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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 公的な行事もすべて終わり、緩やかな日常が戻ってきた。
 シャラザードの怪我は日増しに良くなっている。

 そのせいか、月魔獣狩りに出たがってしょうがない。

 この分だと、完治する前に我慢しきれず、飛び出してしまうかもしれない。
「竜の回復力からしたら、もう治っているかもしれないけど」

 竜専門の医師は、完全に治るまで飛行禁止を言っていた。
 小型飛竜の場合、翼を怪我すると、骨が変な感じにくっつくことがある。
 そうならないためにも、完治まで飛ばさないのが当たり前になっている。

 シャラザードがそれに当てはまるのかは少し疑問だ。
 それに竜操者が減ったことで、個人の負担が格段に増えた。

 怪我をして戻ってくる竜操者が増えた気がする。

「そろそろ現役復帰しないと駄目かなぁ」
『うむ、それがよい。そうしよう』

 シャラザードが嬉々として答える。
 いまの、独り言だったんだけど。

 大転移の期間中は、僕らのような軍人ではない者たちも月魔獣狩りにでなければならない。
 竜操者が足らなくて厳しいのはあと一年くらいだと思うが、それまでは被害も増える。

 シャラザードを早めに復帰させて、彼らの負担を軽くするのもいいかもしれない。
『いついくのだ? 今であろう』

 こんなうるさいのを放っておくくらいならばコキ使った方がいい気がしてきた。



 アンさんが両親と一緒に実家に戻った。
 花嫁修業と言っていたけど、何をするのだろう。ちょっと興味ある。

 僕はと言うと、シャラザードがあまりに煩いので、僕は月魔獣狩りに出かけた。
 穴も塞がっていることだし、大丈夫だろう。

 空いている日はパン屋でアルバイトだ。
 そんな生活をしていたら、女王陛下から指令が届いた。
 楽園への赴任である。

 僕の任務は楽園に詰めていて、王国から緊急の用件があれば、それを伝えに戻る。
 もしくは、人を乗せて竜国まで連れてくるというものだ。

 普段は待機しているだけなので、パン屋を開く余裕はあると思う。
 というか、一年以内に開店の準備を調えようと思う。

 ちなみに夜は様々な監視だ。
 王国に住む〈影〉として、活動する。

「つまり、父さんと同じ生活だな」
 昼間はパン屋の主人、夜は女王陛下の〈影〉。

 しかも辺境のパン屋。
 僕の理想的な生活が始まろうとしている。

 出立する前、王都の知り合いと別れを済ませ、最後に王宮に向かう。

「一年後に追悼式典を行うわ」
 別れ際、女王陛下はそんなことを言った。

 支配種討伐に参加した者たちの名を記した石碑を作るらしい。
 完成は一年後になるという。
 石碑の完成に合わせて追悼式典を執り行うのだとか。

「分かりました。その日には必ず戻ります」

 世界は救われ、貢献した者の偉業を後世に残す。
 追悼式典は、毎年同じ日に執り行われるらしい。

 彼らの犠牲があったことを忘れないために。



「そういえば、巷では、おもしろい名で呼ばれているようね」
 女王陛下が面白がっている。

「誰が言い出したのか分かりませんが……」

 町の住民たちは、生き残った竜操者たちのことを『つるぎの七竜』と呼ぶようになった。

 世界を守った七人の竜操者。
 剣とは、外へ向けて戦うことを意味する。

 なんとも面はゆい呼び名だが、民の間から出た言葉なので、竜国は否定も肯定もしていない。
 だが、もうすでに定着してしまっている感がある。

 生き残った七人以外にも討伐戦に参加した者は大勢いたし、彼らが頑張らなかったわけではない。

 その中から生きて、成して帰ってきた者たちを救世きゅうせいの英雄として呼び表したのだ。

 属性竜を駆るソウラン・デポイ、アンネラ・ディーバ、そして僕。
 中型竜を駆るデスレ・ロディス。

 デスレ操者は、転戦しつつ月魔獣を撃破し続け、生き残った。

 小型竜を駆るイリス・リーディ、ダーミノ・ナリスリン、グンダ・ツイズ。

 イリス操者は飛竜隊として支配種の攻撃を受ける役目を全うし、その後は地上部隊の援護に回った。
 撤退のさい、動けなくなっているグンダ操者を拾った。

 ダーミノ操者は左翼一番の激戦区で戦い、見事生き残っている。

 グンダ操者は、愛竜を失ったところをイリス操者に拾われた。
 本人の身体は激戦のためボロボロだったらしい。

 この生き残った七名を『剣の七竜』と呼ぶ。

 僕は考えてみる。
 僕らは、民が言うような英雄だろうか。

 否、運が良かった、ただそれだけ。
 あの日、あの戦闘では誰が死んでもおかしくなかった。

 本当に運が良かっただけだと思う。
 運がよかったことで、多くの屍を乗り越えて生還できた。
 同胞の屍を踏みしめて、前へ進んできた。

 ――剣の七竜

 その名を町で聞くたびに、僕は光の当たらなかった多くの英霊たちのことを思い出す。



「シャラザード、行くか」
『おうよ』

 その日、僕らは王都を出発した。

残すところあと1話となりました。
明日、完結します。

あと1話だけおつきあいくださいませ。
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