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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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「おはよう、シャラザード。調子はどうだ?」
『余裕だな』

 いつもと変わらないシャラザードの答えに、僕は嬉しくなった。
 強がりを言えるならば、大丈夫だろう。

 昨日アークに聞いた。
 僕ら同期生二十七名のうち、四名がもう鬼籍に入っていた。
 原因は、無理な出撃と、疲労による判断力の低下。

「大転移が終わるまで、あと何人同級生を失えばいいのだろう」
 そう言ってアークは、無理な笑顔を作った。

 シャラザードの傷は言動とは裏腹に、いまだ塞がっていない。
 熱線が体内を貫いたから、身体の中から治しているのだろうとは、竜を専門に見る医師の言葉。

 命に別状はないし、このまま休ませつつ様子を見るのがよいとのことだった。

「シャラザード。おまえは来月まで、飛行禁止な」
『なぬ? では我はいつ月魔獣を倒しに行けばよいのだ』

「完治すれば倒し三昧だぞ。だけど無理すると、また治療期間が延びる。そうしたら、何ヶ月もここにいなきゃならない。どっちがいい?」

『うーむ。そ、それはあれだ、きゅ、究極の選択というやつか?』
「いや、普通に治せよ」

 喰って寝ていれば治るんだから、そこまで深刻に考える必要はない。

『しかしだな、我とてここにいては運動不足にだな……』
「じゃあ、今日は城に呼ばれているから、僕はいくよ」

『では我が送って……』
「馬車でいくからいいよ。シャラザードは早く傷を治すんだよ」

『いや、主よ。我はもうピンピンしておるぞ……って、主!? どこへいくのだ』
 シャラザードが騒ぐが、それを無視して僕は竜舎を離れた。



 王宮に行くと、すでに何人かの竜操者たちが集まっていた。
 怪我が酷い者以外は、今日ここに集まっているはずだ。

「レオン先輩。今日は女王陛下との謁見ですよ、凄いです。緊張しますね」
「そうだね。アンネラの傷はもう平気?」

「バッチリです」
「そうか、良かった」

 アンネラは元気いっぱいだ。
 僕らには、昨日のうちに、真新しい儀礼用の服が用意されていた。

 僕もアンネラも王宮内で着替えたので、いまは見違えている。
 この礼服、月戦隊のマークが刺繍されている。

 今後、僕らだけは「これ」を付けることが許される。
 アンさんたち駆動歩兵のみなさんもだ。
 僕らのとは若干違うが、やはり専用の記章が用意されている。

 他にも支配種討伐に参加した兵、資金を供出した商人たちもまた、それを看板にすることができる。
 商会から少なくない額の出資があったようなので、それで元を取ることができるだろう。

 ちょうどアンさんがやってくるところだった。
「レオンくん、似合っていますわ」
「先に言われてしまいました。アンさんもそのドレス、とてもよく似合っていますよ」

「うふふ……ありがとうございます」
 アンさんは薄水色のドレスを着ていた。

 アンさんだけはドレス姿だ。
 月戦隊駆動歩兵を表す腕章を付けているが、どちらかといえば、技国代表の意味合いが強いのかもしれない。

 支配種を討伐したあの日から、すでに半月以上が経っている。
 そろそろ支配地域にいた月魔獣が動かなくなる頃である。

 大規模な調査団が派遣されるだろうと、操竜場の兵士たちが噂していた。
 もちろん僕らはもう関係ない。というか、シャラザードもターヴェリも動ける状態ではない。調査は他の人にやってもらおう。

 僕らが雑談をしつつ控えていると、一列に並ぶよう促された。
 そろそろ謁見が始まるらしい。

 まず現れたのは、各都市の代表者たち。
 竜国運営会の重鎮たちだ。

 竜国議会の議員以外にも、竜国軍部会や竜導教会、操竜会のお偉方が顔を揃えている。
 最後に登場したのは、言わずと知れたサヴァーヌ女王だ。

 女王陛下を全員が頭を下げて、出迎える。
 謁見の儀が始まった。

 謁見は粛々と進み、退屈しかける頃になってようやく終わりを迎えた。

「十日後にパーティを催します。それまでにはいろいろと片付いているでしょう。ではそのときにまた」
 その言葉によって、謁見は終幕となった。

 いろいろ片付く……つまり、支配種がいた地の調査が終わったり、王都襲撃事件の発表が行われたり、僕らへの聞き取り調査が終わることを意味している。

 もしかしたら、女王陛下の引退……もあるのかもしれない。



 その日の夜。
 僕は久々に黒衣に着替えて、王宮へ向かった。
 昼間とは違い、女王陛下の元へ直接である。

「……なんで、感知結界が一新されているんだよ!」
 あやうく引っかかるところだった。

「よく来たわね、レオン」
「この姿では、お久しぶりとなります、女王陛下」

「堅苦しい挨拶は嫌よ。普段の調子でね」
「はっ、ありがとうございます」

 女王陛下は相変わらずだ。
 僕は深く頭を下げ、感謝の意を示した。

「魔国の残党が中心となって、襲撃が行われたと発表するつもりよ」
 王都襲撃の落としどころの話か。

「商国の関与はよろしいのですか?」
 インパクトとしてはそっちの方が大きいし、今後を考えたら有益ではなかろうか。

「敵対するより、懐柔……いえ、弱みを握っておきたいの。実行犯以外は、不問に付すことにしたの」
「…………」

 五会頭の多くが消えたいま、商国商会をまとめる者はそう多くない。
 その中へ、「分かっているぞ」と脅しをかけつつ、表だっては何も言わない。

 無言のプレッシャーを与えつつ、いいように使うようである。
 具体的には、金と物資をせびるとかだろう。

「試算しても、再来年には食糧が足らなくなりそうなのよ」
 物がなければいくら金があっても揃えることができない。

 食糧増産には、時間も金もかかる。
 商国と敵対するよりかは、首根っこを掴むことにしたようだ。

「やはり、食糧は足りませんか」

「肥沃な土地は少ないのよね。楽園の増産をアテにしている現状かしら。各町の領主も秘かに溜め込んでいるみたいだから、それを吐き出させる手もあるのよね」

「国が割れそうな気がします」
「そうなのよね。……というわけで、レオンには楽園に行ってもらうことになるかもしれないわ」

「はい?」
「せっかく増産に乗り気になっているのですもの。反対派が暗躍しはじめたら大変よね」

 なるほど、楽園で町の治安を守れということか。
 父さんが現役復帰したいま、ソールの町は安全。

 いまのところ僕の存在は宙ぶらりん。
 ちょうどよいと思ったのかもしれない。

「分かりました。シャラザードの怪我が治り次第、向かいたいと思います」
「そんなに急ぐ必要もないのよ。しばらくは王都で仕事もあるのだし」

 王都での仕事……パーティとかパーティとか、パーティとかだよな。
 どちらかといえば、そっちの方が面倒だ。

「分かりました。必要な時期が来たら、向かいたいと思います」

 たしかに楽園での警備は必要。
 食糧を燃やされたりでもしたら大変だ。

 楽園に住む人々がみな良い人ばかりとは限らない。
 何かあってからでは遅いというのは僕もよく分かる。

 でもそうすると、シャラザードが退屈するかな。
 月魔獣を狩れないと駄々をこねる可能性がある。

「そういえば、楽園との行き来は、あの穴だけなのですか?」
「そうね。当面はそのつもり。その方が便利なのよ」

 楽園は、属性竜しか越えられないほど高い山に囲まれている。
 個人的に繋がりを持とうとしても、山脈を越えられないのでは意味が無い。

 しばらくは女王陛下の独占状態だろう。

「それじゃ、レオン。またパーティでね」
「ははっ」
 その言葉と一緒に、僕は闇に溶けた。

謁見も済み、物語がもうすぐ終わりそうです。


さて『竜操者』の書籍ですが、レーベル閉鎖に巻き込まれて続巻が出ない状況です。

現状として九月末に出版契約解除が終わりました。
十月より出版先を探して、編プロの方や他出版社様と協議しました。

調べて貰ったところによりますと、現在、レッドライジングブックス様の書籍は取り次ぎから回収されたわけではなく、いまだ在庫として取り次ぎ元に残っている状態だそうです。(十月初旬)

2巻から出すというのは出版社としてはありえない状況らしく、1巻を出すにも取り次がまだ在庫を持っている状況。同じタイトルの本を出しても嫌がるだろうと。

出版社様から提案していただいた方法として、合本にするか、タイトルと内容を変えてのものでした。

合本の場合、二章までで約34万字。なかなかの分量です。そもそもレーベル外の出版になります。ぼっちですね。
内容を半分くらい変えて出すことも考えましたが、約150万字もある本編だと、巻が進むにつれて、修正が大変になってきます。(タイトルだけ変えて中身はそのままというのはやりたくないので)
あとは取り次ぎと版元の在庫がなくなる頃(たとえば1年後)に出す感じでしょうか。

上記のような感じで、色々と難しい状況です。私自身、納得できる形で出したいと思い、現在模索中です。
今後、話がまとまりましたら、お話したいと思います。
慌てず行こうかと思っています。

1巻をご購入いただいて、2巻を楽しみにされていました皆様、そういうわけで大変申し訳ございません。
現状お話できるのは、こんな感じになります。

ではもう少しで終了ですね!
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