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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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「シャラザード……あれは?」
『しばし、休ませてくれ……ちとキツい』

 シャラザードの身体には、多くの穴が空いている。
 一番酷いのが翼だ。片側だけで八つくらい空いている。
 これでは飛ぶのも一苦労だろう。

 シャラザードは地面に降り立つ。その姿も、まったく力が感じられない。
『少し休めば回復する……ほんの少しだ』

 声だけ聞いても分かる。シャラザードは相当無理している。

 ターヴェリがいまだグッタリとしているのを考えれば、よく持っている方だと思う。
 それだけ支配種の遠距離攻撃が、凄まじかったのだろう。

 支配種が外装を脱ぎ捨てたのは、あれを撃ち出すためだったのか。

「いや……本当にそうか?」

 支配種の身体はほっそりした。
 すっきりした外見だが、どちらかといえば貧相といった方がしっくりくる。

「そして赤い」
 真っ赤だ。それだけじゃない。支配種の足下の周辺も真っ赤になっている。

「くるぞ!」
 支配種が、全方位に向かって遠距離攻撃を放った。
 撃ち出した光の数は、百や二百じゃきかない。

 あれほどの攻撃を一度に放てるのか。
 僕は戦慄するとともに、不思議に思った。

「なんで僕らを狙って撃たないんだ? いや、それよりも支配種の身体がさっきより潜っている?」

 見たら、足元が沈んでいた。
 沈んだのはほんの僅かにみえるが、支配種の大きさからすれば、百メートルくらいは潜っているはずだ。なぜ支配種が沈むんだ?

『我の攻撃でできた穴は、深いぞ』

 僕の疑問にシャラザードが答えてくれた。
 そういえば以前も属性技を地面に撃って、底が見えないほど深い穴を空けたっけか。

「さっき、アンネラとソウラン操者も同じ事をしていたよね」
『うむ。あの穴は、我だけが空けたものではない』

 ターヴェリは暴風の渦で空へ巻き上げた。あのとき、かなりの土砂を抉っていた。
 ソウラン操者は文字通り、岩をも溶かす炎を真上から垂れ流した。

 三体の属性竜の攻撃だ。どれだけ深い穴が空いたのやら。
 支配種はそこにはまり込んだのか。

 支配種が屈んだ。
「ヤバい、もう一発くるぞ」
 激しい閃光とともに、遠距離攻撃がきた。

 地上にいる僕らに当たるものは少ない。
 それでも、支配種の身体が沈んだのと、全方位に撃ち出していることから、何発かは当たっている。

 シャラザードの身体に穴が増える。
「このままじゃ駄目だ。シャラザード、戦えるか」

『無論よ。我はいつでも戦える』
 強がりであることは分かっていた。だが、その言葉が正直嬉しい。

「行こう、シャラザード。僕らはいつでも一緒だ。支配種をぶっ倒そう!」
『主よ、あい分かった!』

「おまえの力を僕に見せてくれ!」
 頭を地面に付けていたほど憔悴していたシャラザードだったが、僕の檄が届いたのか、大空に飛翔をはじめた。

 といっても、上がって下りるだけ。
 高く上がった勢いのまま、支配種に体当たりするしかなかった。

 穴だらけの翼では、他に動けないのである。

「いけええええ!」
『ぬぅおおおおおお!!』

 乗せられるのは体重と気合いだけ。
 シャラザードは支配種の上に倒れ込むようにしてぶつかった。

 ――ピシィ

 何かが裂けた音がした。

「ん?」

 ――ピシィ……ピシィ

『ぬ!?』

 ――ピシィ、ピキピキッ……

 鉱石が裂けるような音がして、支配種の足下に亀裂が走った。
 そして地中から、真っ赤なものがせり上がってきた。

「シャラザード、空だ。飛べ!」
『ぬうん!』

 間一髪。
 支配種の身体が大きかったことが幸いした。

 土中から現れたのは、地中のはるか下にあると言われる溶岩。
 火山の火口でしか見られないアレだ。

 それが……

 ――ドッドッドドドドドドド

 まるで噴水のように噴き上がってきた。

 支配種の身体を踏み台にして、間一髪上空に逃れたものの、下から延々と吹き上がってくる熱風に、意識が飛びそうになる。

 シャラザードがやっと旋回し、下を見ることができた。

「支配種が……沈んでいく」
 全身を真っ赤にさせながら、支配種の身体は徐々に、徐々に、土中へ飲み込まれていった。

 暴れて遠距離攻撃を四方八方に撃ち出すが、それで溶岩が消え去るわけではない。
 僕らが見ている中で、支配種の身体は半ば以上、溶岩に飲み込まれてしまった。

『溶けているな』
「そうだね……」

 支配種の身体は溶岩に触れたところから、少しずつ溶けていた。
 暴れる力を無くしたのが、全体の四分の一ほどになった支配種は、そこで動きを止めた。
 あとはただ、飲み込まれるだけである。

 首まで溶岩に浸かったあとは、ゆっくりと消えていった。

 ――とぷん

 最後に一度、大きな泡が爆ぜた。

「……終わった?」
『……ようだな。我の体当たりが効いたのだ』
「いや、直接の死因は溶岩だろ」

『何を言う、あれを誘発させたのが我ではないか』
「そうなのか? どうなんだろ」

 誘発させたというのなばら、アンネラやソウラン操者の攻撃もそうなんじゃなかろうか。
 何にせよ、支配種は大地によって倒された……って、えええ!?

 支配種が消えた場所から噴火した。
 大地が大爆発を起こし、溶岩が後から後から噴き出してきた。さっきの比ではない。

「シャラザード、拙い。これは本格的に拙い。逃げよう!」
『うむ』

「……待って!」
『なんだ?』

「アンネラやソウラン操者がまだあそこにいる。助けないと」
 二人は動けないのだ。
 だが無理だ。自分で言っていて、どうしようもないことがわかる。

 満身創痍のシャラザードに、動けない属性竜を運ぶことは不可能だ。

『よし』
「なにがよしなんだ?」


 ――しゃげごぉおおおおおおおおおおおん(オマエら、付いてこーい)!


 耳をつんさく大轟音。
 ほぼ意識がないはずのターヴェリと、さっきまで痙攣していた青竜が、シャラザードのひと声で立ち上がった。

『逃げるぞ』
「あっ、ああ……逃げよう」

 背を向けた僕らの後ろでは、超巨大な噴水ができていた。
 真っ赤な溶岩が水たまりのように広がっていた。

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