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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 イヴリールの周囲に巡らせてある城壁。僕らはそのひとつを抜けた。
 その中は瓦礫の山だった。月魔獣の通行によってすべて破壊されていた。

「僕らが負けたら、竜国もこうなってしまうのか」
 目を背けたくなる光景だった。

 ここは貧民街だったのかもしれない。
 ひとつひとつの瓦礫をみると、古びた石材や朽ちた木が多いように見える。

「左へ迂回して、もうひとつの門を通る」
 リドルフ副操竜長の指示のもと、全体が左へ折れた。

 瓦礫で予定していた門が崩れているらしい。

「これは酷いな。俺が以前きたときの姿が思い出せない」
 ソウラン操者がそんなことを言った。

 以前、聞いたことがある。
 僕がシャラザードを得る前、つまり魔国もまだ健在で、竜国の好敵手だった頃の話。

 首都イヴリールを襲撃できるのは、竜国の中でもソウラン操者ただひとりと思われていたらしい。

 そこでイヴリールの綿密な地図が作製され、ソウラン操者はそこまでの道のり、首都の概要をすべて頭の中に叩き込んだという。

 それだけではなく、何度か秘かに首都に潜入し、実際にその目で見てきたらしい。
 いつ何時、女王陛下から「首都を攻撃せよ」と命令が下るか分からない。

 ソウラン操者はずっとそれに備えていたという。

「その頃はどんな感じだったんですか?」
 迂回路を使うことになったため、いま地上部隊が遅れている。

 僕らは小山の影で彼らを待っていた。

「活気がある町だったよ。竜国のように洗練された感じじゃなかった。貧しい者も多かったけど、やる気に満ちていたかな。熱気が感じられたと思う」

 今は見る影もない。ソウラン操者が見たという活気のある町は、まだほんの五、六年前の出来事。

「そうですか……ここから城まで、あと二つの城壁があるんですよね」
「そうだね。俺も最後の城壁の中までは入ったことがないけど、石造りの立派な城が見えたのを覚えているよ」

 そこに、支配種がいる。
「……あと少しですね」

 首都は大きいとはいえ、ひとっ飛びの距離だ。
 地上部隊と一緒に向かっても、それほど時間はかからない。

「そうだね。あと少し……おっ、地上部隊が追いついてきた。俺たちもいこう」
「はい」

 地上部隊と合流したが、その数はさっきより減っていた。
 戦闘してくるほどの時間はなかったので、何体かが、月魔獣の相手をしにいったのだろう。

 地上部隊に先導してもらい、次の城壁を抜けた。
 ここも廃墟となっていた。それでも建物の基礎が残っていることも多く、頑丈に作ってあったことが伺えた。

「右から大量に来る! 半分向かえ!」
 支配種がいる場所はもう目と鼻の先。

 地上部隊が向かい、低空飛行していた仲間たちも半分が向かった。
 それだけやってきた月魔獣が多かった。

 高所を飛んでいる飛竜編隊はもういくらも残っていない。
 彼らが支配種の攻撃を引き受けてくれたからこそ、僕らが無傷でここまでたどり着けた。

「さあ、最後だぞ」
 僕らは最後の城壁を抜けるために進む。

 周辺に月魔獣の姿はない。右から来たのがほとんどなのだろう。

 城壁を抜ければ、あとは支配種のいるところまでは一直線。
 もう我慢しなくていい。

「……抜けるぞ!」
 副操竜長を先頭に進む。
 すでに地上部隊は月魔獣の迎撃に向かって、ここにはいない。

(……抜けた)

 そう思った直後、大地が揺れた。
 瓦礫が一斉に崩れたのだ。

「あれはっ!?」

 僕らと支配種の間に現れたのは、多数の大型種。
 今まで瓦礫の中にいて気付かなかったのだ。

「拙い!」
 いまの戦力では、大型種に足止めされてしまう。

 これでは大型種と戦っている横から遠距離攻撃で貫かれかねない。

「ここはおれが行こう。キミたちは先に向かってくれ」
「ソウラン操者」

「アレを止められるのは属性竜しかいない。だから俺が蹴散らしてから向かう。少しだけ先にいってくれないか」

「ソウラン操者!」
「任せたぞ、レオン操者。ここは俺くらいが丁度いい」

 そう言ってソウラン操者は速度を増して、大型種の中に突っ込んで行った。

「たしかにレオン先輩やわたしでは、属性技が使えません」
 嵐も雷も被害が大きすぎる。

 広範囲を殲滅するような技は使えない。
 だとすると、ソウラン操者の判断が正しいことになるのか。

「よし、アンネラ」
「はい」

「行くぞ」
「分かりました!」

 飛竜を相手にしていた支配種が、ようやく地を這う僕らに気付いたようだ。
 だがもう、僕らは支配種の喉元近くまで接近している。

「あとは倒すのみ。いくぞシャラザード! もう押さえなくてもいいぞ」
『心得た!』



「この大陸の命運をかけた、最初で最後の戦いをはじめよう」

 僕とアンネラは、支配種に向かって突っ込んだ。

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