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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 王都までの道のりは長い。
 シャラザードで飛べばひとっ飛びだが、いまは怪我を治すのが先。

 それにアンさん以下、駆動歩兵のみなさんや、竜国兵のみなさんもいる。
 竜操者以外は馬車に分乗して僕らの後をついてくるので、僕ひとりだけ先に帰るわけにもいかない。

「まあ、こんな旅もいいかな」

 最近は遠出するときは必ずシャラザードに乗っていたから、こうやって周囲の景色を見ながらのんびり進むこともなかった。

「おお、見えた。王都だ」
 先頭の誰かが言った。

 すると、それが伝播したのか、皆が「ああ」とか「おお」とか感嘆の声をあげる。
 僕ら王都に近づくと、何体かの竜がやってきた。

「おかえりなさいませ。王都ではパレードの準備が整っております。このままどうぞ」

 パレードだ。
 事前に知らされていたけど、やっぱりやるのか。

「分かりましたとお伝えください」
 ソウラン操者が代表してそう答える。

 パレードは『竜の背』と呼ばれる王都の大路を練り歩くものだ。
 大型竜でも通れるようにと、道幅も拡張済み。

 こういうときに使わなければ、いつ使うのだという感じだろう。

 僕らは促されるまま、その『パレード』とやらを行った。

 人出はすごかった。みんな大歓声で僕らを迎えてくれた。
 一方、僕らの姿は……まるで敗残兵のようだった。

 十日やそこいらでは、怪我も癒えるはずもない。
 折れた骨はくっつかないし、包帯だらけの行列だ。

 シャラザードやターヴェリだって穴だらけ。
 激戦だった事は、想像に難くないだろう。

 一通り大路を練り歩いたあとは、王城で帰還式がはじまる。
 といっても怪我人が多いので、簡略化したものだ。

 王子が僕らを褒め称え、労ってくれた。
 考えてみたら、これ全部王子の手柄になるわけだ。名目上は総代表だし。

 僕らは王子に帰還を伝え、一応の解散となる。
 パーティは企画されているらしいが、まるで敗残兵のような僕らは、身だしなみを整える時間が必要。後日、盛大な催しが行われるらしい。

 帰還式を終えたあと、僕ら竜操者は操竜場へ向かう。
 アンさんは城に残るので、一時のお別れだ。

 アンネラは学院へ向かうらしい。
 そういえばまだ、学院生だった。

 その他、みな帰るところがある。
「みんな御苦労様。これで解散だ」
 ソウラン操者の言葉で、ようやく僕らは解放された気分になった。



「レオン、話を聞いたよ。大活躍だったようだな」
「アーク! 久し振りだな」

 操竜場でシャラザードと別れ、宛がわれた部屋に向かったら、アークがいた。
 アークは学院を卒業後、ヒューラーの町でずっと月魔獣から人々を守っていたらしい。

「おれも月戦隊に応募したんだけど、跳ねられてしまってね」
「たしか規定で、新卒は駄目だったはずだよね」

「そうなんだよ。規定に達しないということで、書類すら受け取ってくれなかったんだ」
「学院の新卒は実績を積んでから出直せってことだよね」

「先輩の竜操者の中でも、抽選に落ちたひともいたらしいから、新卒じゃなくても、無理だったかもしれないが……それよりおめでとう。またひとつ歴史に名を刻んだな」

「そういうつもりはないんだけど、シャラザードがいるんだ。やるべきことをやらないとね」
「かくして世界は救われた……か。そういえば、知っているかい? 女王陛下の私設竜隊のこと」

「ん? なんだい、それは」
「王都が危険にさらされたとき、どこからともなく現れた竜の一団があったんだ。実はそれ、女王陛下が秘かに組織していた竜操者の軍隊だったんだ。それが颯爽と王都に現れて、侵入者たちを蹴散らしたというわけさ」

 アークが興奮気味に言った。
 話からするとそれは、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)のことではないだろうか。

「そうか、それはすごいな」
「だろっ? おれが前に言ったのを覚えているかい? ヒューラーの北東にある旧王都の話を」

「閉鎖された旧王都に出入りする竜がいるって話だっけ?」
「そう。女王陛下の私設竜隊はそこを根城にしていたというんだ。見つからないわけだ」
 そうか、アークもついに知ったわけか。

「長年の謎が解けて良かったな」

「ああ、やっぱり覚えてくれたんだね。そうなんだよ、やっぱりあそこに何かあると思ったんだ。しかもあそこは陰月の路の中にあって、魔国とも近い。女王陛下はいろいろと考えていたんだなと思ったわけさ」

 王都侵攻の噂は向こうでも聞いている。
 少なくない被害が出たと聞いたが、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)が出張るほど切羽詰まっていたようだ。

「なるほど、本当にそうだね。……それでアークはなぜ王都に?」

「ちょっと無理が祟ってね、おれの愛竜が怪我をしてしまったんだ。しばらく療養が必要ということで、こっちに来たのさ。ここならリハビリもできるからね」

 ついでに僕にも会えると思ったらしい。
「そうだったのか。竜は元気なのかい?」

「ああ、怪我はもうすぐ完治する。少しずつ慣らしている最中かな」

 結局、残った者も遊んでいたわけではないのだ。
 月戦隊が出て行ったあとの竜国を必死に守ってくれていた。

「なら今日は久し振りに話すか。つもる話もあるしさ」
「おれはいいけど、レオンは大丈夫なのかい?」

「疲れは残っているけど、怪我はしていないからね」
「よし、そういうことなら、久し振りに旧交を温めようじゃないか。おれが今まで何をしていたのか、話してあげよう」

 こうして俺とアークは、本当に久し振りに、昔と変わらない馬鹿話に興じた。

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