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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 今の状況は僕にとって有利に運んでいる。
 クーデター側は本殿を制圧したものの、肝心の氏族長には逃げられている。

 クーデター側が不甲斐ないのか、氏族長がやり手なのか分からないが、早々に決着がついてなくて助かった。

「それに駆動歩兵のデータも取れたしな」

 実際に戦闘する姿はまだ見ていないが、おおよその強さは理解できた。
 そして僕に見せた弱点も。

 僕の『闇刀』は効果的だと分かった。
 防御できない直接攻撃だから、あれを防ぐには絶えず動きまわるか、僕の居場所を特定するしかない。

 だが、駆動歩兵はその性質上、動きまわるのに向いていない。
 闇さえ繋がっていれば、僕でも容易に排除できたのは収穫だ。
 もしあれを駆除する指令が出たら、一晩の内に全滅できる。

「もっとも、昼間の戦場で会ったら逃げるしかないし、今後なんらかの対策を立ててくることも考えられる」
 殺害方法が分からない限り、対策は難しいか。

 そんなことを考えている間に、本殿の中に入ることができた。
 魔道結界はもう機能していなかった。機械式の装置も外されている。

 これらは、氏族長の捜索に邪魔だったのだろう。

「……さて雲隠れした氏族長はどこだろうか」

 感覚を研ぎ澄ませて、本殿内を進む。
 途中何度も兵の姿を見かけた。

 明かりは最小限になっているので、僕が進めない場所はない。
 本殿内をくまなく探す。だがいない。

「おかしいな。予想が外れたか」

 戻って作戦を練り直すか。
 最後の建物を見て回り、すべて空振りに終わった。

 戻ろうと思ったとき、周囲の違和感に気づいた。

「魔道の流れがあるな」

 ほんの僅かなものだが、魔道が使われている気配がする。

 感覚をどんなに研ぎ澄ませても、移動しながらでは気づかない。
 それくらい微弱なものだ。

「これに気づけるのって、魔道使いの中でもそうはいないな」

 魔道使いは、使われた魔道の痕跡を感じることができる。
 アンさんが捕らえられていた屋敷にも魔道結界が張られていた。

 あれを滅茶苦茶にしたのは、魔道使いにそれを感じさせるため。
 未知の魔道使いの仕業に見せかけたのだ。

 僕の場合、父さんから何年にもおよぶ修行を受け、かなり小さな魔道の痕跡でも感じることができる。
 普通は、そんなことをするより、自分の魔道を極める方に労力を注ぐらしい。

 父さんいわく、「魔道使いが魔道の痕跡を発見する修行は、パン屋が八百屋の修行をするようなもの」だとか。同じ食べ物屋というカテゴリーだが、それくらい中身は大きく違う。

 にもかかわらず、父さんが僕に教えたのは、女王陛下の〈影〉として必要だから。
 普通はそんな何年もかかるような修行はしない。

 その甲斐あって見つけることができた。父さんに感謝だ。

「魔道結界を見つけたけど……破壊しないと無理そうだな」

 あまりに微弱すぎて、魔道の本質が見えてこない。
 これではすり抜けも、解除もできそうにない。

 これだけ厳重に隠してあるのだから、きっと当たりだろう。
「ここの先に、氏族長が隠れている」

 そう。クーデター側が見つけられないのは、隠蔽いんぺい魔道によって、隠されているから。
 僕はそう思って探しに来たのだ。

 どんなに巧妙に隠されていても、見つけてしまえばこっちのものである。

 表に出てきてもらって、せいぜいクーデター側との勢力争いに参加してもらおう。
 アンさんの脱出のため、がんばってほしい。

「……これでいいかな」

 隠蔽魔道を破壊してみた。
 魔道の破壊は、本来難しい部類に入る。

 というのも、使用されたものよりも強力な魔力を注入しなければならないからだ。
 幸い、僕の魔力は多い方で、この結界も破壊することができた。

 通路の突き当り、壁かと思われていた場所に扉が出現した。

 それはいい。問題は、扉の奥から漏れ出てくる殺気だ。

「予想以上だったかも」

 この殺気は、氏族長を守る護衛だろうか。
 こんなのを放つ相手と戦ったら、勝てる気がしない。

 どうやら相手を甘く見すぎていたようだ。

 そっと距離を取り、どうするか考える。
 隠蔽魔道、破壊したことは知られている。
 あれで敵認定された。

 話し合いは通用しないだろう。戦うしかないか。
 でもそれは遠慮したい。

 扉を開けた瞬間襲いかかってきそうだ。
 なので、奥の手……ここで切るとは思わなかったが、使うことにする。

 扉めがけて、僕の奥の手『闇鉤爪やみがきづめ』を放った。

 派手な音を立てて、扉が破裂した。

 もうもうと上がる煙の奥に、剣を構えた男女がいた。
 殺気の正体だろう。というか、無傷なのか。自信がなくなるな。

 男女は黒と赤の鎧を着ている。男が黒で、女が赤。何か意味があるのか。

「音がしたぞ?」
「こっちだ」

「その先は行き止まりだ」
「だが音が聞こえて来たのだその先だ」

 本殿の中を徘徊していた兵たちがやってくる。
 このまま退散したいが、殺気の主が許してくれそうもない。

 なにしろ、尋常でない殺気を僕に飛ばしてくるのだ。
 闇に潜る間に、首を刎ねられそうだ。

 目の前の彼らにそのくらいの技量はある。さて、どうしようか。
 僕は途方にくれた。

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