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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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 生き残った敵は三人。

 ひとりは魔道結界を張ったやつだ。
 あいつがいる限り、闇に溶けたとしても、出現した瞬間に察知される。

 味方で残ったのは、僕を入れて五人。
 十二人の集団が四人に減ったことになる。

 黒い霧に飲まれた味方は、数に入れてない。
 生きているか分からないが、この戦闘では諦めたほうがいいだろう。霧が固くなってきたし。

 敵は逃げる様子はない。こっちを全滅させるつもりだ。
 一番近くにいる奴から相手していく。

 接近すると、灰色のローブの中から顔が見えた。
 結構な歳だ。父さんよりも上くらいだろうか。

 経験豊富な魔道使いは、搦手からめてを使われると嫌だな。
 連続攻撃で押していこう。

 父さんにさんざん鍛えられたので、体力には自信がある。
 息をつかせない攻撃で相手の隙をつく。そのはずだったが。

「かなりの手練だな」
 予想以上だ。

 最小の動きで避けてくる。
 逆にこっちの技のつなぎを狙ってくる強かさだ。

 こういう相手に『闇刀』は通用しない。
 初見でも、意味を理解して避けてくる。

 小技を混ぜて、体術を織り込んで攻撃しても、キッチリ対応してきた。
 これは経験の差だろう。

 ここまで長引くと、技術で劣る僕のほうが不利になってくる。
 スタミナ切れを狙うまえに、こっちがミスをしそうだ。

 そもそも僕の戦闘スタイルは、不意を突いて一撃で致命傷を与えるやり方だ。
 正面から技術の応酬は苦手なのだ。

「しかたがないな。奥の手か」
 見せたくないが、それ以外の攻撃はすべて対応されそうな気がする。

 僕は距離を取って息を整えた。
 敵は追撃してこない。

 罠を恐れたか、単純に一息つきたかったのか。
 それは分からないが、いい距離ができた。

 敵は投げナイフを警戒したのか、腰を落として剣を前に構える。
 たしかに飛び道具の間合いだが、そうじゃない。

「いけっ!」

 僕は最近覚えた魔道『闇鉤爪やみがぎづめ』を放った。

 僕と敵のちょうど中間あたりの闇が爆ぜた。
 そこから大地をえぐりながら、見えない一本の爪が敵に迫る。
「!?」

 ムチをしならせたように進むそれは、目を開く敵を真っ二つに切り裂き、後方に抜けていく。
 うん、分かっていた。これは人に使うには過剰過ぎる威力だ。

 しかも影を伝うので、剣や盾で弾くことができず、さらにナイフを投擲する以上の速さはある。
 目で追って理解してから動くには、時間が足りない。

「自分で言うのもなんだけど、凶悪な技なんだよな」
 月魔獣には効かなかったけど。

 ふたつに分かれた屍を見下ろす。静かだ。
 敵の全滅によっていつしか戦闘は終わっていた。

「よくやったね」

 しばらくして義兄さんがやってきた。〈右足〉は戦闘に参加しない員数外だ。

 僕も周囲を確認したが、脱出した敵影はなし。
 ここを監視している存在もないと思う。

 義兄さん以外で三人の〈右足〉がいるらしいが、いまだ周囲に散っているという。

「よくこれだけ倒したな」
「不意をつけたから。それほど怖い相手じゃなかったし」

 最後の敵だけはかなり実力が高かったが、あとは一対一でなんとかなるレベルだった。
 それを言うと、義兄さんは変な顔をした。

「最後に倒したのは、第七階梯の『黒霧こくむ』だよ。魔国だと『ブラックミスト』と呼ばれている」

「十三階梯っていうと、魔国のエリート魔道部隊じゃなかった?」

「正確には、魔道王を守る対人のエキスパートたちだね。それぞれが特異な魔道で魔道王を守る。あそこに転がっているのが、『氷弾ひょうだん』だ。魔国での呼び名は『アイスジェット』。代替わりしてなければ、第八階梯のはずだ」

「第七と第八が来たのか。……もしかして、結構危なかった?」
「情報が漏れていなきゃ、全滅していたね。間違いなく」

「他の敵はそれほど強くなかったけど」

「いや『黒霧』だけでも相当なものだよ。あの霧に取り込まれたら、脱出不可能と言われている。中で人が動けば動くほど霧の粘度が高くなり、しだいに固まっていく。そうでなくても視界が完全に奪われれば冷静な判断ができなくなる」

 なるほど、中であがけば自分の首を絞める訳か。

「だったら動かなければ?」
「霧の中に蜘蛛が徘徊しているのさ。動けなくなると、それで殺られる。義弟が霧に飲まれたときは、正直肝が冷えたんだが」

「闇に潜ったら出られた」
「見ていたけど、ずいぶん常識外れな魔道だよ、それ」

 そうだろうか。
 僕の『闇渡り』がすごいんじゃなくて、霧が地上しか影響を与えられなかったからだろう。

「なんにせよ、結果を知らせないといけないね」
「知らせるって、どこへ?」

「もちろん女王陛下のところだ。連絡用に竜操者をひとり確保してある」

 それはまた贅沢な。
 いや、襲撃されたのだから、当たり前か。

「襲撃は撃退しましたって、報告するの?」
「いや、『石眼せきがん』はいませんでしたとね」

「なぜ『石眼』……?」

 僕は首を傾げた。

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