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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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○竜国 王都 町中

 次々と人が倒れていく。
 ある者は胸をかきむしり、またある者は喉を押さえる。

 みな一様に息苦しさを訴え、そのまま崩れ落ちていく。

 医者を求め、人が夜の町中を走りまわる。
 夜間巡回兵はどうしてよいか分からず、城に伺いをたてる。

 だが、依然として城は沈黙を守ったまま。

「どうなっているんだよ、ちくしょー」
「おい、しっかりしろ!」
「お母さん! だれか、お母さんを助けて!」

 王都の住民たちの叫びは夜空に吸い込まれ、地上では新たな犠牲者が生まれようとしている中、遠くから地響きの音が聞こえてきた。

「あれは竜の足音?」
 誰かがそう囁いた。

 一頭や二頭ではない。
 十を越える竜の足音が響いた。

 自分たちの脇を通過していく竜の姿を頼もしく見ながら、町の住民たちは安堵の息を吐く。

 彼らが来てくれれば安心だと。
 根拠はない。ただそれだけ竜国民は、竜と竜操者のことを信頼しているのである。

 だが、通り過ぎた竜操者を見て、人々は首を傾げた。
「あの軍服、どこの者じゃろ?」

 王都に住む者はみな竜操者のファンと言っていい。
 竜操者たちの姿が、自分たちの記憶と合致しないのである。

「全部知っておったと思ったんだがなぁ……」

 竜操者を制服で見分けられると非常に助かるため、一般の人々もよく知っている。
 ましてここは王都。竜国中から竜操者が集まる場所である。

 一度も見たことがない制服を不思議に思う者が続出していた。



 一方、王都へ急行した忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)は、苦しむ町民を見て、さらに軍をふたつに分けた。

 ひとつはそのまま王城へ直行する。
 もうひとつは、この原因を突き止めて、敵を排除する。

「おそらく毒が使われている。全員、口を覆え」
 町中に向かった竜操者のひとりがそう叫んだ。

 人が道の脇に倒れている。それが点々とみえた。
 共通しているのは「この場に居合わせた」ことくらい。

 ならば真っ先に疑うのが毒。
 しかも即効性のあるものだろう。

 町中を疾走する竜の背に乗ったまま、竜操者たちは考えた。
 使われたのは毒、だれもがまだそれを見つけていない。

「飛竜へ伝えろ。毒の原因となっているものは地上にはない」

 撒かれたのが毒として、それはどこにあって、どのように広まったのか。
 もし路地裏に置かれていたら、その周辺の被害がひどくなる。

 だが、様子を見る限り、毒は町中に蔓延している。
 これは発生元が複数あり、しかも見つけにくいところにあることを示している。

「ありました! 屋根の上です」

 飛竜からの報告があった。
 屋根の上に小さな灯りが漏れていたのを見つけたらしい。

 見つけたのは黒い器。
 毒物を燃焼させ、その煙が静かに風に流されているようだ。

「他にもあるはずだ。被害の多いところを中心に屋根の上を捜索。それと水だ。水をかけて消してしまえ」

 命令はすぐに実行にうつされた。

 毒物はまるでいぶし火のようにくすぶりながら煙を周辺にまき散らしていた。

 飛竜は用水路や家の軒先にある雨樽から水を取り上げ、毒物の上から落とした。

 発見した毒物はいずれも屋根の上にあった。
 現在二十を越える器を発見し、水で浸した。

 回収は朝で良いだろう。だが、竜操者たちはひとつの事実に行き当たる。

「なぜ、王都の〈影〉はこれに気付かなかったのだ?」

 夜になると、夜間巡回兵が王都を巡る。
 同時に〈影〉もまた、屋根の上を伝って、移動することを彼は知っていた。

 屋根の上の目立つ器など、すぐに見つけ出せるものを。

「……とすると、別件で移動したか、すでに始末されている?」

 影が王都の屋根にいない理由。
 それに思い至って、竜操者のひとりは身を引き締めた。

 今回の襲撃は、大規模かつ用意周到。
 それでいて、実行者は姿を現さないほど慎重らしい。

「上空は飛竜に任せて、我々は治安を回復させる。敵は見つけ次第、殺せ」

 忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の集団は、これまで表だった活動をしてきていない。
 だがそれは、活動していないと同義ではない。

 彼らは厳しい訓練とともに、対人、対月魔獣の鍛錬を積んできている。
 才能があり、竜を得て、訓練を欠かさない者たちの集団。それが忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)である。

 そんな彼らが本気になれば、たとえ不意を打たれたとしても、十分対処できるだけの技量を有していた。

 竜の背に乗る竜操者を狙って、飛び道具が放たれた。
 それを弾いて、竜操者の一人は笑った。

「ようやく見つけた」
 それは王都を舞台とした戦いの幕開けであった。

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