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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 町に出た僕は、真っ先に城門へ向かった。
 ここは周囲を高い塀で囲まれた要塞都市だ。クーデターが起きたとしたら、出入りを制限している可能性がある。

「あー、やっぱりか」

 外へ通じる門は閉ざされていた。多数の兵が守っている。
 塀の上に見張りは多いが、こちらに背を向けている者がほとんどだ。

 都市にいる人を外に出さないというよりも、外から入ってくる人を警戒しているようだ。

「朝からこんな感じなんですか?」
 近くの人に尋ねてみた。

「そうだな。オレが起きだしてきたときには、こんな感じだったぜ。理由は教えてくれなかった。ただ従えって怒鳴られただけだ」

「あの兵はだれの命令で動いているんでしょうね」

「軍権を持つのは氏族って決まっているが、だれが命令を発したかまでは分からないな。駆動歩兵と近衛兵だけは軍服が違うから区別が付くが、あれは一般の兵だしよ……ん、そうか」

「どうしました」
「本来、都市門は警邏けいら隊の管轄だ。あいつらなら、詳しい話は分かるかもな」
「なるほど、そうですね。ありがとうございます」

 警邏隊については、ここに来るまでに何度か見たことがある。
 数人で町を巡回しているのだから、どこかで遭遇するはずだ。

 城門を離れて少し歩くと、人だかりを見つけた。
 同じことを考える人が多いらしく、だれかが警邏隊を見つけて詰め寄ったようだ。

「荷を届けなくっちゃいけないんですよ。今日都市から出られなければ、間に合わないんです」

 切羽詰まった顔で陳情しているのは、行商人らしい。
 荷を満載に積んだ荷車が二台、脇に停めてある。
 商人の部下らしき男たちが、不安そうにやりとりを眺めていた。

「無理だな。緊急事態ということで、城門の権限が取り上げられたんだ」
「そんな! いったいだれが?」

 そう、それが聞きたかったんだ。
「大隊長から命令がおりてきている。実際に動いているのは、エイドス隊長だ。城門にいただろ」

「エイドス殿が所属しているのは歩兵大隊じゃないですか。ということは、レニン大隊長の指示ですか」

「私は上のことは知らない。だが、直談判に行くつもりだろうが、止めておけ。捕まって牢に入れられるのがオチだぞ」
 図星だったのか、行商人はうろたえた。

「ですが、話せば……」
小金こがねで動くとは思えないな。これは氏族に関係している問題だ。不用意に頭を突っ込むと大変なことになるぞ」

「氏族ですか。わたくしも商人のはしくれ。少しですが、氏族の方々には知己がございますが」

「会えないだろうよ。本殿に通じる門も閉ざされている。中がどうなっているか、皆目見当もつかない。おとなしくしておいたほうが、身のためだと思うが、どうだ」

「………………」

 万策尽きたのか、行商人が押し黙る。その間に警邏兵は行ってしまった。

「なるほど、本殿の様子は警邏隊でも分からないと」
 現状、都市の中に詳しい情報を持っている者がいないようだ。
 クーデターの件はまだ伏せられているのかな。

 夜明け前にクーデターが決行されたならば、そのときに本殿に繋がる門が閉鎖されただろう。
 それ以降、だれも出入りできないとすれば、いまの状態も納得できる。

 外に通じる都市門まで閉ざしてしまえば、情報が漏れる心配はないし、外からの情報が入ってこない。

 これから判断するにクーデターは成功したのだろう。
 その割には、都市門の警備がやたらと強固なのが気になる。
 兵は外を見張っていた。都市の外に警戒するなにかがあるのかもしれない。

「しかし、この状況だとアンさんを連れて脱出させるのは無理そうだな」

 僕が女王陛下の〈影〉だと知られて構わなければできるが、そうすると今後の生活に支障がでる。
 とりあえず、情報収集が先だな。



 一度酒場に戻ってアンさんに状況を話す。
 本殿に繋がる門だけでなく、都市門が閉ざされていたことはすでに知っていた。

 出入りの人が話していたそうだ。
 アンさんは変装してちゃっかりと、酒場の仕込みを手伝っていた。
 そろそろ店が開く時間だ。

「どうやっても都市の外には出られそうもないので、アンさんのことはまだ誰にも言わないほうがいいですね」

 信用できそうな商人でも、いつどこで話が漏れるか分からない。
 いまはここでひっそりと隠れてもらった方がいいと説明すると、アンさんは納得してくれた。

「さすがに家を一軒一軒回って、家探しするわけにもいかないでしょうし、アンさんのことを知っているのは、ここにいる人だけにしておきます。門が開いたら、そのとき考えましょう」

「はい、レオンくんにすべてお任せします」

 なぜだろう。アンさんが僕に全幅の信頼を寄せている。
 昨晩はかなり胡散臭げだったのだけど、心境の変化かな。

「下の酒場なら、自然と情報が集まるでしょうが、僕は兵がよく足を運ぶ酒場に行ってみようかと思います。思わぬ情報が入ってくるかもしれませんので」

「危険ではないでしょうか」
「大丈夫です。みな僕と同じで、何が起こったのか知りたがっています。アンさんはゆっくり休んで体力の回復につとめてください」

「レオンくん、気をつけてください」
「ありがとうございます、アンさん」

 僕がそう言うと、アンさんは顔を真っ赤にしてうつむいた。
 どうやら照れているらしい。いまの会話に何か照れるようなことがあっただろうか。

「では行ってきますね」

 僕はアンさんの部屋を出て、闇に潜った。


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