挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

660/664

659

「やあ、シャラザード。調子はどうだ?」
『うむ。まったく問題ないぞ』

「そうか。それはよかった……だけど完全に治るまでは月魔獣狩りは行けないからな」
『ぬう』
 毎日繰り返される会話。

 僕らが操竜場に戻ってから毎朝おこなわれる確認作業。
 シャラザードの身体に空いた穴は、いまだ塞がっていない。

 出血は止まり、体内からどんどん治療が行われている。
 もう少ししたら翼の修復も始まるだろう。

 竜専門の医師の見立てでは、完治まであと一ヶ月くらいとか。
 それまでは我慢してもらうしかない。

「そうそう、今日は別の話があるんだ」
『なんだ? 食いもんか?』

 月魔獣でなければ食い物と発想するのが、シャラザードらしい。

「月魔獣に関することなんだけど」
『よっし。ついに狩りが解禁か』

「まだって言ったばかりだろ!」
 話を聞いていないのか。
 いや、聞いていてもこういう反応か。

『ではなんなのだ?』
「支配地域の調査に出向いた人たちが帰ってきたんだ。予想どおり、支配種は死亡。支配地域はなくなっていたらしい」

『なるほど。では月魔獣の死体だらけであるな』
「そうみたいだね。多数の月魔獣が行動不能になって死んでいるのが見つかったって」

 これは予想されていたことだった。
 というのも、支配地域がなくなったあと。月魔獣は本能の赴くままに徘徊をはじめ、竜国の村や町に出没し始めたからである。

 支配地域内にいると、体内の月晶石に蓄えられたエネルギーが減らない。
 そのためなのか、月魔獣はあまり支配地域外へ出てこようとしていなかった。

 それがなくなったおかげで、村や町の被害が増えていた。

『我がいれば、すべて破壊したものを』

「身体に穴が空いているんだから、無理だろ。それと、支配種がいた場所だな。旧魔国の首都だけど、あの一帯はいまだ溶岩が噴き出ているらしい。大きな溶岩の海ができているって」

 飛竜が確認したところ、支配種は影も形もない。
 それどころか、首都があったことすら信じられないほど、溶岩が溜まっていたらしい。

 今後何年も、あそこは立ち入り禁止になるだろうと。

 今回発表があったのは、支配地域の消滅だけではない。
 ようやく、王都襲撃についての公式発表もあった。

 内容は事前に僕が聞いていた通り。
 襲撃は、旧魔国民の暴走であると発表された。

 襲撃に加わった者は全員捕まえたか、死んだ。
 ゆえに他の魔国民に対して、何らかの独自制裁を加えないようにと但し書きがついていた。

 襲撃に使われた商人や、襲撃を発見した竜操者がその刃にかかったと付け加えられている。

 どういうことかというと、商国商人や竜操者が死んでいる。これらすべて襲撃者のせいということになった。

 だれが死んだのかは発表がないため、国民も五会頭が二人も亡くなったことを知らない。

 事実は闇の中に葬られるのだろう。
 商国商会は、名誉が守られた分の見返りを竜国に渡さねばならなくなったことを意味する。

 密約ができたと予想されるが、僕はその内容について知らない。
 これから先に起こりうる食糧難についての協力だろうか。

 なんにせよ、王都襲撃の件はこれで終わったのである。

 今回の発表、意図的に外されたものがある。
 襲撃者が使った毒についてだ。

 使われた毒についても詳しいところまで調査が終わっている。
 ハリムが天蓋山脈で群生地を見付けたことからはじまって、どのように使われたのかも、おおよそ判別がついた。

 回収した毒が残っていて、すべて使われなかったのが大きい。
 使われたのは寒地に自生している植物で、毒性については知られていた。

 だが、人の命を奪うものではないことも分かっていた。
 天蓋山脈で発見された植物は、その独特な土地故に強い毒性を持つことまで分かった。

 きわめて鉄分が多く含まれる土地で栽培すると花の色が変わり、花弁も厚くなる。
 天蓋山脈で発見されたのはそういう植物だった。

 ゆえにその情報は秘され、一般に知られないよう、情報は厳重に規制された。
 それらを除けば、町民が納得するだけの内容が発表されたとみていい。

 これでこの件はお終い。
 暗にそう言っているのだと、王都の住民はそれ以上詮索しなかった。
 突っつかない方がよい藪があることを王都民はよく知っているのである。

「明日はパーティか。面倒だな」
『ぬ? どこか行くのか?』
 シャラザードが食いついてきた。

「シャラザードに乗って行くわけじゃないからな」
『ぬう』

 シャラザードはいま喰って寝るだけの生活だ。それで身体を治している。
 言うことを聞かないと、餌をやらないし、月魔獣狩りににも連れていかないと言ってあるので、しぶしぶ従っている。

 シャラザードは、気晴らしにどこか飛んで行きたいのだ。

「王宮でパーティなんだ。お偉いさんも一杯集まるらしいし、面倒だよ」
『ならば、我と脱出すればよかろう』

「そうできたらいいんだけどね」

 国中のお偉いさんが集まるらしい。
 代理の人が来る場合もあるから、本人だけではないだろうけど、今回のパーティは錚々たるメンバーが揃うとか。

 王子と王女も参加するだろうし、他国の重鎮も招かれている。
 つまりアンさんの家族も来る。というか、もう来ていると思う。

 重要人物は飛竜の送迎があるので、王城に直接到着する。
 だから誰が来ているのか僕は知らない。

「けど、パーティは明日だし、もう到着しているんだろうな」
 お偉いさんの目が集まる中で一日過ごすのは疲れそうだ。

 僕は一般人だし。

 けれど、今回の遠征の集大成として出席は義務づけられている。
 生き残った七人の竜操者は、全員招集がかかっていると聞いている。

「まあ、最後のおつとめだね」
『逃げてもいいんだぞ』

 どうやら、まだ僕をダシにしてどこかへ飛んでいきたいらしい。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ