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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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○竜国 竜の渓谷

 リトワーンは、この状況がいかにして起こったか考えた。
 竜国の象徴たる竜操者が、なぜ自分たちの敵となったのか。

(彼らが敵方についたのは確実。ではいつから?)

 たとえば友人知人家族を人質に取られたとしよう。
 それは竜国にとっても想定される事態。

 竜操者にはいくつかのケースにおいて、自分のみならず、周囲の者に危険が迫った場合の対処法を教えてある。

 過去そういった人質を取って竜操者を脅そうとした場合、独力でなんとかしようとしたケース、相手のいいなりになったケース、竜国に伝え判断を仰いだケースについて、問題解決の成功率を教えてある。

 竜国が介入した場合の成功率はmほぼ百パーセント。
 逆に相手の言いなりになった場合、自分と周囲が破滅している。

 それを知っていれば、相手に屈することはないはずなのだ。

(ということは、自主的に協力したことになりますが……)

 不思議なのは、寝返った相手こそ先がないということ。頭のいい者の考えることではない。
 竜国の庇護下にいた方が、よっぽどよいはずである。
 わざわざ竜国の庇護から脱することが考えられない。

 竜操者を支えるパトロンについては、毎年厳しい審査をしている。
 といっても、本人たちには知らせていない。
 怪しい動きがあれば審査の段階で気付くはずだし、竜操者とパトロンの距離が離れれば、それも分かる。

 つまり彼らはノーマークだったわけだ。
 彼らがみな、竜国の目をくぐり抜けていたことになる。

(最初から……ですか)

 他国が若者を竜国に住まわせ、あわよくばと竜紋が現れるのを願っているのは知っていた。

 だがその試みは成功していない。
 竜紋限界に十年ほど住まないと、なぜか身体に竜紋が現れないのだ。

 その事実は一般に伏せられているが、竜紋が現れる者が、長年竜紋限界の中に住んでいる者たちであるため、「言わなくても分かっている」とも言える。

 それを考えれば、敵として現れた竜操者たちは、もともと他国に人間であった可能性が高い。
 彼らははじめから竜国の竜操者ではなかったのだ。

(十年、二十年かけた潜入任務ですか)
 となれば、親や祖父の代からであろう。

 どれだけの数が紛れ込んでいるか分からないが、その中で運良く竜紋が現れたのが彼らなのだろう。

 リトワーンが考え込んでいると、部下の一人がやってきた。
「一人、見覚えがあります。半年前、戦死したと聞きましたが」

「なるほど……この時期に自由に動くため、戦死を装いましたか」

 これは本格的だとリトワーンは思った。
 長期に亘る潜入任務。

 それに加えて、死を偽装してまでも準備する周到さ。
 彼らはこの時期、この場所に焦点を定めて、機が熟すのを待っていたのだ。

「援軍は……来ませんよね」
「連絡がまだ到着していないでしょう。したとしても、同時多発的に攻撃されていれば……」

「手一杯で余裕もないですか」

 これは絶体絶命ではなかろうか。
 そうリトワーンは思った。



○橋頭堡 駆動歩兵隊

 パイル・ボレックスの参戦で戦局は動いた。
 月魔獣がまるで塵芥のように砕け散っていく。

「逃げろ!」
「巻き込まれるぞ」

 駆動歩兵たちは真剣だ。
 それはもう、月魔獣戦のとき以上に。

 戦って死ぬのは仕方ない。
 仲間を守るために死ねれば本望。そう考える者だっている。

 だが、味方が戦っているのに巻き込まれて死ぬのだけは御免である。

 パイル操者が月魔獣の大型種に目を留めた。
 その視線を追って竜が首を巡らす。いいコンビだ。

「あっちに向かうぞ」
「方向転換するぞ!」
「に、逃げろぉー!」

 大型竜が中型竜以下と一緒に行動できないわけ。
 それは、向きを変えただけですら、周囲が危険なのである。

「ぎゃぁああああ」
「ま、待ってくれぇええええ」

 脱兎のごとく逃げる駆動歩兵を尻目に、パイル操者は大型種に向かっていく。
 途中の月魔獣を自然に蹴散らしながら。

「……もう、彼ひとりでいいんじゃないか?」
 それが多くの駆動歩兵乗りの感想であった。

「なにを馬鹿なことを言っているのですか。パイル操者ひとりでは、討ち漏らしが出ます。わたくしたちの出番ですわ」

「そうだった」
「よし、漏れた奴らを叩くぞ!」

 どんなに強くても、パイル操者はひとり。
 横を抜けられてしまえばどうしようもない。

 アンネロッタ率いる駆動歩兵隊は、門の前に集結し、もう一度鉄壁の防御陣を敷くのであった。

「……レオンくんの帰る場所は、必ず守ります」

 遠くの方で大型竜が暴れている。
 木々が倒され、石畳の道が踏み抜かれていく。

 周囲が破壊される有り様に、駆動歩兵隊の面々は、あそこには絶対に近づかないと心に誓う。



 そしてしばらくパイル操者が暴れると、あれだけいた月魔獣がすべていなくなった。
 足下に散らばる残骸を踏み砕きつつ、パイル操者は橋頭堡に戻る。
 その頃には、アンネロッタ率いる駆動歩兵隊もまた、周辺の月魔獣を倒し終えていた。

「……この場所は守りましたわよ、レオンくん。あとは無事帰ってくるだけですわ。絶対に帰ってきてくださいね」

 首都がある方を向き、アンネロッタは祈るようにそう呟いた。

アンさん方面は、なんとか決着付いたようです
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