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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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○竜国 王都

 王城のいくつかの場所で、戦いが行われていた。
 忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)が城に入ったことで、侵入者たちは炙り出され、見つかったそばから狩られていく。

 侵入者狩りは順調だった。
 だが、忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)や〈影〉にとって予想外のことが起きていたとすれば、それは侵入者の数であろう。

 王都の町は常に監視され、身元の怪しい者が大量に入り込めるわけがない。
 監視の目をかいくぐるだけでも一苦労なのである。

 たとえ潜入に成功したといっても、町中で打ち合わせをするのは難しい。
 多数が集まれば、どうしても途中で発覚してしまう。

 王都の町をまるで自分の庭のようにしている〈右手〉も多い。
 夜中にこそこそと出歩いたところで、騙しおおせられるわけがない。

 では今回の侵入者――城にいる彼らはだれなのか。

「くそっ、魔国人か」
 だれかが呟いた。
 侵入者の多くは魔国人であった。

 彼らは国を失い、難民となった。多くは散り散りになった。
 そしてどこかの町に吸収されていった。

 そこからあぶれた者たちが、こうして復讐しにやってきたのである。

 忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)は彼らを放って王宮に向かうわけにはいかない。

 一方、魔国人たちはというと、囮に使われたことは重々承知していた。
 それでも竜国に一矢むくいるために、こうしてやってきている。

 もともと戦いの中でしか生きられない者たちである。
 暗殺者、破落戸、兵士崩れ、犯罪者等々。

 彼らはここで戦うことを自らの意志で決めた。
 すべては竜国に混乱をもたらすため。

「「確実に仕留める!」」

 忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)と襲撃者の双方が、同じ思いを抱いていた。

 戦いはまだまだ続く。



○竜国 王宮

 王宮内で兵士と戦っている者は、王宮の外で戦っている者とは少し違う。
 実力を買われて、雇われた者たちである。

 兵を蹴散らしつつ王宮内部へ深く侵攻し、女王を倒す。
 その命を受けて、彼らはただひたすらに奥を目指す。

 彼らは立ちふさがる兵士を蹴散らし、突き進む。

 襲撃者の一部は、最奥部にまでたどり着いた。
 それは王宮の上層階にある一室。

 その先には女王の居室が存在している。

「やれやれ、ついにここまで来たか」
 クリスタンは通路に立つ襲撃者を見据えた。

「意外と早かったですね」
 シルルが一歩下がる。一緒にいては足手まといになると考えたのだ。

「仲間を置いて、ここまで来たのはわかるが、足止めできなかった兵が頼りないのか、彼らが優秀なのか……」

 立っている姿を見るだけでわかる。
 十分な鍛錬を積んだ者たちだ。

「ここはおれの出番じゃないな」
 クリスタンも脇に寄る。

 とてもではないが、クリスタンが勝てそうな相手ではない。
 空いた場所に、女王を守る〈左手〉がはいる。

 襲撃者たちはもちろん引くつもりはない。
〈左手〉もまた、絶対にここを通すつもりはない。

「「殲滅させる!」」

 両者の戦いが始まった。

 戦いは静かに始まり、静かに移行していく。
 当初、〈左手〉有利で進められた戦いだったが、敵方の増援が加わることで均衡は破れていく。

 王宮を守る兵士たちもどこかで戦っているが、それでも取りこぼしが出てきている。

「ねえ、ちょっと良くない雰囲気じゃないの?」
「……そうだな。さすがに想定外?」

「なに他人事みたいなことを言っているのよ。『死神』はどこに行ったの?」
「知らないよ。お義父さんの番人じゃないからね」

 シルルは軽口を叩くクリスタンを軽く睨むと、「しょうがないわね」と参戦することにした。
〈右足〉である彼女にとって、戦闘は下策なのだ。でもやらねばならない時もある。

「……おれは戦えないからね」
 クリスタンは生粋の〈右足〉。戦闘はからっきしである。

「……しかし、お義父さん。ほんとうにどこに行ったんだ?」
 戦闘の邪魔にならないよう、身を隠しながら、クリスタンはハルイの行方を気に掛けた。

 こんなときに一体、どこへ行ったのかと。



○竜国 王宮 屋上

「……来たか」
 遠くからやってくる中型竜の姿を認めて、ハルイはしゃがんでいた姿勢から、伸びをするように立ち上がった。

「待ちくたびれたぞ」
 まったく……とハルイは呟き、首をならす。

 ハルイはいま、王宮の屋根にいる。
 王城への侵攻が確認され、王宮内に侵入者が入ってきたときから、ハルイは〈影〉のもとを抜け出して、ここにきていた。

「竜避けの結界が張ってあるから、戸惑っているな」
 竜操者が誤って王宮の直上を通過しないよう、王宮周辺には竜が近づくと嫌がる音を出す結界が張られている。

 進むのを嫌がる中型竜を無理矢理押さえつけっようとするのが見えた。
「次は物理結界が張ってあるんだが、さてどうするかな」

 もちろん中型竜がその気になれば結界など、簡単に破れる。
 その場合、術者に結界が破られたことが伝わってしまう。
 それでも構わなければ、突破してくるはずである。

 ハルイの予想通り、中型竜は見えない壁に弾かれたが、二度目は勢いを付けて突破してきた。
 力業で物理結界を破ったのである。

「さあて、何がくるかな」

 今回の襲撃方法は、単純極まりない。
 王宮内の戦力を外に出させてから攻め入ってくる。

 いま下からやってくる連中ですら囮。
 本命は別にあるとハルイは考えていた。

 それゆえ、ずっと屋根の上で待っていたのだ。

「見張りや護衛の目を別のところへ向けたんだ。馬鹿正直に攻めてくるとは思ってないさ」

 屋根の上にひとり立つハルイ。
 中型竜の背から、何人もの人たちが落下してくるのが見えた。


『死神』と呼ばれた男の戦いが……始まる。

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