挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

98/657

098

 僕は女王陛下の〈影〉だ。
 中でも、潜入や暗殺、戦闘を専門とする〈右手〉に属している。

 高潔な精神もなければ、正々堂々と戦う気概なんて一切持ち合わせていない。
 女王陛下の指令を完遂することこそ、至上である。

 だから僕の戦い方は、決して褒められるものではないと思う。
 闇にまぎれて背中から刺すし、寝ているところを襲うこともある。

 確実に目的を達するためには、手段を選んではいられない。
 使えるものはなんでも使う。

 今回、女王陛下の指令はアンさんを無事取り戻すこと。
 手段は問わないが、竜国が関与したことを悟らせないこと。

 他は何をやってもいい。
 女王陛下はそう仰った。

 自由裁量が与えられているのがいい。
 好きにやらせてもらおうか。

 僕は駆動歩兵を注視した。
 一般に言われている駆動歩兵の弱点は、高低差に弱いこと。

 落とし穴や塹壕ざんごうなどに足をとられると、極端に運動性能が悪くなる。
 視認性の悪さも指摘されている。
 首だけで振り返ったりできないため、身体ごと向き直る必要がある。

 それを差し引いても、攻守ともに優れている。
 それが世間一般の評価だと思う。

「さて、それはどうかな」

 僕は闇の中から姿を現した。
 いまは闇夜。木立ちの陰にいる僕を発見できる者はいない。


 ――狩りのはじまりである。


 小剣を抜き、『闇刀やみがたな』で右腕だけを闇に潜らせる。
 狙うは駆動歩兵の中身。

 いかに屈強な外装をまとっていようとも、動かしているのはただの人だ。
 闇がつながっているかぎり、僕の『闇刀』からは逃れられない。

 ……ザシュ!

 外装に守られた中、その柔らかな喉笛を斬り裂いた。
 ひと言すら発することなく、兵が絶命する。

 バランスがいいのか、駆動歩兵は倒れることなくその場に佇む。

「さあ、どんどん行こう」

 見えるだけで十数体の駆動歩兵がある。
 僕は次々と、彼らに死の刃を振る舞った。

               ○

 仕込みは済ませた。
 見える範囲の駆動歩兵を全滅させた。

 これでクーデター派の最大戦力をかなり削ることができた。

 あとは全体の流れを制御するだけでことは足りる。
 僕が全部する必要はない。

 もちろん、結果がどう転ぶか最後まで分からない。
 だから分かる所へ移動した。

 僕が向かったのはリガル将軍のもと。
 第四駆動歩兵隊の司令室はすぐにわかった。

 軍人の発想は得てしてみな同じだ。
 全体を見下ろせて、しかも人の出入りが制限できる場所など、そうあるものでもない。

「将軍、大変です!」
「どうした?」

 司令室の天井裏に入ってすぐ、だれかが飛び込んできた。

「将軍、駆動歩兵の隊員たちが首を掻っ切られて死んでいるんです。でも、でも……外装は一切変化がなく」

 膝をついて嗚咽しはじめた隊員を、リガル将軍が起こす。

「詳しく話せ!」
「交代に向かったんです。仲間が動かないんで、声をかけても返事がなくて……」

「それでどうした?」

「肩を叩いたらそのまま倒れて……足元に血だまりができていたんです。何人かで装備を外したら、そしたら……首が斬り裂かれていて死んでいたんです。全員です、将軍! 警備にあたっていた隊員が全員立ったまま死んでいるんです」

「……なん、だと?」

「リガル将軍はおられますか! 第六歩兵大隊所属のヒグンと申します」

「私はここだ。どうした、何があった?」
「はっ、レニン大隊長より至急報告したいことがあると仰せです」

「何があったと聞いているんだ」
「拘束しておりました第一、第二駆動歩兵隊の隊員たちが一斉に蜂起しました」

「なんだとぉー!?」
「現在、我が大隊は押されております。至急援軍をお願いしたいと……」

「どけっ!」
 リガル将軍が慌ただしく出て行った。
 司令室に残ったメンバーが困惑している。

 思ったより動きが速いな。
 連絡が密に取れている証拠だ。

 だが、後手に回ったのだ。これを巻き返すのは難しいと思う。

 何しろ僕は、リガル将軍が率いる駆動歩兵隊を無力化させて、反対に捕まった駆動歩兵隊員を開放したのだ。

 これで戦力は五分。そうなるように仕向けた。
 リガル将軍が再びイニシアチブを握るには、反乱した駆動歩兵隊を制圧する必要が出てくる。

 昨晩は奇襲したが、今日は奇襲される側にまわったわけだが、果てさてどう対処するのか。

 すぐに駆動歩兵の稼働音が聞こえてきた。
 全員が乗り込んだらしい。

 もうすぐ駆動歩兵どうしの戦いが始まるはずだ。
 もうここには用はない。
 どちらかに決着が付きそうになったら、また介入するつもりだが、いまは他にやることがある。


「さて、本気の第二弾といきますか」


 僕は闇に潜ったまま、本殿に向かって進んだ。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ