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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 支配種を倒すための作戦は綿密に練った。
 容易に倒せるとは思っていなかった。

 近づくことすら難しい状況で、本来の強さすら未知数だったのだから。
 僕らは、支配種の力の全てを知らないまま、戦いに望まねばならなかったのだ。

 支配種が尾の攻撃を今まで隠していた。
 近距離攻撃の手段を持っていたことは、一応想定内だ。

「……ただし、これだけ強烈だとは思っていなかったけど」

 尾の一振りでアンネラとソウラン操者は遠くに飛ばされてしまった。
 僕らと支配種の間には、嫌になるくらい圧倒的な力の差がある。

「シャラザード、二人が戻って来るまで、耐えられるか?」
『そのことだが、我に考えがある』

 考え……めずらしく、シャラザードが知恵を出した。
 それほど切羽詰まっているともいえる。

「どうするんだ?」
『特大のをお見舞いする』

「いやそれ駄目だろ! 溜めの間に攻撃を受けるぞ」
 尾の攻撃を受けたら、シャラザードでさえ容易に吹き飛ばされるのだ。

『なに、こうすれば平気だ』
 シャラザードが直上に向かって急上昇を始めた。

「それ、駄目なやつだろ! 離れたら遠距離攻撃の的にされるぞ」

 高度を増すシャラザード。
 いくら上空に離れたとはいえ、支配種の目は僕らを捕らえて放さない。

 以前シャラザードから聞いたことがある。
 支配種は鋼殻の状態で落下するときに、ある程度落下地点を好きにできるのではないかと。

 シャラザードがいた世界でも、支配種は重要な場所へピンポイントで落下したという。

 以前は属性竜が四体揃った場所に落下してきたし、魔国の首都にも落下している。
 シャラザードの意見とも一致する。

 なぜそんなことが可能なのか。
 支配種は目が良く、敵をかぎ分ける能力を持っているのではと予想できる。

 雲を突き抜けてもさらにシャラザードが上昇している。

 ――ジュッ

 下方から飛んできた遠距離攻撃が、シャラザードの翼を貫いた。
「来たぞ!」
『大丈夫だ』

 動けない二人よりも、狙いを僕らに定めたようだ。
 アンネラたちが狙われるよりよっぽどいい。

 二人はまだダメージから回復していない。
 支配種の攻撃を受けたら、容易にやられてしまう。だが……。

「もう一発きたぞ、シャラザード。こんなことをしても長くは持たない」

 これではただ上に逃げているだけだ。
 いつかは高度限界に達し、遠距離攻撃の餌食となる。

 支配種から放たれる遠距離攻撃は、見てから避けるのがほぼ不可能となっている。
 光ったと思ったら、すぐ脇を通り抜けている感じだ。

『準備ができた』
 シャラザードが雷を溜めはじめた。

 下から遠距離攻撃が届き、シャラザードの尾と翼に穴が空く。
「いくらお前だって、これ以上持たないぞ」

 ダメージが溜まれば、墜落してしまう。
 そうなればもう飛べない。

 シャラザードは無言で雷を集めている。
 かつてない早さでシャラザードの周りに雷が集結する。

『よし』
「何がよしなんだ。そろそろ説明してくれ」

『かつて一度、自爆技をしようとしたときがあってな』
「ちょっと待て!」

『大丈夫だ。偶然それはおこらんかった。だが、それで我は気付いたのだ。これなら勝てる』
 シャラザードが自信満々のときほど怖いことはない。

 だがここまで来て『否』と言ってもしょうがない。
「よし。絶対に自爆はするなよ」

『分かっておる。行くぞ!』
 向きを変えて、急降下をはじめた。

 何をしなくても自然に落下する。
 それだけではない。
 シャラザードは自らの飛翔力を使って、さらに自身を加速させた。

「お、おい……」
 制御できるとは思えない速度でシャラザードが下降する。
 シャラザードの意識は雷の維持にも向けられている。

 いま自分がどの高度で、どのくらいの速度で落ちているのか理解しているのだろうか。

「シャラザード?」
『…………』

 応えはない。集中しているようだ。
 不安が襲ってきたが、シャラザードを信じるしかない。

「しょうがない。シャラザード、行け!」

 雲を突き抜けたと思った瞬間にはもう地表が間近に迫っていた。
 どれだけの速度が出ているんだか。

『がぁあああああ!』
 これまでの最高速が出ていたと思う。
 その瞬間、シャラザードから特大の雷が放たれた。

 ――ピィィーン

 その雷は、鼓膜が破れるかと思うほど甲高い音を立てた。
 なぜそんな音がしたのか分からない。

 すぐにそんなことを考える暇が無くなった。何しろ……。

『あっ!』
 シャラザードの慌てた声が響いた。

「シャラザード!?」

 シャラザードが急速に向きを変えたことで、身体に負荷がかかる。
 それでも速度は落ちない。

「シャラザードッ!!」
『拙い……かも』

 ――ズトーン

 シャラザードの巨体が支配種とぶつかり、大地が揺れた。



 シャラザードも支配種も大きなダメージを受けて吹っ飛んだ。
 僕などはもう、何がなんだか分からないほど揉みくちゃになった。

 シャラザードが放った巨大な雷は、支配種の半身を大きく焼け焦げさせたあと、地面へと到達した。

 深い穴が空き、その底はまったく見えないほど。

 だがその様子はまだ僕の目に届いていない。
 なにしろ、僕はまだシャラザードの背の上でひっくり返っていたのだった。

『えらい目にあったわ』

 どこからか、他人事のような声が聞こえてきた。

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