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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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 いまだ〈左手〉の面々がハルイによって拘束されている。

「ねえハルイ。あなたの魔道の腕、あがったのかしら」
「より精密な操作が可能になった。それと距離が少し伸びたかな」

 ハルイの魔道。
 それは『無色の盾』といって、不可視の壁を好きな所に出すことができる。

 いま〈左手〉全員を拘束しているのが、その『無色の盾』の効果である。
 これは魔国で『インビジブルガード』と呼ばれている。

「距離が伸びたのなら、『石眼せきがん』相手でも、なんとかならないかしら」

 目で見たものすべてを石化させる魔道を使うバシリスク。
 竜国での呼び名は『石眼』だが、魔国出身のハルイにすれば、バシリスクの方が馴染みがある。

「視線で石化させる限界距離は、公称で四十メートル。だが私は倍の八十メートルはあると思っている。最低でもだ。もしかすると二百メートルということも考えられる。竜で逃げるときは、距離に注意した方がいい」

 瞳で睨むだけで無機物、有機物関係なく石化させる。視線を合わせなくてもだ。
 ゆえに魔国最強。
 個人の戦力としては、大陸最強とまで言われている。

 レオンが女王に会うために通った秘密の通路。
 あれもまた、バシリスク対策である。
 いかに石化能力があったとして、閉じ込められた部屋から脱出することはできない。

 他にも、女王の逃走路にはすべて魔道や技国のわざで、対バシリスク用の罠が仕掛けられている。

 それだけ竜国はバシリスクを恐れているとも言える。

 ハルイが使う『無色の盾』の最大距離は百十二メートル。
 これだけみると、ハルイの方が有利と考えられるが、石化能力が公称通りとは思えない。

「学院の演習の方に、バシリスクが行くことはあるかしら」
「そっちの方が可能性はあるな。少なくとも、王宮ここよりは生還できる」

「レオンが心配ではなくって?」
「逃げるだけならなんとかなる。息子が闇に潜ると、私でも押さえつけられない。バシリスクに立ち向かえば一瞬で石だけどな」

『闇渡り』で消えられると、ハルイの『無色の盾』でも対象を見失ってしまう。
 同じ理由で、バシリスクの石化も効かないとハルイは考えている。

「うまくすれば倒せるんじゃなくって?」

「このまま精進すれば倒せるだろう。だがいまじゃ駄目だ。バシリスクの体術は、あれを軽く凌ぐ。不意を突いても避けられ、反対に石化されるのがオチだ」

「ならば将来に期待かしらね」
「確実を期すならば、そうだな」

「それとこれは内緒なのだけど、もし『石眼』がここか演習場のどちらかに現れた瞬間、竜操者の大群が魔国の首都を襲う手筈になっているわ」

 魔国にバシリスクがいる場合、何千と竜操者を遣わしても、すべて石にされてしまう。
 だが、竜国に出てきた場合はその限りではない。物量で攻められる。

 バシリスクのいない魔国は、大量の竜で落ちる。
 サヴァーヌはその準備ができていると言った。

「なおさら国から出てこない気がしてきた」

「なら他の十三階梯が出てくるかしらね」
「可能性はある。そもそも魔国は大味な魔道が好まれる。精密な操作よりも大規模な魔道を伸ばす傾向がある」

月魔獣つきまじゅうを相手にするなら当然よね」
「そうだ。それゆえ、対人に特化した十三階梯の活躍の場がない」

 竜国の民は、大規模な爆発をおこしたり、地割れをおこしたりするのが魔道であると考えている。

 ある意味それは正しいのだが、月魔獣には効果がなくても、人相手に無双できる魔道も存在している。
 それを極めたのが、十三階梯である。

「ねえ、ハルイ。せっかくきたのだし、ゆっくりしていくでしょ」
「さすがにこの守りじゃ心配になってきた」

「だったら語り合いましょう。三年ぶりに」
「足元はどうする?」

「ハルイがいればいいわ。下がって」
「…………ッ!?」
 ハルイの足元から、小さなうめき声が聞こえた。

「じゃ、あの頃に戻って、ねえ、思い出すわ。私がまだ幼かったころの……」

 すべての〈影〉が先代の王に仕える中、サヴァーヌに絶対の忠誠を誓ったのは、たったひとりだけ。
「さあ行きましょう」

 王女だった頃の瞳でハルイを別室にいざなった。


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