。
奴隷と言っても、故意に殺すのは犯罪だし、殺すくらいなら売った方がいくらか取り戻せる。
「……で、それを知った上での値段はいくらなのかな?」
おそらく聞かなければ、出戻りという情報を伏せたまま、出戻りである分の値引きをせずに売るつもりだったのだろう。
欺こうとした部分を軽く攻めながら、暗に値引けよと言葉に込める。
「え、ええ、20万程と……」
「奴隷を黙らせるのが早すぎたな。こいつは売られたがっていないようだ。
勿論客に暴言を吐かせないようにという意図もあるだろうが……。
こいつが自分で出戻りだと、発言させたくなかったのだろう?
がその発言を聞けるのはあんたらから命令権が消えた後、つまり売約契約を結んだあとというわけだ」
店員は顔に脂汗をびっしょりかいている。
経験不足か、俺の歳が若いことからの油断か……まあお互いいい勉強になったということで。
「改めて聞こう。それを知った上での値段は、いくらなのかな?」
「………………ギリギリいっぱいで……12万Gでございます」
「了承した。買おう」
出戻りで無ければ25万、相手が最初からすべてを告げていたら15~20万といったところかな。
大分浮いたと考えた俺は、内心にんまりだった。
それから、適当にサポーターという名の荷物持ちを適当に買ってしまおうと、比較的低レベルな男手の区域を見て回る。
「ああ、ああ……いるいる、早速奴隷に身を落としてしまった孤児達」
「ああ……そうですなあ、この時期は特に多いですからな、年若い新人の奴隷達が」
早速毒牙にかかったであろう元孤児達が、さらに下位の地位に身をやつしていた。
内心で嘲笑いながら辺りを見回していると、そこに15人のトリッパー集団の一部がいた。
「お、おい!お前、スティルだろ!」
「助けてくれよ!俺を買ってくれ!頼む!」
「俺たち騙されたんだ!お願いだ解放してくれえぇえ」
「俺結構レベル上がってるんだぜ!従うからよ、解放してくれ!お願いだ!」
あちゃー、面倒だなやつらに出会ったなあ。
「お客様、如何なさいますか?」
「買うわけ無いでしょ。黙らせてよ」
「畏まりました。命令『黙れ、座れ』」
恨めしそうに、仇を見るような目でこちらを見る同郷達。
おいおい、逆恨みはやめてくれよ。
思った俺は、そのまま口に出すことにした
「おいおい、逆恨みはやめてくれよ。
今みたいなこと繰り返してたら、首輪だけじゃなく肉体指導されるぞ。俺は客として親切な方だろう?
それに、頼るならつるんでた15人組に頼ってくれ。
……早々のドロップアウト、お疲れ様」
ああはなりたくないものだ。
その場で適当に、30過ぎくらいの元炭鉱労働者らしき人物を20000Gで買う。
ちなみにだが、あの孤児達のように若い、将来性がある人間は高い。
ならば、即使えて安い中年を買うのは当然の選択肢である。
奴隷委託の手続きを踏んで、宿へ戻った。
醜悪な見た目と臭いの奴隷に道行くひとは眉をひそめていたため、宿に戻り次第すぐ水を用意させて、洗うように『命令』した。
臭いがとれ、髪も整え、顔の汚れも取れた大男は大分マシな面になっていた。
……といっても、最初に比べれば、だが。
「命令『座って動くな』『自由にしゃべることを許可する』」
「……おい、ガキ、どうするつもりだ」
「どうするもなにも、奴隷として迷宮に潜る手伝いでもしてもらうよ」
「ぐ、がっはは、肝がでけえのはいいことだがなあ。
オレはお前の命令に極力従わねえ。
文句も言うし、少しでも隙を見せたら食い殺してやるからなあぁ」
殺気を垂れ流す大男に、すっかりびびって小さくなってしまっている炭鉱男。
「おいおい、あまり騒ぐなよ。
かわいそうに、こっちの男がすっかり小さくなってしまってるじゃないか」
「オレの知ったこっちゃねえなあ」
「どうせあれだろ、お前、このまま売り戻され続けて、なし崩し的に国持ちの奴隷になりたいんだろう?」
びくんっと反応する大男。
その動きにびくんっと驚く炭鉱男。
「さっきも思ったが、腹芸するなら演技力も磨くんだな。
冒険者の奴隷として厳しい労働をさせられ、最後には囮やらで殺されたりするくらいなら、多少は自由がある国保有の奴隷で激戦地で戦った方がマシ……てか?」
「ふん!オレだって何人も奴隷を傷めつけてきたし、囮やら壁にして殺してきた!
悲惨さは一番知ってるんだよ! あんな扱いなら、まだ戦場で死んだ方がマシだ!」
「安心しろよ。確かに囮にも壁にもするが、使い潰すつもりはない。
存外頭は回るようだし……最初汚れて悪臭がしていたのもわざとだろう?
本当という保証は何もないが、無駄に傷めつけないし、飯も国保有の奴隷よりはマシな物を出してやろう」
「…………」
押し黙り、考えたこんだ様に押し黙る。
様々な打算と、これから取るべき行動を考えているのだろう。
「とりあえず名前を教えろよ。お互い死ななきゃ、長い付き合いになるんだ」
「……ぐふ、がっはっはははは。
おもしれえなあおまえ、オレぁオクラだ。
使い潰さねえで、飯もまともなもんが出てくれるんならまあ、当分は従ってやるよ。
たまには女も抱かせてくれや」
「ふん、贅沢な奴だな。
オクラ、お前、俺が実はお人好しだったら儲けものとでも思って、油断させようとしているんだろう?
飯と安全で満足するような目してねえよお前」
「ぐっふふ、わかるよなあ、お前も腐った目してやがるぜえ。
甘くはないが優しい……って態度見せて、万が一懐けば儲けものって思ってたんだろう?」
「く、あっははは、やっぱりわかっちまうもんか。
俺も演技力、磨かないとなあ。 ……まあ、これから悪いこともたんまりする予定だからよ。
きちんと従うなら、お前にもいい目みさせてやるよ。お前も大好きだろ?」
「ぐふははあがっはっはっ。
散々働かせて、絞りとってた手下に足元掬われた時は終わったと思ったが……。
まだツキは尽きてなかったみてえだなあ。
お前の、スティルっつったか、スティル様のお役に立つよう自発的に働くからよ。いい目ぇ見させてくれや」
存外使えそうな奴を拾ったものだ。
これは本当にいい買い物だったかもしれない。
ははは、がっはっはっはと笑い合う小悪党2人。
炭鉱男は、不気味に高笑いする俺たちに完全にひいた様子で顔を青くしていた。
……こいつ、わざと魔物の方に蹴りこんでやろうか。