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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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 魔国には、十三階梯かいていと呼ばれる者たちがいる。
 彼らは、それぞれが一流の魔道使いであり、魔国王の密命を受ければどこへでも向かい、その力を存分に発揮する。

 十三階梯は魔国の力の象徴であり、最強の剣と盾といえる。
 彼らは竜国の〈影〉のように、秘される存在ではない。

 第六階梯ルクノスは、流れ出る汗を手の甲でぬぐった。

 ここは竜国の王宮。敵地である。
 足元には王宮を守る兵士の屍が積み上がっていた。

「後方の敵は一掃しました」
 第九階梯イメルダがやってきた。

「これで背後から急襲されることはなくなったか」
「大丈夫です」

「よし、進もう」
 魔国十三階梯のルクノスとイメルダは、竜国に招かれたわけではない。
 多数の部下とともに侵入を果たしたのである。

 すぐに王宮の警備兵に発見され、ここまで来るまでに二度も大きな戦闘をこなしている。

「この先には待ち構えている兵がうじゃうじゃいるようだぞ」
「迂回しますか?」

「それを狙っているのかもしれん。他の者の動向も気になる。兵をこちらに集めれば、他が助かろう。このまま行く」
「わたしどもが囮をする必要ないと思いますが」

「我々ならなんとかなる。だったら、やってもいいだろう。余力はあるな?」
「もちろんです」

 三十代半ばを越えたルクノスは、対人戦においてほぼ無敵をほこる。
 しかも敵が多ければ多いほど、その威力は増す。

「我の『サンダーチェイン』、避けられると思うなよ」

 ルクノスの手には、一本の長い棒がある。

 それを一振りするごとに数条のいかづちが乱れ飛ぶ。
 押しかかる兵に直撃し、そこからさらに別の者へと伝播していく。

 まるで幾本もの鎖で繋がれたかのように、兵たちが次々と雷撃を浴びて倒れる。
 兵の鎧の隙間から、白い湯気が立ちのぼった。

「このまま進むぞ」
 兵たちにはまだ息がある。
 だが、止めを刺す時間を惜しんで、ルクノスは進む。

「女王の退路にはすべて感知結界をかけてあったな。発動した気配は?」
「いまだありません。厄介なタイプですので、解除せずに突っ切るかと思ったのですけど」

「ならば、まだ王宮の中にいるわけだ。この国の女王は胆力があるのか、バカなのか」

「自信があるのかもしれません。わたしたちは少数。なんとかなると……ここはわたしにお任せください」

 通路の先から次々と兵がやってくる。
 イメルダは背中から大きな布を取り出すと、兵に向かって投げた。

 布はまるで生き物のようにうごめき、兵たちを包む。
 するとあれほど柔らかかった布が、今度はカチカチに固くなる。

「排除、終わりました」
「狭い通路だと、『ビッククロス』は使い勝手がいいな」

 イメルダは二十代後半の女性である。
 魔国十三階梯の中では若い方で、これまで敵地へ潜入した経験はない。

 実戦経験はそれほどない。だが、イメルダのもつ魔道がこの度の襲撃に有効であると判断され、ルクノスの相棒に選ばれた。
 その期待に応えるため、イメルダはなんとしても密命を成功させなければと意気込んでいる。

 イメルダの魔道によって団子のようにひとかたまりになった大風呂敷が通路に転がる。
 巨大なオブジェが通路を塞ぐ。それに阻まれて、後続の兵の足を止める。
 兵士十人分もの重さがある。すぐに退かすのは難しい。

 王宮の兵が悪戦苦闘している間に、ルクノスとイメルダは悠々と先に進む。

「噂の〈影〉が出てきませんね」
「呼び寄せている最中か、奥で罠を張っているか」

「もしくは、若手竜操者を守るために、王都を離れているかですか?」
「そうだな。今頃向こうでも、襲撃が始まった頃だろう」

 魔国側は、襲撃の情報をひた隠しにした。
 それでも人が動けば情報も動く。

 そのため、もし情報が漏れるならば、竜の学院生を襲う計画のみが発覚するよう、腐心した。

 竜国の王宮襲撃は、直前までルクノスとイメルダ以外には知らされていなかったのだ。
 直前まで学院生を襲撃する者たちと一緒に行動し、だれも見ていない荒野で別れた。

 魔国王は、竜国の情報収集能力を侮っていない。
 必ずこちらの動きは察知されるだろうと。

 ゆえに、この王宮襲撃を事前に知っていたのは、魔国王とルクノス、イメルダのたった三人である。
 この三人のだれかが喋らない限り、計画は漏れない。

「さて、あと少しで謁見の間だな。そこにいなければ、奥の私室まで行ってみようじゃないか」
「そこまで行けば、だれかしら知っている人がいますものね」

 王宮内は混乱しているようで、あちこちで戦闘音や何かが割れる音、悲鳴が聞こえてくる。
 このたびの目的は、女王の首を取ること。それだけである。

 投入した精鋭たちも、女王の退路を断つことだけを命令されている。
 今回の襲撃で、何年にもおよぶ潜入で得た情報を、すべて使ってしまった。
 やるからには、必ず達成しなければならない。

「……ここか」
 ルクノスは謁見の間へ通じる扉を開いた。

 ルクノスとイメルダが入ると、黒衣の者が数人目に入った。
 あれが噂の〈影〉かと、ふたりの気が引きしまる。

「敵はここで待ち構えていたようですし、彼らに聞きますか?」

「竜国の〈影〉だ。拷問しても答えないだろう。だから排除して先に進む」
「かしこまりました。では、私が……」

 イメルダが一歩前に出る。
王宮襲撃の流れは以下の感じです。

1.忠誠心の高い者を個々に竜国へ潜入させる。
2.ルクノスとイメルダが数人を連れて竜国に入る。
3.1と2が集まり、作戦を説明、決行。

魔国から連れて来た者、事前に潜入させた者、そしてはじめから竜国で活動していた者を合わせて50人くらいの襲撃です。
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