挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第2章 技国内乱編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

80/655

080

 長期休みに入って五日目。

 今日も僕宛の花が届けられた。今度は鉢植えだ。
 最近花をよくもらう。またリンダだろう。

 僕が花を受け取る姿をよく見るらしく、寮の男子だけでなく、女子までもが変な目で見てくる。
 率にすると、寮に残っている生徒の半数くらいが目を向けている。結構な数ではなかろうか。

 ちょうど何人かがちょうど帰郷のため、大きな鞄を持って玄関口にいた。
 鉢植えをもらった僕だけ目立ってしまった。

「色男は大変ね」
「お姉さん、楽しんでますよね」

 花を持ってきたのはいつものお姉さん。
 普段は花屋だが、その実、裏では女王陛下の〈左足〉をやっている。

「楽しんでないわよ」
「目が笑ってますよ。……で、今日もリンダからですか」
 リンダからだろうな。それ以外に心当たりはない。

「名前はこの前と同じ」
「リンダか」
 やっぱりだ。

「……にしたのだけど、私が勝手に名前を使わせてもらったわ」
「えっ?」

「緊急の指令よ……すぐに陛下のもとへ行ってもらえるかしら」
「えっ、すぐにですか?」
 鉢植えは、僕に会う理由づくりだけらしい。

「本当に緊急なのよ。すぐに行ける?」
「分かりました。大丈夫ですよ」

 何かあったようだ。
 お姉さんは、「たしかに伝えたわよ」と去っていった。
 僕は自室に戻って、鉢植えを机に置く。

「出かける前に水をやっておくか」

 お姉さんはカモフラージュにこの鉢植えを使ったようだが、なぜ鉢植え?
 なにか理由があるのだろうか。ないかな。
 目についたのを持ってきただけなのかもしれない。

 しかし日中の呼び出しは初めてだ。本当に緊急だと分かる。

「さて、どうやって行こう」

 学院内からだと、点検口から地下水路に入ることができる。
 午後になると、点検口の入り口も建物の影に入るが、いまはまだその時間ではない。
 フタを開ければ入れるが、さすがに目立つかな。

「面倒だけど、学院の外から潜るか」

 周辺にある複数の出口は把握している。
 そのひとつを使って、僕は闇に潜った。



 王宮内に張り巡らされた魔道結界は、なぜか一新されていた。

 学院生を狙った襲撃は囮で、実は女王陛下の暗殺を狙っていたのだと聞いた。
 その際、父さんが王宮でなにをやったのかも。

「父さんも無茶をする」

 女王陛下を守る〈左手〉を押しのけて、自らが警護にあたったとか。
 でも、そんなことしていいのか? 〈左手〉のみなさん、怒ってなかっただろうか。
 怒らしちゃ駄目だぞ。

 それでも、女王陛下と父さんのめを聞いてしまったあとでは、さもありなんと思ってしまう。

 やってきた魔国十三階梯を文字通り瞬殺したらしいので、〈左手〉のみなさんが父さんに文句を言いたくても、無理かもしれない。
 噂では聞いていたけど、やはり父さんは強いな。

 それでも多くの敵に侵入された事実は残るので、警備の見直しと、人員の再訓練をはじめたと義兄さんが言っていた。
 この結界の一新は、そのせいか?

「防備を改善しなければ地方の優秀な〈影〉と総入れ替えすると、女王陛下に脅かされたらしいぞ」

 義兄さんが苦笑しながら教えてくれた。
 あの女王陛下なら絶対やる。

 実際、国境を接している町の〈影〉は優秀らしい。
 他国の間者を水際で止めるため、いつも最前線なのだ。

 王都の〈影〉もがんばって訓練に励んでほしいが、そのとばっちりがこっちにきた。
 一新された魔道結界によって、前より侵入の難易度が上がっている。面倒この上ない。

 それでも誰にも気付かれずに王宮内に入り、女王陛下の気配をたどる。
 いまは日中なので、天井にある隙間を移動している。

「あれ? ここは」

 女王陛下を探していたら、いつもと違う場所にいた。
 天井のすぐ下で複数の気配がある。

「話し声……会議中かな」

 闇に潜ったまま中に入れる場所を探す。四隅が暗いので、なんとか移動できそうだ。
 そっと床に移動して、会議を盗み見る。偉そうな服を着た人たちが、大勢集まっていた。

 部屋は広く、窓は遠くにある。
 ただ、ろうそくが灯されているので、部屋の中央付近に行くことはできない。

 だれが集まっているのかな。
 女王陛下以外に顔見知りはいなかった。
 会議に出席しているのも、いろんな立場の代表といったところだ。

 緊急と言いつつ、これが終わるまで待たされるのか。
 いや、緊急だから会議を開いているとか?
 だったら、ずっと終わらないかもしれない。顔を出したほうがいいか。

 途中から聞いているだけで分かる。会議が紛糾している。
 大臣風のおっさんと、竜操者の偉い人が怒鳴り合っている。

 大人げない……という問題じゃないんだろうな。なにか大事がおこっている予感がする。
 さて、どうしよう。

 うん、会議を邪魔するのは止そう。代わりに……。

 部屋の隅に〈左手〉がいる。
 気配を消して控えている。女性だ。
 僕も気づけなかったくらい、気配の消し方はうまい。

 そっと後ろにまわり、僕はゆっくりと姿を現した。
 相手はまだ気づかない。

 ……チョン。

 女性の両脇腹を指先で突っついた。

「ひあっ!」

 突如として響いた奇声。
 全員の視線がこちらに集まる。

「………………」
「………………」

 ものすごい気まずい沈黙があたりを支配する。

「責任の所在ばかり話し合っていても埒が明かないわね。今日の会議はこれでおしまい。対策はこっちでするわね」

 女王陛下の一声で、半数以上の人が頭をさげた。
 残りの半数は、困った顔で、どうしたらいいか周囲に視線を走らせている。

「打開策があるなら聞くわ」
「………………」

「だれもいないようね。ならば、あとはこちらで引き受けます」

 二度もキッパリ言ったからだろうか。
 今度は全員が女王陛下に従った。

「解散ね」

 どうやら話が終わったらしい。
 というか、僕が終わらせた?

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ