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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

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 駆動歩兵と聞くと戦闘用を思い浮かべがちだが、それ以外にも運搬用や作業用などもある。

 林の中にいるのは戦闘用。
 竜国で僕が見たのは、作業用だった。

 戦闘用駆動歩兵の外装は強固で、兵が武器で殴りかかっても傷をつけられるとは思えない。
 そのうえ盾を装備し、腰に剣がある。

「真正面から戦うことを考えると、思ったより厄介だな。竜以外は手も足も出ないじゃないか」

 あらためて技国の怖さを思い知った。
 氏族ごとに駆動歩兵を何百、何千と保有していると聞いたが、こんなのが一斉に攻めてきたら、都市など簡単に陥落してしまう。

 幸い周囲は真っ暗である。
 僕は駆動歩兵の合間を縫って奥に進んだ。

 建物が見えた。明かりが窓から漏れているから、中に人がいる。
 屋根から天井裏に入り、そこで耳を澄ます。

「リガル将軍、第四駆動歩兵隊、第三班はメイガス大隊と合流し、規定のポイントに到着しました」

 伝令だろうか。なにやらきな臭い報告だったけど、どういうことだ?

 第四駆動歩兵隊というのは、駆動歩兵の単位だろう。四番目に編成したということかな。
 第三班ということは、第四駆動歩兵隊をいくつかの班に分けた感じか。

「よし、こちらも順調だ。夜明け前に作戦を開始する。それまで待機せよ」
「ハッ、作戦行動時まで待機するよう伝えます」

 伝令は敬礼して出て行った。
 どうやら何かが始まるらしい。
 とても穏やかじゃないなにかが。

 天井裏でしばらく耳を澄ますものの、これといって新しい情報は入ってこない。
 中には七人の軍服を着た人がいるが、だれも会話をしない。

 無駄口を叩かないのはいいことだが、これでは何の情報も得られない。
 仕方がないので、外の駆動歩兵を見にいってみる。

 相変わらず、林の中で佇んでいる。
 動いていないので数えやすい。端から数えていく。

「……全部で八十体か。かなりいるな」

 五十体以上いるとは思ったが、木々の奥も全部数えると、八十体もいた。
 これだけの数の駆動歩兵を林の中に隠す。
 その上で明け方に作戦行動をするという。

 みんなで早朝ピクニック……ではないだろうな。

 とすると、考えられるのはひとつ。

 ――クーデター。

 ここは鴎の氏族の本拠地だ。他の氏族の駆動歩兵が入り込めるはずがない。
 そもそもヘレンさんが言っていた。
 都市の駆動歩兵が北側に向かった――と。

 鴎の氏族が所有する駆動歩兵が、鴎の氏族の都市内で作戦行動をする。
 もしこれがクーデターじゃないとすれば、逆にすごいわ。

「リガル将軍と言ったっけ」
 先ほど報告を受けていた人物。彼が首謀者なんだろうか。

 クーデターにしろ、そうでないにしろ、直接僕には関係ない話だ。
 だから見かなかった、聞かなかったことにしよう……ってのは無理だよな。

「夜明け前に作戦行動ね」
 とりあえず、付き合いますか。



 建物の天井裏に戻り、リガル将軍を監視しつつ、耳をそばだてる。

 一時間、二時間と過ぎてゆくが、だれも無言を貫き通す。
 緊張しているのか、時々生つばを飲み込む音が聞こえる。

「……作戦行動の前に最後の確認をする」

 リガル将軍が地図をテーブルに広げた。

「第一班はここより南下し、監視塔を迂回しつつ本殿そばの第一駆動歩兵隊の待機所を襲撃する。途中気づかれてもいい。最速で待機所へ向かう」

 他の六人が頷く。
 やはりクーデター計画のようだ。

 第一駆動歩兵隊を襲うらしいが、そうすると駆動歩兵どうしの戦いになる。
 どちらが勝つのだろう。奇襲するほうが有利かな。

「待機所には二百体の駆動歩兵があるが、乗り込むのに成功するのは二十体前後と推測している。敵駆動歩兵と遭遇したら、直ちに交戦、排除せよ。この作戦のかなめは、第一駆動歩兵隊を早期に無力化することである」

 同じ軍人どうしだ。日頃の行動、訓練を見ていれば、予想がつくわけだ。
 イレギュラーな事がなければ作戦通りになる気がする。

「同時刻、第二班は第二歩兵隊の待機所を襲撃している。ただしここは、我が第三駆動歩兵隊の待機所と隣接しているため、襲撃は容易である。成功は疑いない。よって、第三班の働きが重要となってくる」

 先ほど伝令に来たのが第三班だったな。たしか大隊と合流したとかなんとか。

「第三班は、メイガス大隊と一緒に本殿を急襲。迎撃に出た駆動歩兵や警備兵、近衛兵たちを殲滅し、党首のグエンとその母親ベアを殺害する」

 捕まえるのではなくて殺すのか。徹底しているな。

「第三班が本殿に突入したら、トラッシュ様が本殿より脱出し、たまたま逃げ込んだ無人の邸宅で、グエン様が捕らえて監禁していたアンネロッタ様を発見。救出しつつ市街地へ逃げ出すことに成功する」

 ……ん? いまなんていった? たまたま……じゃなくて、だれが監禁されていた?
 アンネロッタ様? そう言ったよな……それって、アンさんのことじゃないか。

 どういうことだ? 竜国から拐われたアンさんはやはりここにいるってことか。
 無人の屋敷で、トラッシュってやつが、たまたま(・・・・)逃げた先で発見するって……。

「自作自演じゃないか」

 このクーデターと、アンさんがどう関係するのか分からないけど、このクーデターに利用されることが分かった。

 リガル将軍が指した地図の場所にアンさんが監禁されているという。
 無人の邸宅って言っていたよな。

 どうりで本殿にはいないはずだ。
 市街地のすぐ近く。下級氏族が住む区域のはずれに監禁されてたなんて。

「そののち我々は本殿を占拠し、防備を固めるが、トラッシュ様の説得により、籠城を断念。トラッシュ様に下る。いいな」

 リガル将軍の言葉に全員が頷いた。

「都市の外はそろそろカインが行動を起こしている頃だろう。我々も準備をするぞ」

「「「ハッ!」」」

 リガル将軍が地図をしまい、全員が慌ただしく動き出す。

 僕もそっと抜けだして、地図で見た場所は記憶している。

 そこへ急行だ。

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