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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 闇の中を進みながら、情報を整理する。
 運良くクーデターが実行される前に知ることができた。そのおかげでアンさんを無事確保できたのだから、万々歳だ。

 だが、都市から出られなくなってしまった。これは困る。
 あの林の中で一番偉かったのはリガル将軍と呼ばれていた人物だ。

 だが、そのリガル将軍ですらトラッシュ様と敬称を付けて呼んでいた人物がいる。
 思い出したが、トラッシュは本殿に侵入したときに聞いた名前だ。

 どこかの部屋で、息子の行方を捜していた夫婦がいた。
 その名前がトラッシュだったと思う。本殿に住んでいるのだからトラッシュ・グラロスという名前だろう。
 そのトラッシュが鴎の氏族の一員ならば、クーデターの首謀者かもしれない。

 腹が立つのは、自演でアンさんを救出するよう仕組んだこと。
 目的は分からないが、人道的な理由ではないだろう。

「たまたま逃げた先で……か」

 トラッシュが偶然無人の屋敷に逃げ込み、そこでアンさんを発見するストーリーだったはずだ。
 それを僕がご破算にしてしまった。ざまあみろだ。
 さて、このことがクーデターにどう影響するのだろう。

 闇の中を進んで本殿まできた。
 侵入もこれで三回目だ。慣れたものである。

 多くの兵が行き来している。
 駆動歩兵もたまに見かけるが、戦闘はもう行われていない。

 将校が部下たちを叱責している場面に出くわした。
 気が立っているのか、ひとりが殴られていた。

 だれかを捜しているらしい。

「そっちは見つかったか?」
「いえ、まだです」

「キサマらもか!」
 将校の怒声がとぶ。どうでもいいけど、ずいぶんと気が立っているな。

「どこかにいるはずだ。絶対に探しだせ!」
「ハッ!」

 駆け出そうとした兵を後ろから蹴り飛ばした。
 蹴られた兵がうずくまっているが、気にせず残りの兵が散っていく。

 ひどいな。彼らはアンさんを捜しているのか?
 それにしては、本殿の敷地内を探す意味が分からないが。

 奥に進むにつれて、駆動歩兵の姿がある。
 かわりに一般の兵の姿が減ってきた。

氏族長しぞくちょう以下、二十人以上も行方不明とはどういうことだ?」

「事前に察知した様子はありませんし、門を含めて、出入りできる箇所はすべて抑えてあります。どこかに隠れていると思われますが」

「もう一日も経ったんだだぞ。いい加減、見つけ出せ!」
「使用人を拷問しておりますが、行方は知らないようです。捕らえた氏族を拷問しますか?」

「あいつらは後で裁判にかける。顔以外なら許可する」
「了解しました。そのように伝えます」

「それと都市の外はどうなった? カインの隊からの連絡は?」
「こちらもいまだありません。もともと距離がありますので、報告はすぐに届かないかと思います」

「それもそうか。アンネロッタといい、グエンといい、どういうことだ。計画が漏れたわけでもなかろうに、どいつもこいつも雲隠れしやがって」

「アンネロッタ様に関しては、魔道結界が滅茶苦茶にされていましたので、魔道使いが関与したことは疑いありません。氏族のだれかでなければ、魔国の線が濃厚です」

「グエンの雲隠れも魔国が関与しているのか?」
「そこまでは分かりかねますが、第三者の介入も視野に入れた方がよいかと」

 グエンとは、氏族長のグエン・グラロスのことだよな。
 雲隠れしたから血相を変えて探しているわけか。

 盗み聞きを続けた結果、偉そうに話しているのはトラッシュだということが分かった。
 クーデターの首謀者らしい。思ったよい若い。二十代半ばくらいか。

 応対しているのはレニン大隊長だった。城門を守っているエイドス隊長の上司らしい。
 このレニン大隊長は、歩兵大隊を率いているが、部下は捜索に散らせているらしい。

 鴎の氏族長の他にも母親のベア・グラロス含めて、かなりの数の氏族が行方不明らしい。

 これはどういうことだろう。
 明け方前の襲撃で、まず門の確保をしている。
 ここから、逃げ出せるはずがない。

 盗み聞きを続けていくつか分かった。
 鴎の氏族は第七駆動歩兵隊まで所持していて、そのうち第四と第五駆動歩兵隊がトラッシュ側についている。

 都市に常駐している第一と第二駆動歩兵隊は、準備が整わないうちに急襲されて沈黙。
 本来都市にいるはずだった第三駆動歩兵隊は、演習で都市外に出てしまっている。

 そして、トラッシュ配下の第五駆動歩兵隊は、情報を秘匿したまま都市外にいる第三と第六、第七駆動歩兵隊を急襲する手はずになっているらしい。

 情報が漏れないよう、腐心したようだ。
 つまり今頃は、外のどこかで駆動歩兵隊どうしの戦闘が行われているかもしれない。

 この決着が付かないかぎり、城門が開かれる可能性はない。
 もし都市の外で第五駆動歩兵隊が負けた場合、都市の外にクーデター派の戦力は無くなってしまう。
 追い詰められたトラッシュが、都市に籠城することも考えられる。

「トラッシュに天下を取らせるのは嫌だが、戦力が拮抗して都市門を挟んで睨み合うのも遠慮したいな」

 氏族内の争いはどうでもいいので、はやくアンさんを外に連れ出したい。

 とすれば、僕のやることは決まってくる。
 というか、ひとつしか方法が思い浮かばない。

「トラッシュの天下を終わらせるか」

 クーデターが失敗に終わればいいのだ。
 そうすれば、都市門は開放される。

「そういうことで、早速……」

 僕は闇に潜ったまま、駆動歩兵が集まる一角に向かった。

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