挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

639/656

638

 分かっていたことだけど、支配種の硬さは並じゃない。
 単発の属性技を放っても、ほとんどダメージを与えられなかった。

 これはある程度予想できたことだ。
 だから残念であるものの、しょうがないと諦めがつく。

 効果の薄い攻撃を延々と続けたところで、こちらが不利になるだけ。
 すっぱりと諦めて、弱点を探すことにした。

 だがこれも思うようにいかなかった。
 月魔獣は形態によって、武器となる部分が明確にわかる。
 それは牙だったり、ツノだったり、ハサミだったりする。

 同時に防御となる部分も、硬い岩に覆われていることでおよその想像がつく。
 竜操者はその弱点をうまくついて攻撃する。

 僕らが学院で習った月魔獣の弱点は、ほぼ頭に入っている。
 問題は、それが支配種に通用するかだが……。

「レオン先輩。どうします?」
「頭と胸は避けるとして、背中も硬そうだ」

「そうですね……では腹ですか?」
「ああ、一点集中でいこう」
「分かりました」

 月魔獣は胸部、とりわけ胸板がより強固にできている。
 そこに月晶石があるからだと思う。

 頭部もまた、かなり硬い。頭部だけはどの月魔獣も半端ない防御力を持っているので、一見弱点に見えるが、そう簡単に攻撃が通らない。
 胸板から上は攻撃してもあまり意味が無いと言われる所以だ。

 支配種の場合、先ほどから防御態勢をとるとき、背中を丸めている。
 攻撃も同時にすることから、背中は攻防一体なのだと考えられる。

 今回の場合、背中は弱点になりえない。
 よって、数多の月魔獣がかかえる弱点のひとつ。
 腹部を狙うことにしたのだ。

 ちなみに関節もまた月魔獣の弱点ではあるが、関節を破壊しても月魔獣が倒せるわけではない。
 余計に時間がかかるので、強敵を倒す場合を除いて、直接胴体を狙った方がよかったりする。

「シャラザード、ガンガン行け! 腹狙いだ!」
『まかせろ!』

 上空で一回転して勢いを付けたあと、シャラザードは両足を腹部に叩き込んだ。
 勢いをつけた両足の蹴りだ。支配種の身体が揺れた。

 効いているのか分からない。
 どのみち、一度や二度の攻撃でどうにかなるものでもない。

 支配種を倒すには、あの硬くて厚い鎧のような外装を突き抜けなくてはならないのだから。

 支配種の身体を踏み台にして、もう一回転する。
 スピードが乗ったところで、同じ箇所を何度も攻撃すれば、いつかは突き抜けられる。
 それが僕らの作戦だ。

 スマートではないけど、他にいい方法があったら教えて欲しい。

 二度目の蹴撃も見事に決まった……と思ったら、支配種はそれを受けつつ、シャラザードの足を掴んで投げた。

『ぬおおおおお……』
「わあああああ……」

 僕とシャラザードの声が重なり、大地に激突した。
 シャラザードは首を下に、身体を上にしたまま地面の上を滑る。

 ひとまず退場だ。



「ターヴェリさん、お願いします!」
『大丈夫、準備はできているからね』

 僕らが地面を削りながら滑っている間に、アンネラは属性技を腹部に叩き込んだ。
 範囲を絞りに絞ったトルネードだ。
 その分、威力は増している。

「連続攻撃です」
『あいさ』

 ターヴェリもまた、シャラザードと同じくらい喧嘩っ早い。
 同族であると思える瞬間である。

 ターヴェリは二度、三度と、針のように細くしたトルネードを支配種の腹部にぶち当てた。

「あっ、ターヴェリさん、回避です」
『次の準備をしちまったよ』

 支配種が衝撃波を出した。
 ターヴェリの回避は間に合わず、それをまともに喰らう。

「きゃぁああああああ」

 一瞬でかなりの距離を吹っ飛ばされて、ターヴェリの巨体は町の残骸の中に突っ込んだ。

「タ、ターヴェリさん……」
『大丈夫だよ……だけど、こいつは何度も喰らいたくない技だね。受けただけで、体力がごっそり削られる』

 衝撃波は竜の無尽蔵の体力を奪っていくらしい。
 空中に戻ったターヴェリは、同じく舞い戻ったシャラザードのそばによった。

『アンタ、どうするつもりだい。これはちとばかし、分が悪いよ』
『フン、我はまだあと三回の変身を残しておる』

『変身する竜なんざ、みたことないさね。……それで勝算は?』
『合体技でいくしかないであろうな』

 以前、支配種を倒したときの技。
 人竜一体でなし得る超強力な技であったが、あれを繰り出したあと、シャラザードはもう使いものにならなくなった。

 ある意味、一度きりの技である。

「シャラザード、勝算がないのに合体技を使うのは駄目だぞ」

 ターヴェリの言葉は分からないが、シャラザードが受けた言葉で、何を狙っているのか分かってしまった。
 すぐに釘を刺した。

 人類の未来がかかっている戦いで、究極技を「とりあえずやってみよう」で使っていいものではない。

 簡単に使えないからこそ、出撃前に様々な作戦を立ててきたのである。

『ではどうすればいいのだ』
 シャラザードは不満顔だ。

 後先考えずに、強力な技を繰り出せばいいと思っているのがありありと分かる。

「第二段階に行こう」
 ここまで効果がないと、いまの攻撃法法に固執してもいいことはない。

「でもソウラン操者がまだ……波状攻撃も試してないですよ」

「波状攻撃は多少は効果があるかもしれないけど、反撃をくらう可能性も高い。僕らのうちだれ一人でも倒れては駄目なんだ。だから、作戦を次の段階に進める。ソウラン操者は、きっとやってくる。いいね、アンネラ」

「……そうですね。分かりました、レオン先輩」
 少し考えてから、アンネラは賛成してくれた。

 僕らの戦いは、次の段階へ移行する。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ