挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

86/660

086

 事前に聞いた話では、グラロスを名乗る者の中でも序列があるらしい。

 氏族のトップや重要な地位を占める者が住む本殿と、それ以外が住むやしろには、明確な線引きがなされているという。

 さらに氏族の中でも、より下の者は本殿や社にも入れず、通常の屋敷住まいをしているらしい。
 この辺は、直系と分家、その他で分けられているのだとか。

「そう考えると、本家直属が王族で、分家が貴族みたいなものか」

 竜国に当てはめると、そんな感じだろう。
 違うのは、この国の氏族社会においては、氏族のトップは神のごとく崇められていることだろうか。

 それゆえ、極端な搾取体制が成り立っていると言える。

 僕は闇に溶けたまま、グラロス家のトップらが住む本殿を目指した。

 夜は僕のフィールドだ。
 門も堀も僕の前には、平地と同じ。
 使われている魔道結界は古いものが多く、闇を進む僕にはまったく効果がない。

 広大な敷地の中に出た。立ち入り禁止区域だ。

 ここまで来るのに、人と犬の巡回が見られる程度で、あまり厳重な警戒とは感じなかった。
 一般の侵入者を排除するためのものだろう。

 敷地の中を進む。敷地と言っても、小さな町くらいの規模がある。
 人の姿があるが、闇に溶けたままなので、気づかれる心配はない。

 敷地の中には、家や店までもあった。
 働いている人もいる。使用人かと思ったが、店主のようだ。
 夜でも店を閉めないのだろうか。

 見たところ、人が暮らすのに必要なものが揃っているように感じる。
 おそらくここはグラロス家のためだけの町だ。

 一般の立ち入りを禁止して、ここだけで独立した町を作っている。
 たいした財力だ。

「町の中に町を作るとは、想像以上に技国は変わっているな」

 気になったのは、所々に要塞化した建物があるところだ。
 頑丈な石造りの塔だが、これは何のためだろう。

「ちょっと見にいってみるか」

 好奇心を刺激されたわけではないが、未知のものはひととおり確認しておきたかった。

 丸い塔だが、それほど高いわけではない。四階建てくらいか。
 見栄えよりも頑丈さを重視した作りになっている。

 人の気配はないので、中に入る。
 一階は倉庫のようだ。食糧庫かと思ったが、違うようだ。

長槍ちょうそうが立てかけてあるな」
 しかも数が多い。武器庫か?

 らせん階段で二階に上がると、丁寧に布をかけた物が多数あった。
 布の下には金属の機械。見ただけで用途は分からない。

「なにかの部品だよな、これ」
 組み立ててないので、完成形が予想できない。

 そのまま三階にあがる。
 上への階段があるが、屋根があるのはここが最後のようだ。

 部屋の中央に三台、先ほどの部品を組み立てた物がおいてあった。
 ここだけは四角い窓がいくつもある。

「これは……長槍の射出機か」

 鉄製の巨大な弓が機械に括りつけられていた。
 壁に何十本と長槍があるので、それを射出するのだとわかる。

 これだけの巨大な機械で撃ちだすのだ。
 どれほどの威力になるだろうか。だが、何のために?

 人相手にしては過剰戦力だ。駆動くどう歩兵対策か。

「……ん? いや、そうか。これは」

 これは駆動歩兵にも有効だろう。
 だが、射出角度をみれば、空にまで対応している。

 駆動歩兵は空を飛ばない。
 だが、射出機の取り付け角度からして、空への対応を考えている。
 地上と空中に長槍を射出する、つまりこれは竜対策。

 戦争になった場合、この都市は一番竜国に近い。
 本殿を守るための防衛装置だ。

「女王陛下に知らせておくか」

 比較的侵入し易い場所なので、知っていると思う。
 だが念のため、この建物の意図とその準備について、報告することにした。

「……さて、先に進もうか」

 奥にいくと、水を満たした堀と高い塀があった。二つ目の堀と塀だ。
 闇の中から覗く。塀の上部に、不自然な箇所がある。

 スイッチになっているようで、塀を乗り越えようと手をかけると、どこかに知らせるようになっているようだ。

 このような機械式の仕掛けを施すのは、技国だけだ。
 魔道を信用していないというより、自国の技術で防備を固めた方が、対策を取られないと考えているのだろう。

 塀を越えて進むと、いくつかの建物があった。
 みな立派な建築物だ。高貴な人物が住んでいるのだろう。

 用途は分からない建物もある。
 すべてに人が住んでいるわけではなさそうだ。

 いくつかの建物の中を覗いたが、空っぽのもの、机と椅子が並んでいるもの、倉庫になっているものばかりだった。

 さらに進むと、ようやく本殿が見えてきた。
 建物が大きい。そして立派だ。

「ここにきて、魔道結界か」

 魔道の感知結界と警報結界が交互に仕掛けられている。
 門はすべて機械式で、横に数字が書かれた板がある。
 決まった数字を押さないと開かないようだ。

「ここから先は気合を入れて進まないとな」

 どのような警備になっているか、事前情報はなにもない。
 竜国としても、攻めあぐねているのだろう。

 僕が潜入して確かめるしかない。

 本殿に通じる通路はひとつだけ。
 庭というか、きれいに整備された庭園だ。
 ここ必ず突っ切るようになっている。

 目を凝らすと、複数の魔道結界が見て取れる。見たことがあるもも、ないものがあった。
 影に潜ったまま、それらをすり抜ける。

 初見の魔道結界だけは注意した。
 可能性は低いが、見えている部分が全てではないかもしれないのだ。

「よし、問題ない」

 魔道は反応していない。いい調子だ。

「このへんは地下水路の経験が役に立ったな」

 どういうわけか、僕がいつも通るあの地下水路は、だんだんとより凶悪な結界に入れ替えられていたりする。
 前日と同じかと思って不用意に進むと、引っかかるという寸法だ。

 毎日行き来するので、自然と魔道結界には敏感になってしまっていた。
 それに比べると、ここの魔道結界はまだヌルい。

「問題は、機械式の方だな」

 ランプによって照らされた庭園は、死角となる場所が少ない。
 闇に潜ったまま進むには、大回りすることもしばしばである。

 途中にいくつか、僕以外ならば突破できない仕掛けがあった。
 床の振動で発動する仕掛けなどは、空を飛ばないかぎり進めないだろう。

 ほかにも訓練された犬が放されている一角があった。
 動物は勘が鋭いから、闇に潜っていれば安全というわけではない。
 こういうのは注意しすぎるくらいが丁度いい。

 僕は、なんとか外の仕掛けをやり過ごし、本殿の中に入ることができた。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ