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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 支配種の身体が大地に半ば以上沈んだ。
 どれだけ深い穴ができたのやら。

 シャラザードの雷が大地を穿ち、ターヴェリの風がそれを広げた。
「とどめは、火炎旋風だろうな」

 燃えさかる炎の渦に、深く穿たれた大地が溶け出したのだ。
 属性竜三体でつくった穴と言える。

「シャラザード、今のうちに畳みかけるぞ」
 支配種の背中は大部分が土中に隠れている。
 あれでは衝撃波を放つことができない。

 しかも穴から抜け出すことに必死で、遠距離攻撃を撃ってくる気配はない。

『うむ。ついにやるか、グフフ』
「ああ、準備はいいだろう?」

『もちろんだとも』
 シャラザードが元気よく答え、すぐさま飛翔した。

 支配種討伐の切り札。
 作戦の第三段階。人竜一体の技だ。

 僕とシャラザードが魂の状態で繋がり、通常以上の力を発揮する。
 基礎能力が引き揚げられ、防御力も増す。

 ただし、人竜一体が解けたあとはやたらと疲れるし、そうそう長い時間合体していられない。

 ここぞという切り札にしか使えない技だ。
 しかも合体するにはタメが必要。
 だがいまなら大丈夫。

 僕はシャラザードを深く理解するために目を閉じた。
 互いの魂が引かれあい……どちらかというと、シャラザードの大きな魂に僕の魂が引っ張られる感じだ。

 それは外見にも現れる。
 シャラザードの身体に一体化するように僕が隠れ、見えなくなる。
 これで防御のときも、背中の僕を気にする必要がなくなる。

「さあシャラザード、行くぞ!」

 シャラザードが軽く羽ばたいただけで、トップスピードが出た。
『ぬぉおおおお!』

 穴から出ようともがく支配種に、シャラザードの爪が突き刺さる。
 そのまま支配種の身体の一部をもぎ取ったまま、空中高く飛び上がった。

 僕らはこれを繰り返し、支配種の外装を削る。

「ターヴェリさん、わたしたちも行きますよ」
『そうかい。だったら、やるとしようかね』
 アンネラとターヴェリもまた、人竜一体の体勢に入った。

 戦いに決められた手順はない。
 そのとき最善と思う手を打つしかないのだ。

 支配種が穴に嵌まった今こそチャンスと僕は考えた。
 僕らが人竜一体をしている間に、ソウラン操者はまと役を引き受けてくれた。

 支配種に近づき、注目を集める。
 ソウラン操者が支配種の目を集めてくれるからこそ、僕は安心して力を溜められる。

 ソウラン操者があまり遠く離れると、支配種の目がこちらに向くかも知れない。
 ゆえに、ソウラン操者は近距離で支配種を翻弄する。
 そんな技量の必要なこと、僕やアンネラには無理なことだ。

 ソウラン操者は、支配種をいなしつつ、ずっとひとりで戦ってくれている。
 青竜が支配種に攻撃をしかけ、炎の属性技を至近距離から浴びせるつける。

 ソウラン操者の炎は強力ではあるものの、決め手に欠ける。
 以前支配種と戦ったときもそうだった。

 とくに広範囲に展開させる炎はあまり効果がない。
 ゆえに、全てを溶かす濃密な炎を出すのだが、これには弱点があった。

「ぐわっ」

 支配種が振るった腕に青竜が吹き飛ばされた。
 青竜は何とか空中で身体を制御させ、踏みとどまる。

 支配種の尾はまだ使えない。
 背中の半分が穴から出てきたところだ。

 だがそろそろ支配種の注意を引くのも限界かもしれない。

「シャラザード、分かっているな」
『おうよ』

 シャラザードが雷を纏いはじめた。
 体外に雷玉を作るのではなく、シャラザード自体が帯電するのである。

 以前シャラザードが雷を纏い、ターヴェリの大嵐渦だいらんかの中に入って支配種に襲いかかったことがあるが、あのあとしばらくシャラザードは使いものにならなくなった。

 属性竜二体による合体技は強力だが、反動も大きい。
 今回はそれなしで戦うと、アンネラとの間で決めていた。

「いけ、シャラザード!」
『ぬぉおおおお!』

 帯電どころではない。シャラザードの身体に雷の衣ができあがった。
 全身を覆い尽くす量の雷に、耐性があるはずのシャラザードと僕ですら、痺れている。

 そのまま支配種に突っ込んだ。


 ――バッチ――――ン


 瞬間、あらゆる音が消えた。
 どうやら僕の鼓膜がいかれたらしい。

 雷に包まれたシャラザードが支配種にぶつかったことで、放電が一瞬で起こったらしい。

 そう冷静に判断できたのは少し経ってからで、弾けた雷によってシャラザードの身体は大きく飛ばされていた。

 大地に頭から突っ込んだ。

「あれ?」
 耳がゴーンとなっている。
 ようやく聴覚が戻ってきたが、まだ周囲の音を拾えていない。


 シャラザードの雷で支配種は真っ黒に焦げていた。
 それだけではない。ターヴェリとアンネラの人竜一体の技が炸裂していた。

 穴に入ったままの状態で、ターヴェリの技によってグルグルと回転しているのである。

「あれは……なに?」
『さあて、我にも分からん』

 穴から半分出たところで回転する支配種。

 いやあれは支配種なのだろうか。とてもそうは思えない。
 そこにはただ、巨大なオブジェが回転しているだけなのである。

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