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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 僕らが支配種を追い詰めていくたびに、支配種は新たな力で押し返してきた。
 僕とアンネラが人竜一体の技を使ってすら、支配種を絶命させるには至らなかった。

 ターヴェリの属性技によって、支配種の身体がグルグルと回る。
 足下に空いた穴の中へ再びねじり込まれていった。

 ようやく脱出したと思ったのに逆戻り、そう思ったかもしれない。
 支配種にそんな感情があればだが。

 ターヴェリの放った技はさらに強まり、暴風となって激しさを増し、支配種の身体は深く潜っていく。

 完全に支配種の身体が土中に見えなくなって、ようやく暴風が終わった。
 風が収まると、空中に巻き上げられていた土砂が降り注ぐ。

「やったか?」
 ソウラン操者もアンネラも……そして僕も期待に満ちた目をそこに向ける。
 地面に空いた巨大な穴に支配種の身体は完全にはまり込み、降り積もった土砂によって見えなくなった。

「レオン先輩、これは……倒したんでしょうか?」
「分からない……もし倒せてなくても、あの状態から抜け出すのは苦労しそうだ。その時は全てを使ってでも……」

 言い終わる前に地面が揺れた。

「気をつけろ! 支配種はまだ生きているぞ」
 上空高くにいるソウラン操者が警告を発した。
 上から何か見えたか?

 地面が揺れ動いている。
 だが、先ほど身体の半身が潜ったときも、支配種は抜け出すのに相当苦労していた。
 完全に身体が隠れてしまえば、身動きができない。

 それはどんな生き物だって同じだ。
 土中から抜け出す方法は、少しずつ這い上がるしかない。

「支配種が首から上を出したときが狙い目だ。最悪の場合、合体技で首を狩るぞ、アンネラ」

「分かりました! でも……レオン先輩とシャラザードさん、あの技を使うと、その後は使いものにならなくなるんじゃ?」

「そんなこと言っている場合じゃない」
「そうですね、分かりました。ターヴェリさんもいいですか?」

『もちろんだよ』

『あれをやるのか……とほほ』
 シャラザードだけが微妙にテンションが低い。
 それでもやらなければならない。

 大地の揺れは続く。

「レオン先輩……いま攻撃しちゃ駄目なんでしょうか」
「たぶんだが、効かないぞ」

 ターヴェリが巻き上げた土砂が穴を塞いでしまった。
 暴風によって支配種が穴の底深くにねじり入ったのと同様、巻き上げられた土砂がみな上に落ちてきたのだ。

 支配種がいた場所にはこんもりとした山が出来ている。
 あれを攻撃したところで意味はないだろう。

 大地の鳴動は次第に大きくなる。
「来るぞ!」
 ソウラン操者が叫んだ。

 大地はもはや限界だ。
 爆発しそうなほど膨れあがった。

 ――ドッ

「えっ!?」
「ああっ!?」

 ――ゴォーン!

 大爆発がおこった。
 爆発音と一緒に、土砂や石、岩がはじけ飛んできた。

 高速で飛んでくる石が竜の身体に当たるが、シャラザードを含め、属性竜にダメージはない。
 困ったのは、はじけ飛んだ土砂で視界が奪われたことくらい。

「きゃぁっ!」
「アンネラ?」
 何が起こった?

 もうもうと微小な土砂が巻き上がり、視界がまったく効かない。

「うわぁああ」
「ソウラン操者?」
 何なんだ?

 確実に何かが起こっている。
 両方とも、尾の届く距離にはいなかった。
 衝撃波ならばこちらにも届くはず。

 一体何がおきたというのだ。

 周囲一面に土埃が漂い、視界がなかなか晴れない。

「シャラザード、一旦ここから出るぞ」
『どこへいけばよいのだ。まったく見えんぞ』

「上だ。上に行こう」
 ターヴェリが無事ならば、そのうち風で視界を晴らしてくれる。

 支配種はこちらが見えている。
 急いで土埃の上に出ようと思ったとき。

『ぐわっ!』
「ああっ!」

 数条もの光がシャラザードの身体を貫いた。
 もし移動していなかったら、穴だらけになっていたところだ。

「いまのは支配種の遠距離攻撃か? だけど今、同時に来たぞ」

『主よ、これは少しばかり拙いかもしれん』
 上昇途中のシャラザード。声が弱々しい。

「どうした? ……って、おまえ」
 人竜一体が解けてしまった。

 あれは合体しているだけで多くのエネルギーを使う。
 枯渇すれば自然と解けるが、まだそんな時間になっていない。

「おい、シャラザード! どうしたんだ?」
『身体に穴が空きすぎたようだ』

 上昇しきれず、シャラザードの身体が沈む。
『翼にも多くの穴が……身体もちとヤバい』

 錐揉み状にシャラザードが落下する。
 こんなに弱々しいシャラザードは、初めてだ。

「おい、シャラザード! このままだと地面に!」
『大丈夫だ……いま……』

 途中で体勢を立てなおし、空中で止まる。
 それだけで全神経を集中させているのが分かった。

 そのとき、突風が吹き荒れた。
 ターヴェリが風を起こしたのだ。

 強いものではない。どちらかといえば、弱々しい。
 それでも大小の竜巻が、周辺の土砂と土埃を遠くに追いやった。

「ああっ!」
 晴れた向こうに見えたのは、巨大なクレーターの中にいる支配種の姿だった。
 爆発で周辺の土砂をすべて跳ね飛ばしたらしい。足下にも多くのひび割れがある。

 支配種の身体が変わっていた。以前よりほっそりしている。

 もちろん痩せたわけではない。
 装甲……つまり鎧のように纏っていたものがなくなったのだ。

 これまであの厚い防護鎧のような外装をどう突き破るのか悩んでいたが、支配種は自らそれをはぎ取った。だが……。

 ――ジュッ

 背中から幾条もの光を放出し、地に落ちた青竜やターヴェリを貫く。

「あれを背中から出せるだなんて……いや」

 遠距離攻撃があるのは知っていた。僕らには及びも付かない方法で遠くにいる竜を発見するのも知っている。

 近距離では、避けきれないほど速い尾の攻撃もあった。
 中距離では、これまた避けられない衝撃波が放たれた。

 だからだろうか。これ以上の攻撃はないと思っていた。
 そうではなかった。支配種は、防御を捨てると、背中からも光の束を打ち出せたのだ。

「あれをどうやって攻略すればいいんだ?」
 ターヴェリは力を使い果たしてグッタリしている。
 身体のどこも動いていない。生きていると思うが、確認するのが怖い。

 青竜もそうだ。ターヴェリより遠くに落ちたため、一応動いてはいる。
 地面で震えているだけのような状態だが。

『拙いの……我も動けん。あやつの側に寄ることすらできるかどうか』
 シャラザードが弱気なことを発言した。

 だがそれを咎めることはできない。
 僕でさえ、どう戦っていいか分からないのだ。

「なんて奴だ……あれをどうやって倒せっていうんだ?」
 アンネラやソウラン操者をこれ以上戦わせるわけにはいかない。ではどうすればいい?

 あの赤い支配種をどうやって倒せば……。

「………………ん?」
 赤い?

 巨大なクレーターの下にいる支配種は、それはもう真っ赤だった。

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