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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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 王都に着いた。
 着いてしまった。

 もう逃げられない。
 いや、最初から逃げられないのだけど。

 馬車は、わざわざ僕を学院の寮まで運んでくれた。

「寮は……思ったより小さいな」

 三階建ての建物だ。
 聞けば、男女で同じ建物を使うのだとか。

 なぜ男性寮と女性寮に分かれていないのか、分からない。
 男女でひとつの建物を使うとか、いろいろ問題があるだろうに。

「金がないとか……?」

 さすがにそれはないか。

「あえて理由を付けるとしたら、卒業後はほとんど軍属になるわけだし、そういう生活に慣れろということかな」

 それと、規律ルールを守れということだろう。
 間違いを起こさないように、密かに監視されているかもしれない。

「しかし、失敗したな。もっと外の様子を見ておけばよかった」

 ここに来るまで外を見ていなかった。
 夜に、王城へ行かなければならないのにだ。

「あとで周囲を歩くかな」

 竜の学院は、王都の北側にある。
 それだけは分かっている。
 逆に言えば、それしか分かっていない。

「えーっと、たしか王城の真北に操竜場そうりゅうじょうがあるんだよな」

 操竜場は、竜操者たちが日々の鍛錬を行う場所だ。
 かなり広いと聞いている。小さな町ならすっぽり入るくらい。

 軍属の竜操者がそこの操竜棟そうりゅうとうと呼ばれる建物で、寝起きしている。

 竜の学院は、それよりも北にあると聞いた。
 王都の中でもかなり北側ではなかろうか。

「前回来た時は、商業街にしか足を運ばなかったしな」
 あとは王城か。
 もっとも、王城は夜になってから向かったのだけど。

 王都の北部は、竜と竜操者のための場所と思われているらしい。
 国民は、あまりこの近辺で生活していない。

 まったくいないわけではないが、王都とは思えないほど閑散としているとか。

「王都の南側なら、分かりやすいんだけどな」

 王城から南に、大道が一本伸びている。

『竜の背』と呼ばれるそれは、飛竜が操竜場へ帰る目印にもなっている。
 道の横幅は実に百メートル。

 この大道は、竜のパレードにも使われたりする。



 突っ立っていると、寮から人が出てきた。

「入寮者でございますか?」
「そうです。今年度より学院で学ぶことになります、レオンと申します」

「管理人のコンラントと申します。失礼ですが、許可証か竜紋を確認させてよろしいでしょうか」
「……ええ」

 僕は左手をコンラントに見せた。

「たしかに確認しました。ではレオンさま、部屋に案内致します。お荷物はご自分でお持ちください」

 コンラントに先導されて、僕は寮の中に入って行った。

「静かですね」
 人の気配がまるでない。

「ただいま長期休み中ですので、寮に残っている学生はほとんどおりません。新規入寮される方のみですね」
「そうなんですか?」

「新二回生はいま、演習に参加しております。あと数日しないと戻って来ないでしょう」

 新年の1月を迎えるとすぐに竜迎えの儀が執り行われる。
 王都から北東に進んだ所にある竜の聖門せいもんから竜が出てくるのだ。

 そしていまは三月上旬。
 二回生もようやく自分の竜に慣れてきた頃かもしれない。

「レオンさまは二階の突き当たり、左側の部屋になります」
「ありがとうございます。……入寮にさいして、なにか注意することはありますか?」

「正式に学院が始まるまでは、食堂が開いておりません。食事は購買から買うか、外で済ませるよう、お願いします」

「学院が始まったら、食堂で食べられるのですか?」

「朝と夕方は食堂で食べられます。昼は購買か保存食で済ます方が多いようです。外へ出ても構いませんよ」
「学院の外ですが。意外と緩やかなんですね。外へ出てはいけないのかと思っていました」

「その辺は、かなり自由だと思います。……もっとも、制服を着用していますから、目立ちます」
「……ああ」

 それは目立つな。
 昼休みを終えても、その辺をふらふらしていたら、確実に目立ってしまう。

 羽目を外す人もそれほどいないのだろう。
 どこにも人の目があるわけだし。

「建物についてですが、一階に風呂があります。男女別になっておりますので、お間違えのないように願います。三階は女性専用です。ご注意ください」

「なるほど、分かりました。使うのは一階と二階までということですね」
「はい。なにかありましたら、お声がけください。わたしは一階の管理人室におりますので」

 コンラントさんは頭を下げて戻っていった。

 腰の低い管理人だったな。

「片側に六部屋か」
 左右で十二部屋。これが竜の学院の男性すべてなのだろうか。

 室内にはベッドが四つあり、そのうち二つが使われていた。

「四人部屋が左右合わせて十二あるから、最大で四十八人分ね」
 竜紋が現れるのが毎年、男女あわせて三十人くらいと聞くから、そんなものかもしれない。

「ベッドとその脇の机で一人分かな。荷物の置き方が同じということは、新入生というより、演習に出ている新二回生だよな」

 とすると、一部屋に一回生と二回生が二人ずつになるのだろうか。

「あとひとり来るのか、それとも三人で使うのか……そのうち分かるかな」
 手早く荷物を置くと、僕は二階の窓からそっと抜けだした。

 近所を散策するとしよう。
 せめて学院の周囲だけでも把握しておきたい。

 寮の庭に降り立ち、僕は気の向くまま歩き出した。


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