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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 パーティの当日を迎えた。
 かなり大きな式典パーティらしく、参加者が一堂に会するのは最初だけ。

 あとは大広間だけでなく中庭や空中庭園なども使われる。
 好きな場所で過ごしていいらしい。

 いまはパーティの開始直後。
 お偉いさんの長い話が始まっている。

 あくびを噛み殺しながら聞いている状況だ。

 何人か続けて話をするらしいので、今のうちに知り合いを探す。

 参加者は三千人を超えている。
 おそらく四千人はいないと思うが、とにかく数えられる人数ではない。

 給仕をする人たちだけで千人くらいいるため、大広間はもう歩くスペースがない。
 人、人、人だ。

「アンさんは貴賓席か」
 僕らは立ち見だが、女王陛下含めて、一部の来賓には椅子が用意されている。

 一段高いところにあるので、会いに行けるわけがない。
 他に知り合いがいないか探すと……いた。

 隅っこの方にロザーナさんがいる。ロザーナさんも招待されたらしい。
 僕はゆっくりと人の間を抜けて、ロザーナさんに近づいた。

「お久しぶりです、ロザーナさん」
「あら、レオンくん。主賓がこんなところにいていいの?」

「主賓といっても、みんなと同じですから」
 このパーティに招かれたのは、生き残った竜操者だけではない。

 駆動歩兵隊や、橋頭堡を守った兵もみな参加している。
 主賓といえば彼らだって立派な主賓だ。

 主賓が多すぎるので、僕もその他大勢という扱いでまったく問題がない。

「退屈な話が続いているわね」
 肩書きを持った人々の演説が続いている。

 実際、どれだけの人が真剣に話を聞いているのか。

「偉い人たちの仕事は、こういった席で演説することですからね」
 他に何か仕事があるだろうか。あったら教えてほしい。

「レオンくんは容赦ないわね。……そうそう、カイルダ王国の協力で、食糧問題が解決しそうよ」
「そうなんですか?」
 結構深刻な問題だったはずだが。

「大規模な農地開墾を許可してくれたの」
「それは良かったですね」

「いまは許可だけだけど、すぐに取りかかるみたい。今まではいちいちお伺いを立てながら開墾していたのよ。今回からは、ある程度の区画を自由に開発できるようになったわ」

「ずいぶんと思い切った許可を出しましたね」
 自由な開発許可を出すなんて、豪気だ。

「カイルダ王国の人たちが何人も竜国に来たでしょ。各地を回っていろいろ思うことがあったのかもしれないわ」

 痩せた土地や、開墾に不向きな土地も多い。
 そのわりに人が多く、穀倉地帯を大転移で失ってしまった。

「決断した原因は、竜の存在でしょうか」
 竜国が本気になったら国を盗ることは簡単にできてしまう。

 脅威を感じたからこそ、仲良くしようと考えてもおかしくない。

「そういった面もあったでしょうね。急場さえ凌げれば竜国は安定するでしょう。いまはピリピリしている時期だから、刺激しないで恩を売っておけと思ったのかもね」

 何にせよ、ある程度自由に食糧増産ができるのならば、見通しは明るい。

「そういえば、未定ですけど、僕の赴任先が変わると思います」
「カイルダ王国ね」

「なんで分かるんですか?」

「だって、あそこに行き来できる存在でしょう。レオンくんが適任よね」

「……まあ、そうなんですけど」

「そう思って、わたしが赴任できるよう、根回ししておいたから」
「えっと?」

「カイルダ王国で通訳をしつつ、現地の希望者に、この大陸の言葉を教えるのよ」
「…………」
 さすがロザーナさんだ。抜け目ない。

 古代語が話せることを最大限生かせるし、先行きも明るい。
 いま、古代語とこの大陸の共通語を流暢に話せる人は少ないのだから、引っ張りだこだ。

 向こうで通訳として赴任すれば、きっと重宝される。

「というわけでよろしくね、レオンくん」
 ロザーナさんはウインクした。



 パーティが始まった。
 ここからは三々五々、好きな場所で楽しむ。

 とはいっても、身分や役職によって、自ずと集まる場所が分かれる。
 僕は仲間の竜操者たちに合流しようとして……捕まった。

「わたくし、お話を聞きたいわ」
「ものすごく勇敢に戦ったのですってね」
「お聞かせ願えないかしら」

 僕を捕まえたのは、淑女のみなさんだ。
 議員や貴族、領主に連なる者の娘さんたち。

 綺麗なドレスに、バッチリ化粧した顔。
 久し振りに学院生時代――とくに入学式や顔合わせ会のあれこれを思い出してしまった。

 あのときはロザーナさんやリンダが防波堤になってくれたけど、今回は……。

「楽しそうなお話ですわね。わたくしも交ぜていただけるのかしら」
 アンさんが助けにやってきてくれた。

 迫力ある笑みで周囲を牽制しつつ、僕の隣に来る。
 淑女のみなさんは、アンさんの登場に軽く黙礼する。

 なにしろ、技国のお姫様だ。
 しかも今回の駆動歩兵隊の隊長。

 王子のような名ばかりではない。
 最後まで現地で踏みとどまり、月魔獣と戦った剛の者と思われている。

 アンさんとそこらの淑女では、修羅場の数が違う。
 しかも、上品さでは二枚ほど上手。容姿も群を抜いている。

 強さと家柄まで兼ね備えているのだ。
 他の淑女のみなさんが太刀打ちできるものではない。

 気がついたら、僕とアンさんの二人だけになっていた。
 退散したようだ……いや、アンさんが退散させた?

「うふふふ……うまくいきましたわ」
 なにげに黒いことを言っているが、正直助かったので、お礼を言っておいた。

 アンさんとひとしきり話をしていると、アンさんが急に思い出したように手を叩いた。

「そうそう、レオンくんを連れてくるように言われたのですわ」
「僕ですか?」
 なんだろう。

「はい。みなさん、レオンくんをお待ちになっておりますの」
「そうなんですか? みなさんってだれだろ」

 アンさんに連れられてパーティ会場内を歩く。
 すると大広間を抜けて、階段を上がった。

「この上は……もしや」

 このパーティ、上に行くほど身分の高い人たちがいる。
 そして大広間の上といったら、そこにいるのはもう……王族かそれに近い人たちだけ。

「ここですわ」

 アンさんに案内されたのは小部屋だ。
 といっても、僕からすれば全然小さくない。

 調度品の質が一段上がっているのが分かった。
「さあどうぞ」

 僕はアンさんに促された、部屋の中へ入った。

だれがいるんでしょう(すっとぼけ)
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