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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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○竜国 竜の渓谷 リトワーン

 リトワーン・ユーングラスは、とても変わった男である。
 本人は自覚していないだろうが、その容姿と話し方はまさに役者のそれ。
 ずっと演技しているように思われている。

 ある者は魅了され、ある者は胡散臭さを覚え、またある者は二心有りと距離を置こうとする。

 リトワーンは卓抜した洞察力をもって、自分に向ける視線や態度から、その人となりを見分けていた。

 今回、リトワーンは信頼できる部下たちを月戦隊に貸し与えた。
 リトワーン自身が集めた支配種に関する情報では、竜国の通常戦力では討伐は不可能。

 属性竜という個の力によってしか、なし得ないことに早くから気付いていた。

「不思議ですね。国家……いやこの大陸存続の危機に、こうして四種の属性竜が揃うとは」
 まさに運命だとリトワーンは何者かの采配に感謝した。

 同時に、ただ属性竜だけ討伐に向かわせても失敗することを理解していた。
 彼らは最終決戦まで、その力を温存させなければならない。

 だからこそリトワーンは、その子飼いの竜操者たちを月戦隊に入れたのである。

「それを理解していないのは……彼らですね」
 魔国との度重なる国境線の衝突。

 それを裏で支援していたのは、商国五会頭たち。
 彼らはただ儲けのために、人心を動かすことがある。

 商人たち……とくに、急進的ラディカルな思想を持つ商人たちを監視していたリトワーンは、この最終決戦の時期に彼らが行動を起こすだろうと予知した。

「これは女王陛下にお願いしておきますか」

 ウルスの町に残った兵力は少ない。
 それでも、竜国の重要な拠点を守るには十分な数が揃っている。

 リトワーンは、竜国の重要な箇所にその兵力を惜しげも無く投入した。
 それは新しい産業のある町であったり、穀倉地帯であったり、重要な港であったりした。

 その中のひとつが、竜国の象徴である竜の聖地。
「ここだけは他人任せにはできそうもないですね」

 リトワーンは、自らの部下を引き連れて、竜の聖地の警護を買って出たのである。



「そういうわけで、皆さんには死んで貰います。もちろん一人残らずね」

 リトワーンの言葉通り、様々な暗器がアンチ暗殺者集団の間から放たれた。
 鋭利な針、勢いある礫、鎖、投げナイフ、半月刃……それらはうなりをあげて、暗殺者に殺到した。

 そこからは乱戦である。
 だが、待ち構えていた者たちは強い。

 覚悟は同じ。ならば準備の差であろうか。
 彼らは次々と暗殺者を屠っていく。

 だが暗殺者たちも負けてばかりではない。
 個々の技量では、勝っている者も多いのだ。
 彼らが本気になれば、現状を打破できる能力は十分あった。

 アンチ暗殺者側にも、徐々に被害が出始めていた。
 倒された数は暗殺者側の方が多いが、それも少しずつ拮抗していく。

「さすがに一筋縄では行きませんね。そろそろ交代しましょう」
 ここで現れたのは、本来の守護武力。渓谷を守る竜国正規兵たちである。

 彼らは集団戦、個人戦ともによく力を発揮する。
 ただ、リトワーンが連れてきた者たちとは戦い方が違うため、後ろに控えてもらっていた。

 ここで暗殺者は、新たに投入された正規兵たちを相手にせねば、ならなくなった。
 彼らの剣は実直。だがそれは決して不利にはならない。

 ただ振り上げて振り下ろす。それだけのために何年、何十年と鍛錬してきた者たちである。
 速さ、威力、どれをとっても申し分ない。

 正規兵たちが再び暗殺者を圧倒しはじめた。

 戦いの趨勢が傾いたまま時が過ぎ、このまま暗殺者たちがすべて滅されるかと思われたとき、再び戦局が動くことになる。



○橋頭堡 駆動歩兵隊 アンネロッタ

 竜操者たちの帰る場所を待つ。
 その意気込みで月魔獣を迎え撃つアンネロッタたちであったが、押し寄せてくる敵の数は膨大であった。

 ここは高台にあるため、登ってくるまでにまだ時間はある。
 三方は崖に囲まれているため、迎撃する方向は一カ所のみで良い。

「罠の設置を急がせてください。そろそろ上がってきます」

 ここに持ち込んだ月魔獣迎撃用の機械はただ一種類のみ。
 技国で開発され、魔国が導入したものである。

 何度かのフィードバックを受けて改良を重ね、実用に足る一品として評価が高かったもの。

 それを駆動歩兵隊が設置する。

 ただ両手を広げただけにしか見えない鉄の罠。
 だが、ひとたび月魔獣がそこに入れば、開いた二本のアームがしっかりと閉じて離さない。

 月魔獣の突進が強ければ強いほどアームは強く閉じる。
 自らの突進力で自らを締め上げる機械なのである。

 魔国はこれを多数導入していた。
 ただし、駆動歩兵ではない一般の兵が移動させるには大きすぎ、重すぎる代物である。

 そして町の防衛のように、周囲のどこから来るか分からない場合は使えない。
 これはあくまで進行方向が限定されたときのみ効力を発揮する。

 まさに最後の橋頭堡に置くにうってつけの罠であった。

 月魔獣は次々と罠にかかり、移動できなくなっていく。
 それを駆動歩兵が叩く。
 罠にかかった月魔獣の後ろは渋滞し、時間的な余裕も生まれる。

 時間はかかるが、これをうまく使うことによって、安全に月魔獣を狩れるのである。

 だが、それで勝利できるほどこの地は甘くない。

「罠が破られるぞ!」
 どこかでそんな声が聞こえた。

 後続が詰まり、その質量によって、罠が変形するほど押し出されてきたのである。

「崩壊するぞ!」
「離れろ!」

 ついに罠を設置した一角が崩れ、大量の月魔獣がなだれ込んできた。

 駆動歩兵隊と月魔獣の本格的な戦いが始まる。

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