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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 正直僕は、クーデターなんかどうでもいいと思っている。
 好きにやってくれと言いたい。

 だが、アンネロッタことアンさんを巻き込んだ責任はとってもらおう。

 農業試験場から一気に南下して、アンさんがいるという建物の前に到着した。
 魔道結界が張られている。感知式のやつだ。

「……人の気配がするな。しかも複数」

 無人じゃなかったのか? 話と違うな。
 気づかれないように、闇に潜ったまま建物に入る。

 だれかの別宅なのだろうが、建物の中は生活感がまったくない。
 玄関のすぐ近くにいたのは武装した兵がふたり。
 二階に数人の気配がある。

「奥にも気配があるけど……そっちは一人っぽいな」

 ふたりの兵を無視して奥に向かう。
 気配は食堂の脇の貯蔵庫らしい場所からだ。

 小窓があり、そこからゆらめくろうそくの明かりが漏れている。
 中は樽や木箱が乱雑に置かれていて、その先に粗末なベッドが置いてあった。

「いた。アンさんだ」

 見間違えるはずがない。アンさんに間違いはない。

 精神が参っているのか、疲れた顔で眠っている。
 多少薄汚れて、やつれた感じだ。寝ているのに、眉間にシワが寄っている。

「ここにトラッシュとかいう奴がたまたま助けにくるんだよな」

 クーデターから逃げ出した先にたまたま? さぞ滑稽な自演をするんだろう。
 もちろんその前にアンさんを助け出す。

 戻って兵たちを確認する。一階と二階合わせて五人いた。

 さてどうしよう。
 竜国が関与しているとバレなければ何をやってもいい。
 だったらここは、魔国に泥を被ってもらおう。

 魔国の仕業にでも見せかけるのも面白そうだ。
 他にもなにかやりたいな。

「……そうそう。トラッシュってやつは、たまたまアンさんを発見するだったよな」

 夜明けにクーデターが発生して本拠地から逃げ出した先で……というシナリオらしい。
 どうせなら、その案をもらってしまえ。

 この邸宅は住宅街にあるが、ラングさんの酒場からそれほど離れていない。
 僕は闇に潜ったまま酒場に戻る。

「……というわけで、アンさんを見つけたんですけど、こういう作戦はどうでしょう?」
「ふむ。面白いね。別に構わないよ」

 夜はもう遅いので、客はみな帰っていた。酒場にはラングさん夫婦しかいない。
 アンさん救出作戦をラングさんに話すと、面白がって乗ってくれた。

 リアカーと酒樽を借り受けて僕はもう一度邸宅に行った。
 その際、服はラングさんから借り受けている。

「さて、見張りだと思うけど、この兵をどうするかだな」
 殺してしまうのは簡単にできるが、そうすると後で捜索の手が厳しくなるおそれがある。

 不本意だが、眠ってもらうだけの方が良さそうだ。
 方針が決まったので、一階にいる兵から無力化する。

 闇の中を移動し、ひとりの兵の後ろに姿を現す。
 眠いのか、椅子に座ってうつらうつらしている。

 まったく気づく様子がないので、剣の柄で首筋を痛打する。

「……ッ!?」
 声を挙げることなく倒れ伏した。
 すばやくもうひとりを見るが、そちらの方は完全に目を閉じている。
 寝ているようだ。

「なんというか、気合が入ってないな」

 こちらも難なく無力化して、二階へあがった。


 下にいたのは下っ端らしく、上にいる兵たちは軍装も違っていた。
 もう少し、上等なものを着ている。

 だからか、完全に油断している。
 カウチにねそべり寝ている者がひとり、酒を飲んでいる者がふたりだ。

 気を抜きすぎだ。
 酔ったふたりを先に無力化して、そのまま最後のひとりに手刀を叩き込む。

「これでいいか」

 襲撃を受けるなどと、想像していなかったのだろう。
 こうも呆気ないと、はっきり言って情けない。

 もう一度館を出て、魔道結界を見る。
「解除できるけど、できれば魔国っぽくしてみるか」

 魔道結界は、より強い魔道を与えることによって、強制的に解除することができる。
 解除というか、結界をむちゃくちゃにするのだ。

 これで強力な魔道使いがここに来たことだけは分かるだろう。
 一階の兵を二階に押し上げ、準備は整った。

 空の酒樽を持って、奥に行く。

 食堂の辺りで酒樽をガタガタと動かす。
 ちょっとわざとらしく扉にぶつけたりしてみた。

 少しして、小窓から顔が覗いた。

「あれ?」
 なにかの拍子に気づいた振りをして声をあげた。

「レオンくん!?」
「アンさんですか? どうしたんです、こんなところで」

 僕の演技はどうだろうか。



 旧交を温めようとする僕を制して、アンさんは横にある鍵で扉を開けてくれるよう頼んできた。
 それに従い、アンさんを救出する。

「どうしてレオンくんがここに?」
 不審そうに見てくる。

「パン職人になりに来たんです」
「…………はい?」


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