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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 僕らは地上部隊と上空部隊に挟まれながら、低空飛行のまま進んでいる。
 先ほどから支配種の遠距離攻撃で、何体もの飛竜が撃ち落とされている。

 あの遠距離攻撃は、見てから躱すことができない。
 光ったと思ったときにはもう、通り過ぎているのだ。

 彼らは狙われているのを承知で、あの高度を飛んでいる。

「見えた! 首都だ!」
 誰かが叫んだ。

 すぐに僕にも見えた。
 現れたのは、旧魔国の首都イヴリール。

 かつて何度も竜国と戦い、大国として名を馳せたその国の首都。
 だがそこは、見るも無惨な姿をさらしていた。

「あれが……首都? 面影もない」
 竜操者のひとりがつぶやく。

 かつてこの地に来たことがあるのだろう。
 信じられないと言う声が聞こえた。
 荘厳な佇まいをみせた町の姿は、もうどこにもない。

「あの高くて、なんでも跳ね返すと思えた城門があんなに……」
 アンネラが呆然と呟いた。

 ディーバ商会をきりもりする商人として、アンネラはここを訪れたことがあるようだ。

 そういえば、僕が初めてアンネラと会ったときも、陰月の路付近で月魔獣に追いかけられていた。
 多少の危険をものともせず、アンネラは父の商売を軌道に乗せるため、あちこちに進出していたのだろう。

「よし、ここから速度を落とすぞ」
 リドルフ副操竜長の言葉に、低空飛行を続けていた竜たちの速度が落ちる。

 これは事前に決められていた動きだ。

「ここから我々は慎重に向かう。地上部隊の後ろを着くつもりで行け」

 首都といっても中は広い。
 首都には地上部隊を先に中へ入れる必要がある。

 魔国は月魔獣が町に出没することもあるため、城門を高くしてかなり広い範囲を壁で囲っている。

 最外殻の城門を抜けてもなお、支配種までは遠い。
 そしてここからは、敵を倒しながら進んでいく。

 左右に分かれた部隊が集結を始めた。
「……右がひどいな」

 右翼部隊はすでに七十騎ほど。
 百騎出て行ったので、散開して集結するまでの間に、三割を失ったことになる。

「左右の動きを確認。上空、地上ともに異常なし。首都に入る」

 竜の数は減っている。だがそれは想定された範囲でのこと。
 つまり異常なし。副操竜長はそう判断した。

 ここから先はとにかく月魔獣を倒しながら進むしかない。
 速度が多少落ちても仕方が無い。

 中央部隊が月魔獣を蹴散らし、両翼の部隊が漏れを叩いていく。
 僕らが支配種と戦うとき、周囲に月魔獣がいないようにしないと拙いのだ。

 そうしないと、地上に落とされた瞬間、詰む。

 空中で支配種と戦うのだから、地上にいくら月魔獣がいてもいいだろうと考えるのは間違っている。

 シャラザードですら、遠距離攻撃を受ければ、貫通する。
 勢い余って、町中に叩きつけられたりすることもある。

 そのとき月魔獣がいれば、殺到してくる。
 ふりほどき、体勢を立て直して飛び立とうとしても、掴まれることもある。

 なにより無防備な乗り手、つまり僕らが狙われる。
 一度も地上に降りられないというプレッシャーを抱えながら戦うのは、よろしくない。

 かつてシャラザードとアンネラの合わせ技で支配種を倒したときも、終わったあとは地上に落下していた。

 つまり僕らが戦っている間、地上を月魔獣で満たさないようにしなければならない。

 そのために彼らがいる。
 僕らが安心して戦うために、彼らが月魔獣を寄せ付けない。

 僕らはそれを信頼して、支配種と戦う。

「入るぞ!」

 地上部隊に続き、僕らは首都の最外殻の城壁を通過した。



○橋頭堡 駆動歩兵 アンネロッタ

 橋頭堡を守るため、入り口の前面に駆動歩兵を展開させたアンネロッタ。
 彼女は、鉄製の罠を用いて月魔獣の足を留める作戦にでた。

 だが、敵の数は予想以上に多く、それもまた破られようとしていた。

「罠が破壊されるぞ!」
「逃げろ」

 破砕音が響き、鉄製の罠がはじけ飛んだ。
 そこから月魔獣が一体、また一体と押し入ってくる。

「迎撃します!」
 複数の駆動歩兵隊が駆けより、そこから乱戦が始まる。

「皆が戻ってくるこの場は、絶対に抜かせません」
 アンネロッタもまた、月魔獣と対峙する。

 駆動歩兵たちは一歩も引かず、奮戦する。
 だが、敵の数が多い。

 しかも後ろには大型種もいる。

 密集してやってくる月魔獣に、防衛ラインが徐々に押され始めた。

「押し返せますか?」
「維持するのがやっとです。どこかが崩れれば、そのまま崩壊します」

 アンネロッタが問いかけると、防衛をしていた誰かがそう答えた。
 いまギリギリにところで持ちこたえているのである。

「仕方ありません。戦線を縮小して迎撃します」
 月魔獣は坂を上がってくる。

 坂の上を陣取ることで、地形をうまく使ってきたが、すでに押され始めている。
 アンネロッタは坂道を守るのは諦めて、門周辺の守護に切り替えようとした。

 だがそれは少し遅かった。
 判断が遅れたのではない。月魔獣の勢いが予想以上だったのだ。

「崩れる!!」
 それは悲鳴に近い声だった。

 それまで押さえていた箇所が破られた。
 そこから戦線は崩壊し、何機かの駆動歩兵が月魔獣の群れに巻き込まれた。

 慌てて周囲の駆動歩兵が修復に向かうが、どうにも抑えきれない。

「ここは通しません。レオンくんたちが戻ってくる場所は、絶対に守ってみせます」

 月魔獣の侵入は続いている。
「隊長、ここは危険です」

「分かっています。ですが今引くと、全体が崩壊します。わたくしがここを支えますから、隊の立て直しをしてください」

 そう叫びつつ、アンネロッタは月魔獣の足を薙ぐ。
 月魔獣は片足を打ち砕かれ、転がる。

 駆動歩兵隊が使用する武器は、対月魔獣戦用として開発された強力なものだ。

 ただし、振り回すには、広い場所が必要。
 十分な遠心力があってこそ、想定した威力が出せる。

「くっ!」
 密集してやってきた月魔獣だと、アンネロッタの武器は効かない。

 武器を投げ捨て、アンネロッタは手近な月魔獣の首にしがみつく。
 組み付いたのは、四つ足タイプの亀型である。

「やあああああっ!」

 そのまま首を掴んだまま、月魔獣を横に転がした。
 すると数体の月魔獣を巻き込んで、転がっていった。

「やりましたわ」

 だが、その後ろから更なる月魔獣の群れが、雲霞のごとく押し寄せてきた。

「きゃぁあああ」

 月魔獣の群れに、アンネロッタの機体が巻き込まれた。

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