挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

638/660

637

○竜国 王都

 王都に入った忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の一団は、町に向かう者と城に向かう者に分かれた。

 町中ではすでに多くの人が倒れ、苦しんでいる。
 住民を襲ったものの正体は『毒』。

 毒の種類は分からない。
 器に入れて火を焚いていたことから、気化させたものを吸い込むことによって呼吸困難を起こすものだと分かる。

 これを町中に撒いた者たちを見つければ、その解毒方法も分かるかも知れない。
 そうでなくても、こんなことをした者を野放しにはしていられない。

 忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)は、屋根の上にあった器を処理するのと同様に、敵の捜索に力を入れた。

「……見つけた」

 王都の町は暗所が多い。だが、竜の感覚は、暗闇に潜んでいる人の存在を感知する。
 町民が普段使わない路地の影に身を隠し、外の様子を窺っている存在がいた。

「見つけたぞ!」
 遠くからも声が聞こえた。飛竜に乗った竜操者である。
 総じて竜は目がよい。なかでも飛竜は格別である。

 高所から探し出したのであろう。
 屋根の上に置かれた器の数からいって、敵は複数いることは確実。
 時間的に、敵はまだ町中にいる。



 敵を発見した直後から戦闘が発生した。近寄ったら攻撃を受けたのだ。
 これでもう敵は言い逃れができない。敵確定である。

 これで竜操者は思い切りよく戦うことができる。

 通常、訓練を積んだ人と竜が戦う場合、人に勝ち目はない。
 竜に致命傷を与えるのは至難の業である。
 竜には毒もほとんど効かない。

 竜が狙えないならば、竜操者を狙えばいい。
 だれしもがそう考える。

 だが竜操者を狙うにも、槍が届く距離にはいないし、そもそもそこまで近づけば竜によって蹴散らされてしまう。

 竜は敵意のある者がいれば、機敏に反応する。
 竜操者を倒すには、遠くから槍を正確に投げるか、鎧の隙間に矢を通すしかない。

 だが、ひとたび竜が走り出せば、馬をも軽く追い越す。
 小回りも利き、頭も良い。

 そして竜操者の意をよく受ける。
 竜操者が「倒せ」と命じるだけで、最適な行動を取ってくれる。
 足で踏み、爪で引き裂き、牙を突き立てる。体当たりしてもいい。

 加えて、高所から竜操者が弓で攻撃することもある。
 竜に乗った竜操者は、攻防一体の存在である。

 単独で立ち向かったところで、まったく歯が立たないのだ。

 ゆえに発見された敵は、ひとり、またひとりと屠られていく。
 ある者は諦め、またある者は果敢に挑んでいく。

 だが、どんなに足掻こうとも、すべて同じ結果となる。

「呪国人だぞ」
 どこからか声が聞こえた。戦闘中だろうが、相手が呪国人であると気付いたらしい。

 敵は戦うばかりではない。中には、家の屋根に飛び乗って逃げる者もいる。
 そういう者は素早い身のこなしをし、相当な練度で竜操者から遠ざかる。

 だが、人の何倍の速度で動けるのが竜である。
 さらに上空には飛竜もいる。

 屋根伝いに逃げたところで、空からの一撃で枯れ葉のように舞い散らされる。
 やはり、逃げても結果は変わらないのだ。

 全身の骨を砕かれた呪国人が息絶えた。
 すでに十名を越える敵を発見し、竜の集中攻撃で全員倒している。

 見つけることさえできれば、彼らの存在など塵芥に等しいのだ。

「呪国人は三人か。まだいるかもしれん。よく探すように」
 屋根に毒が置かれた理由は分かった。

 呪国人が事前に竜国の〈影〉を排除したのだろう。
 王都の町は思ったより危機的状況であったようだ。

「毒を回収させ、死体に解毒薬があるか探させろ」

 夜間巡回兵たちに、無害化させた毒の器を回収させた。
 毒の種類は分からないが、解毒の方法を探るには現物が必要である。

 ここは王都。研究機関もある。
 毒に詳しい者をたたき起こして、すぐにでも研究させるだろう。

 同時にまだ息のある敵がいる。
 彼らを尋問し、毒の種類や解毒法、敵の首魁を吐かせる役目もある。
 それらを夜間巡回兵を通して、城の専門機関に送る。

 敵の捜索はいまだ続けているが、ほぼ狩り終えたと言っていい。
 隊を半分にして、残りの半分は王宮に向かわせる。

 そう思っていたところ、夜空を飛翔する一体の竜がみえた。

 中型の飛竜である。

 竜はまっすぐ王宮を目指す。

「……あれは?」
 敵か味方か。

 だが、それを判断する間もなく、竜は王城の方へと消えていった。

 見送る忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の面々の心に不吉な思いがよぎった。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ